集中初級セミナー 「自動車の運動力学」
〔協賛:自動車技術会,計測自動制御学会,システム制御情報学会〕
【趣 旨】
このセミナーの目的は,受講者が車両運動の基礎を理解し,実際に理論計算を行えるようになることです.CAE(Computer Aided Engineering)の発展により,運動力学を知らなくても数値実験のように車両運動が計算でき,実際の実験工数が省けるようになってきているのはご承知の通りです.しかし無数にあるパラメータを精度良く同定することの困難さと,広い意味でのバグを含めて思ったように動かないシステムなどがこのような数値実験には必然的につきまとい,所詮,実際の実験を補完するだけだという声も聞かれます.さらに運動の基礎を理解せず数値実験(パラメータスタディ)をいくら繰り返しても車両運動に関する洞察は得られるはずがないとも指摘されています. CAEソフトの使い方だけに習熟した技術者によって車両開発が行われることに対し,本セミナーの企画者は危惧を抱くものです
自動車の運動力学には,以下のような三つの特徴があります.第一は運動方程式が実験とは独立に,少数の力学原理から演繹的に導出されるという自明の特徴です.第二は基本的な特性が低次の線形常微分方程式で表せるという自動車運動特有の特徴があります.さらに第三に,過去半世紀にわたって他の分野では考えられないような多くの研究者,技術者が研究してきた結果,理論の整備が行き届いているという特徴もあります.特に,第二,第三の特徴から,運動力学の基礎を理解することにより,車両運動を理論の高みから一挙に俯瞰することができるようになるのが自動車の運動力学の特徴です.CAEソフトにすでに習熟している方にも,電卓をたたく程度の計算で応答の概略が推定できるなど,お役にたつ内容ではないかと確信しております.
航空機(航空工学科)や船舶(船舶工学科)を対象とした運動力学の講義を行っている大学は数えきれないほどありますが,自動車の運動力学の講義を体系的に行っている大学は海外を含めても見当たらないように思えます.本セミナーでは,2名の講師がおよそ20年間にわたって,東京大学,日本大学において,独立に行ってきた講義のノート2冊を突き合わせ,講義内容を詳細に検討し,大学の一学期(1.5単位)の科目に匹敵する内容を2日間で集中的に講義を行うものです.なお昨年度からは,重要で内容も豊富なタイヤ力と運動性能の2項目は,前半(I)で基礎的な内容を説明し,後半(II)で開発実務を視野に入れたやや高度な内容をメーカの方から講義をしていただく形にしています.
本セミナーのレベルは,機械学会で行っている基礎セミナー「自動車の運動力学」で概略を理解した方(およびこれと同程度の知識がある方)で,自分で実際に計算を行ってみたいという方を対象としています.
【内 容】
9月12日(木)
10.00-12.00 タイヤ力I(転がり摩擦,線形)
藤岡 健彦(東京大学)
13.00-14.30 運動方程式
堀内 伸一郎(日本大学)
14.45-16.45 運動性能I(線形解析)
堀内 伸一郎(日本大学)
17.00-18.30 振動・乗り心地
藤岡 健彦(東京大学)
9月13日(金)
10.00-12.00 タイヤ力II(飽和特性,Magic Formula)
牧田 光弘(日産自動車)
13.00-15.00 運動性能II(基本計画,性能割付)
山本 真規(トヨタ自動車)
15.15-16.45 サスペンション機構
堀内 伸一郎(日本大学)
17.00-18.30 ドライバモデル
藤岡 健彦(東京大学)
【定 員】
40名