日本機械学会連続講座「法と経済で読み解く技術のリスクと安全~社会はあなたの新技術を受け入れるか~」第2期・第5回 講演 医療機器の承認に関わるレギュラトリーサイエンス
【開催日】
2014年11月14日(金)17.30~19.30
【第2期・第5回 講師】
山根 隆志 (神戸大学大学院工学研究科・教授)
【第2期・第5回講演趣旨】
医療機器の品質・有効性・安全性を守るため、薬事審査と市販後調査が行われる。承認に当たって評価項目・評価基準の設定および審査にかかる時間が産業の死活問題に及ぶこともある。ここでは学会専門家の協力による新医療機器のガイドライン制定によって、開発と審査の時間が大幅に短縮された人工心臓の例を紹介する。
また医療機器は、機器と使い方の両面を評価する必要があり、承認時には技術の完成度を審査するのではなく、その時点での科学的知識で審査し、市販後に改良されるものが多いことも特徴である。
今般、薬事法改正が行われ、医療機器が法律名称に入り、再生医療製品に仮免許ならぬ限定承認が与えられることになり、安全情報としての添付文書が全て公開されることになった。これは産学官の協力によって、ようやく実現したものである。
【本連続講座の開催主旨】
福島第一原子力発電所の事故は技術の安全性に対する人々の信頼を失わせた.しかし,技術なしに現代社会は成り立たない.また,介護ロボットのような新技術は私たちの生活の質を向上させることが期待される.一方で,技術にはリスクがつきまとう.介護ロボットの誤作動で被介護者が死傷することもあり得る.社会に利益をもたらすとともに,リスクを内包する技術はどのような条件の下で社会に受け入れられるのだろうか.リスクが現実化したとき,技術者の責任は問われるのだろうか.今,新技術の開発に従事する技術者の胸に去来するこのような疑問に,現在の法制度のみならず,法と経済学,正義論なども視野に入れて,体系的に答えようという野心的な試みからこの講座は生まれた.技術のリスクと安全に関心のあるすべての技術者に是非聴講していただきたい.