講習会 グローバル技術者必須!! 機械の状態監視と診断技術 基礎・実践ノウハウと応用例・規格(入門・初級者向け)
2019年9月18日 | 講習会No.19-87
主催:日本機械学会 標準事業委員会
協力:機械システムの状態監視と診断に関する研究会
開催趣旨:
世の中、グローバル化の時代。規格のあり方も大きく変わってきています。振動の制限値や製造に関する規定だけではなく、ある技術を適用するときに参照されるべき規格も多く制定されてきています。機械・設備の予防保全では、定期的補修後の故障率の増加、プラント停止による生産性の阻害などの欠点を補うため、効率的な状態監視保全が広く適用されるようになりました。そして、これを可能とする種々の機械状態監視・診断技術がISO規格で発行され、参照されています。現在もこの分野では更に多くの技術に関してISO規格が検討されており、国際的にも発展領域にあります。
一つの機械をトラブル無しに長期間運用するためには、振動技術だけではなく、他の多くの診断技術を知り、状況に応じて各技術の強みを活かして併用することができるグローバルな技術者の育成がとても重要です。本講習会では、機械の状態監視と診断に関する技術的な概要から、振動、熱画像等の代表的な監視診断技術を取り上げ、とくにこの分野を始めて聞く人から初級者までを対象に,その基礎と応用の初歩、そして関連するISO規格までを分かりやすくご紹介します。本講習会を通じて最新の状態監視診断技術と規格を学び、グローバル技術者として羽ばたいてください。
題目・講師:
午前 概要と振動診断技術
9:30~10:15
Ⅰ.機械システムの状態監視と診断に関するISO規格概論と機械状態監視診断技術者(振動)資格認証制度
講師:榊田 均(元 東芝)
ISO/TC108/SC5(機械の状態監視と診断サブコミッティ)では1994年から規格開発を開始し、これまでに機械の状態監視と診断に関してその一般概念から診断手法、各種診断技術、データ管理と表現等多岐にわたる多くの国際規格を発行してきました。ここでは、それらISO規格の概要と現在の動向、今後の方向性について概説します。また、技術者のグローバル化に対応するため技術者の能力を客観的に判断し得る資格として、技術者の認証制度を規定したISO規格が発行されています。日本でも機械状態監視診断技術者認証制度(振動)が2004年から開始され、既に多岐の分野から4000名に及ぶ認証者を輩出しており、そのニーズと関心の高さが示されています。この技術者資格認証制度についても概説します。
10:25~11:10
Ⅱ.大型高速回転機械の状態監視と振動診断 -基礎と応用例- 講師:瀧本 孝治(新川電機)
発電や石油、石化など多くのプラントで重要な役割を担っている大型高速回転機械は常に状態を監視しながら運転されますが、その状態監視パラメータの中でも振動データは多くの情報を持っており、異常兆候の検知や異常原因の究明に利用されています。ここでは、振動現象と振動計測の基礎、および振動解析診断技術の基礎と診断事例に関して説明します。さらに、回転機械の振動測定と評価基準に関する基本的な考え方を示しているISO規格に関しても説明します。
11:20~12:05
Ⅲ.軸受の状態監視技術 風力発電装置の事例 講師:高橋 亨(NTN)
風力発電装置は自然環境のなかで変動する風を受けながら長期間使用されます。できる限り運転を止めずに発電を継続するためには、動力を伝達する回転機器の状態監視が欠かせません。振動診断アプリケーションの一つとして風力発電装置における状態監視と観測事例を紹介し、実際の機器での振動診断における注意点などとともに、設備のメンテナンスへの活用について説明します。
午後 機械の内部を診る診断技術
13:00~13:45
Ⅳ.機械の循環器系(潤滑油)の診断で日常の健康管理を 潤滑剤分析 講師:四阿 佳昭(日鉄物流)
機械システムの状態監視と診断を目指す人にとって、潤滑油というと化学のイメージが強く、なじみが薄いかもしれませんが、潤滑系診断技術(潤滑剤分析)は、油の状態を把握する事が最終目的ではなく、潤滑油に混入する摩耗粒子等の情報から、機械要素の摩耗・損傷過程における早期からの状態を把握し監視することを狙っています。潤滑油は機械の摩擦面を通って出てくるので感度も高く、早期からの状態把握によりプロアクティブなメンテナンスを実践し、トラブルの未然防止や安定稼働に寄与する有効なツールとなっています。ここでは潤滑剤分析による診断技術の内容と特長や適用例、これを活用したメンテナンス活動の効果について説明します。
13:55~14:40
Ⅴ.機械の異常は熱にも現れる 熱で診る状態監視技術 サーモグラフィ 講師:山越 孝太郎(サーモグラファー)
設備に劣化や故障が起こるとそこにエネルギーロスが生じ、当初の性能を保てなくなるばかりか、災害に至ることもあります。エネルギーロスは、電気回路であればジュール熱損失、回転機器であれば摩擦熱損失や振動(運動エネルギー損失)となって現れます。赤外線サーモグラフィは、損失熱を定性的かつ定量的に測定するのに最適な手法です。赤外線サーモグラフィ装置の特性や劣化故障と発熱のモードを正しく理解することによって、効果的な状態監視や診断が期待できます。本講習では具体的な診断事例を交えながら、機械設備の状態監視技術について説明いたします。
14:50~15:35
Ⅵ.加速度センサで見えない状態を見る監視技術(IoTの切り札) AE 講師:西本重人(日本フィジカルアコースティクス(株))
設備に異常が進行して振動や加速度に変化が現れるのは、設備としては末期の状態と考えられます。これに対し、AE法は亀裂や摩耗の進行に伴い発生する弾性波を検出する技術ですので、設備異常のもっとも初期状態で検知できます。近年、IoTが流行していますが、カギとなるのはそのセンサ部で、AEへの期待が大きくなっています。AEの基礎技術や計測方法、機械の診断やIoTの事例を御紹介します。
15:45~16:30
Ⅶ.電流で診る電動機と回転機械の状態監視と診断 講師:劉 信芳(高田工業所)
誘導電動機の駆動電流信号の計測・解析による回転機械の状態監視診断技術にMCSA(Motor Current Signature Analysis)があります。この手法はセンシングを電気室中の電気盤で行うため、従来の振動解析や潤滑油分析等の監視診断方法と比べ、回転機械の設置現場状況の影響を受けず、電動機を含めた回転機械の電気的異常、機械的異常および電源品質問題などを比較的感度よく検出できる特徴があります。このMCSAの変遷、基本原理、最近の動向について解説します。
定 員 60名(申込み先着順により定員に達し次第締め切ります。)