イブニングセミナー(第216回) 日本初の大深度有人潜水調査船しんかい2000
企画 技術と社会部門
開催日 2018年4月25日(水)18.00~20.00
趣旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.
われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.
技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
2004年に退役した有人潜水調査船しんかい2000 が2017年8月7日に日本機械学会「機械遺産」機械遺産第87号の認定を受けた.
日本初の大深度潜水船という先進的な機械としての価値だけでなく,日本の深海研究の牽引,日本周辺海域でのさまざまな発見,
そして現在の新江ノ島水族館での展示と良好な保存状態が評価されての認定だ.
しんかい2000は,1981年10月に三菱重工業株式会社神戸造船所からJAMSTECに引き渡された.
それまでの日本の潜水船は船体が持つ浮力とバラストタンクで潜航・浮上を行っていたが,しんかい2000は直径約100μの中空耐圧
のガラス球をエポキシ樹脂で固めた浮力材シンタクティックフォームと鉄バラストの利用,完全球体の耐圧殻,深海用海水ポンプの
搭載など,日本初のさまざまな技術により建造された有人潜水調査船だ.
また,専用母船なつしまも同時に建造され,なつしまに搭載され調査海域に赴くことから,飛躍的に調査海域が広がった.
世界初の沈み込み帯での化学合成生態系であるシロウリガイコロニーの発見,深海底から吹き出すCO2ハイドレートの世界初の発
見,今海底資源として注目を集めている熱水噴出域の日本初の発見など,主に科学的調査において大活躍し,2004年3月末に潜航回
数1,411回で惜しまれつつ退役した.その後,2012年から神奈川県藤沢市の新江ノ島水族館で展示されている.
しんかい2000とそれに続くしんかい6500や世界の潜水船の変遷,また今注目を集める日本の海底鉱物資源などをご紹介する.
講師:田代省三 (しんかい2000初代潜航士,潜航長,しんかい6500初代潜航長)(国立研究開発法人海洋研究開発機構 広報部長)
懇親会
明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.セミナー後に懇親会場にて受付.
参加会費は 3,000円,学生は半額
次回予定:2018年5月30日(水)