イブニングセミナー(第159回) 君達にはいいたい事があるかね? 記録映画「夢と憂鬱-吉野馨治と岩波映画」の上映
【開催日】
2013年4月24日(水)18.00~20.30(今回は時間延長します)
【趣 旨】
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
【テーマおよび講師】
映画の上映ですので、作品内容の紹介をさせていただきます。
講師:桂 俊太郎(映像作家)
【作品内容】
1950年科学映画の製作会社としてスタートした岩波映画製作所。倒産するまでに製作された9000本以上の作品には、テレビが普及する以前の日本人の生活や経験を記録した貴重な映像が含まれている。
また、岩波映画は「岩波映画学校」といわれた程多くの人材を育て、現在の映像界に大きな影響を与えた。その教育、製作、経営の中心にいたのが、設立メンバーの一人吉野馨治である。吉野は、人間が科学的な考え方をすれば、豊かな社会をつくれると信じたが、無残にもその科学に最後は裏切られる。吉野の科学映画にかけた夢と苦悩を、多くの関係者の証言と過去の記録映画37本で解き明かしていく。
この作品は、2009年4月撮影を開始し、2011年3月11日の東日本大震災の直後に完成しました。福島原発の状況を見る時、少なからず因縁を感じます。
【証言者】(登場順)
吉野 宏 羽仁 進 小村 静夫 羽田 澄子 片野 満 奥村 祐治 牧 衷 吉原 順平 土本 典昭 吉野 正 吉野 寿子 大津 幸四郎 竹内 亮 重森 和子 伊坂 能行 �・木 隆太郎
【使用映画】
「火の車お万」(1928)監督 曾根純三 撮影 大井幸二 河合映画
「上海」(1939)編集 亀井文夫 撮影 三木茂 東宝
「戦ふ兵隊」(1939)監督 亀井文夫 撮影 三木茂 東宝
「雪の結晶」(1939)指導 中谷宇吉郎 撮影吉野馨治 東宝
「霜の花」(1948)指導 中谷宇吉郎 撮影吉野馨治 日本映画社
「凸レンズ」(1950)演出 小口八郎 撮影 吉野馨治 以下岩波映画
「はえのいない町」(1950)演出 村治夫 撮影吉野馨治
「村の婦人学級」(1957)演出 羽田澄子 撮影 小村静夫
「佐久間ダム 第一部」(1954)演出 高村武次 撮影 小村静夫
「天竜川」(1952)演出 高村武次 撮影 小村静夫
「佐久間ダム 第二部」(1955))演出 高村武次 撮影 加藤和三
「かえるの発生」(1955)演出・撮影 吉田六郎
「ひとりの母の記録」(1955)演出 京極高英 撮影加藤和三
「教室の子どもたち」(1955)演出 羽仁進 撮影 小村静夫
「絵を書く子どもたち」(1956)演出 羽仁進 撮影 小村静夫
「双生児学級」(1956)演出 羽仁進 撮影 小村静夫
「新しい製鉄所」(1959)演出 伊勢長之助 撮影 瀬川順一
「巨船ネス・サブリン」(1961)演出 楠木徳男/富沢幸男 撮影 牛山邦一
「橋のしくみ」(たのしい科学)(1957)演出 矢部正男 撮影 富沢昌一
「ガラスの秘密」(たのしい科学)(1958)演出 各務洋一/桑野茂 撮影 今野敬一
「水車」(たのしい科学)(1961)演出 合田寛 撮影 中山正治
「冷蔵庫の話」(たのしい科学)演出 渥美輝男/斉藤英二 撮影富沢昌一/中山正治
「浮世絵の復刻」(年輪の秘密)(1959)演出 秋山矜一 撮影 今野敬一
「久留米かすり」(年輪の秘密)(1959)演出 土本典昭 撮影 狩谷篤
「海壁」(1959)演出 黒木和雄 撮影 加藤和三
「ルポルタージュ炎」(1060)演出 黒木和雄 撮影 小村静夫
「わが愛 北海道」(1962)演出 黒木和雄 撮影 清水一彦
「新潟県」(日本発見)(1962)演出 秋山矜一 撮影 奥村祐治
「山梨県」(日本発見)(1962)演出 土本典昭 撮影 鈴木達夫
「鹿児島県」(日本発見)(1962)演出 土本典昭 撮影 鈴木達夫
「群馬県」(日本発見)(1962)演出 黒木和雄 撮影 鈴木達夫 未放送分
「東京都」(日本発見)(1962)演出 土本典昭 撮影奥村祐治 未放送分
「群馬県」(日本発見)(1962)演出 羽仁進 撮影 栗田尚彦
「東京都」(日本発見)(1962)演出 各務洋一 撮影 田村勝志
「東京オリンピック」(1964)ニュース映画
「動き回る粒」(1970)演出 金重義宏 撮影 古瀬昭生
「水俣-患者さんとその世界-」演出土本典昭 撮影 大津幸四郎 東プロ
【作品の見所】
過去の名作37本と岩波映画関係者17名の証言インタビューで綴られる本作品は、様々な視点で鑑賞する事が出来ます。視聴者の方々は、現在の職業、肩書き、環境、興味等、個々人の関心に引き寄せてご視聴下さい。例えば、
1、 日本の記録映画の歴史を知りたい方には、名作ダイジェストとして。
編集にあたり、作品のエッセンスを味わっていただきたいという思いから、ナレーションベースの背景的な編集ではなく、ある程度のブロックを抜粋するという方針で編集しました。
2、 映画と社会、映画と時代との関わり方の接点として。
特に戦後の復興期から高度経済成長、そして、その矛盾が顕在化する70年代まで。
岩波映画の若き映画人が、どの様な問題意識を持ち、社会に対して「映画」でなにが出来るかを模索していった過程を、製作された作品と証言で表現しました。
3、 カメラマンであり、プロデューサーであり、経営者であった吉野馨治を通じて。
技術者の姿勢、企画者の立ち位置、経営の理想と現実。吉野馨治は、自分の置かれてきたそれぞれの立場で、最善を訴求した人物でした。例えば、会社経営や管理者の立場にある方でしたら、「会社とは何か?」「理想的な管理とはどうあるべきか?」等、ご自分の環境に照らし合わせて、吉野の『夢と憂鬱』を共有いただければと思います。
4、「君達にはいいたい事があるかね?」という言葉をかみしめて。
加害と被害が互いに交錯する複雑な現代社会。ややもすると、私達は、進むべき方向を失い、口を噤み、周囲の動向にばかり目を走らせがちです。そんな心理状態にある私達に、自らの人生を悔いた吉野が最後に送ったメッセージ「君達にはいいたい事があるかね?」。この言葉はどんな逆説を含んでいるのか?その答えは、視聴者個々人にお任せ致します。
<懇親会> 大学近くの「バブレストラン アミ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
会費 3 000円程度
【次回予定】
2013年5月29日(水)18.00~20.00
ロボットが街を走る― 搭乗型移動支援ロボットの公道実証実験 ―
講師:鶴賀 孝廣(つくば市産業コーディネーター)