第52回バイオサロン
2018年12月13日 | バイオエンジニアリング部門特別講演会主催No.18-164
開催日時 2018年12月13日(木)15:00~16:30
企 画 バイオエンジニアリング部門
趣 旨
【題目】卵子の品質評価
【講師】村山 嘉延(日本大学 工学部 電気電子工学科 准教授)
【内容】
卵子に限らず、細胞の生と死の境界は生命科学の深遠なるテーマのひとつである。ところが、細胞は個体から切り離された状態で研究され、実験終了後には処分されるのがほとんどであり、細胞が健全な状態で生きていたと結論づけるのは難しい。この意味で、卵子は単一の細胞でありながら個体でもあり、母胎に移植して産仔を得ることで「自然な状態で生きていたと結論できる」ユニークな実験系であるといえる。
加えて面白いことに、この卵子の研究では、細胞の生死の判断でさえ難しいというのに、健康診断のように品質を評価したいという必要性が高まっている。その背景には、ヒト生殖補助医療における選択的単一胚移植の必要性がある。母子共に重大な合併症のひとつである多胎妊娠を防止するために子宮に移植する胚の数を減らすべきとの世界的認識を受け、本邦においても「35歳未満の患者に対する初回の移植では1個に制限する」とのガイドラインが発表された。これにより、体外受精させた複数の受精卵から優良胚を一つだけ選択する必要性が新たに生じている。
いのちとなる卵子からRNAやタンパク質を採取することはできない。エックス線やレーザー光、可視光ですらも細胞に損傷を与える。そのような制約の中で、どのようにすれば卵子の品質を評価できるだろうか。最近の研究動向について、私の研究成果や仮説、夢を交えながら紹介し、皆様方と議論できればと思っています。
【司会】長山 和亮(茨城大学 工学部 機械システム工学科 教授)
【定員】50名