イブニングセミナー(第213回)家庭医は特定の疾患だけなく「人間全体」を診る
開催日 2017年12月20日(水)18:00~20:00
会 場 明治大学 理工学部 駿河台キャンパス(リバティタワー 11階1113教室)
趣 旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.
われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
日本の病院では何科に行くべきかを患者自身が選びます.しかし病気の方では複合していたり,関連していたりして選んでくれるとは限りません.認知症科はありません.
ドクターGなら総合医ですから何でも診てくれるでしょうが,患者さんが日頃診て欲しいのは,内科のみならず精神科,小児科,整形外科などあらゆる病気やけがを扱ってくれる家庭医です.
家庭医は,地域に住む人々のかかりつけ医として,患者さん本人だけでなく家族の健康までも管理する医者です.一般的に医者の仕事は専門医として「体の中の壊れている部分を修理する」というイメージですが,家庭医の場合,特定の疾患だけを診るのではなく「人間全体を診る」という視点が大きいのが特徴です.これは「総合診療」と呼ばれます.
医療者と患者のコミュニケーションは,実は情報を引き出す以上のものを含んでいます.関係性ができて信頼感が高まると,それだけで治療効果が高まることもあります.情報を取るだけならロボットにでもできます.でも,病院に行ってそこにロボットの医者が座っていたとしたら,どう思うでしょうか.ロボットは非常に正確に,「どこが痛いですか?」「痛みの種類はどんな種類ですか?」「一から十のうち,いくつくらいの痛みですか?」と症状を聞いてきます.それで,症状をすべて伝えられたとします.でも,それだけでは患者さんは満足できません.
全人的に診るという視点があるので,体だけ治せばいい,薬だけ出していれば良い,というわけではありません.例えば,認知症の場合,大変なのは患者さんご本人だけでなく,介護しているご家族もなんです.だから,認知症の方とそのご家族を一緒にケアしていかなければいけません.
認知症の薬というのもありますが,治る薬ではありません.重要なのは,医者だけでなく看護師やリハビリ専門職,ご家族の状況を細かいところまで把握してくれるケアマネージャーなど,さまざまな職種の人と連携しながら,患者さんの心も診て,家族のことも診る.このようなチーム医療における「協働」が大変でもあり,やりがいもあるところです.とくに最近ニーズが高まっている在宅医療・地域医療においては,いろいろな分野の医療従事者の方と連携が必要になってきます.
今取り組んでいることでは,東京の「谷根千」(谷中・根津・千駄木)という下町でお寺や銭湯,古民家といった人の集い場に注目した研究をしています.地域の中で,いかに市民主体による健康づくりが可能なのかというのがテーマです.というのも,これからの日本において,健康な社会づくりをしていくためには,実は医療従事者などの専門家主導ではなく,市民が主体になって取り組む活動が重要なんじゃないかと思います.僕自身,専門家としての「白衣」を脱いで,一市民として地域に入って活動するのが好きなんですね.
(ホームページより抜粋 y.k)
講師:孫大輔(東京大学大学院医学系研究科 医学教育国際研究センター)
懇親会
明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.懇親会参加費3,000円,学生1,500円.
セミナー終了後に懇親会場にて受け付けます.
次回予定
第214回 2018年1月31日(水)18:00~20:00
テーマ:(仮題)端度器とレーザーの波長
講師:須賀信夫 (ミツトヨアメリカ 元副社長 /ミツトヨアメリカ計測学院 顧問)