イブニングセミナー(第170回) 義足でオリンピック記録が超えられるか?
【開催日】
2014年3月19日(水)18.00~20.00
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
『パラリンピックの記録がオリンピックを超える日が来る』―夢のようなストーリーが,現実のものになろうとしている.2012年のロンドンオリンピックに,歴史上初めて両脚下腿切断者である”障害者”の選手が出場したことは記憶に新しい.このように,スポーツ用義足を駆使した義足ランナーの中には一般アスリートと遜色ないレベルにまで達している者が多く存在し,今もなお驚くべきペースで記録を更新し続けている.しかしながら,こうしたスポーツ用義足の普及は皮肉なことに「義足の装着によって不当なアドバンテージを得ているのではないか?」という疑いの目を生じさせた.こうしたテクノロジー・ドーピング疑惑を解決するべく,2000年代後半から世界中の研究者が義足ランナーの生体力学的特性を調べているが,いまだ明確な結論は得られていない.世界全体における障害者の社会参加促進・運動機会創出や,障害者スポーツの興隆を後押しする上で,こうした問題の一刻も早い解決が望まれる.義足スプリンターは人類最速になりうるか?そしてスポーツ用義足はテクノロジー・ドーピングに該当するのか?発表当日はスポーツ用義足の成り立ちとその機能,さらにはテクノロジー・ドーピング論争のカギを握る生体力学的データを概説し,上記問題への答えを探る.そして2020年に東京パラリンピック開催を控える我が国に必要な選手強化プランとその支援策について提言する.
講師:保原浩明(独)産業技術総合研究所デジタルヒューマン工学研究センター
<懇親会> 大学近くの「パブレストラン アミ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3 000円程度
【次回予定】
2014年4月30日(水)18.00~20.00