イブニングセミナー(第223回) 共に生きるために -世界の農村指導者を育てる-
企画 技術と社会部門
開催日 2018年11月28日(水)18.00~20.00
趣旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.
われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.
技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
広大な平らな土地で大量の肥料と農薬を使い,単一の品種を生産するのも農業の一つの理想であるが,鶏や乳牛まで工場の機械のように扱う方法は効率的ではあるが何か不自然な印象を受け,地震による停電では捨てるために搾乳する風景に悲しさを感じた.
この生産性の高効率化よりも,逆に,日本の多様な地形と気象と一体になった,小規模だが無駄が無い農業は,資源の有効利用を行うという意味での高効率化を目指し,必要なものを必要なだけ生産する,持続可能なもう一つの理想の姿であると思う.
アジア学院には,アジア・アフリカ諸国の農業指導者がそれぞれの自国に役立つ農業とリーダーシップを学び,それぞれの国で公平で平和な地域社会を創るために集まっている.所属する団体・組織の方針を決め,農業による自立や農業経営を指導するリーダーたちであるが,ここでは協力者であり友人である.日本で学ぶ以上日本語も学ぶが,共通言語は英語のようである.
温帯の日本の農業では雑草を積極的に除去することで,農産物の品質と生産性を上げるが,乾燥地域では雑草を残すことで日光の直射による地面の乾燥を防ぎ,放牧しているヤギなどの家畜の餌の一部にすることが可能であり,地域に合った農業が存在する.
白いトウモロコシが眼に付く.日本人好みの味の黄色いものは栽培されていない.初めて見る野菜もあるが,彼らの国では普通に食材とされるものである.
ほぼ自給自足が出来ていて,堆肥も作るが,穀物を挽いて粉にし,植物から油も搾る.ここで作られるクッキーは市販されているが,美味しいから好きである.
農業は集団で行われるが,いろいろな国の農業指導者たちの共同活動であるから,意見や方針が合わないのは当然である.これをまとめるリーダー(リーダーたちのリーダー)は大変であるが,季節が変わるとリーダーの交代が行われ,全員がそれを経験するために,国に帰る頃には優れた国際的な指導者になっているとのことである.
日本の指導者で発展途上国に行き活動する組織も重要だが,期間が過ぎて頼れる指導者が去った後に現地の次の指導者として自立することは難しいが,ここでは自国のリーダーが戻ってくる.
アジア・アフリカの農業指導者たちと生活し,指導している講師に「共に生きる」という視点での世界の農業について語っていただく.
講師:荒川朋子(アジア学院 アジア農村指導者養成専門学校 校長)
次回以降の予定:
2018年12月19日(水)「幕末の城―最後の日本の城郭―」八巻孝夫
2019年 1月30日(水)「建物は使ってこそ生きる -自由学園の文化財経営-」福田竜
2019年 3月27日(水)「仮題:水族館の魅力」杉村誠