第50回バイオサロン
2017年12月13日 | バイオエンジニアリング部門特別講演会主催No.17-148
企 画 バイオエンジニアリング部門
趣 旨
【題目】多種のタンパク質の高密度・連続多重染色を実現した超解像顕微鏡法IRISの原理と実践
【講師】木内 泰(京都大学大学院医学研究科 神経・細胞薬理学 准教授)
【内容】
近年開発された超解像顕微鏡法は、光学顕微鏡の分解能の限界(約200 nm)よりも一桁小さい分解能を実現した。しかし、サンプリング定理に基づくと20 nmの分解能のためには、10 nmに1個の標識が必要である。このような高密度標識は、蛍光抗体(サイズ10 nm以上)や蛍光タンパク質の発現による標識方法では極めて困難である。このため分解能が向上したにも関わらず、不均一かつ低密度な標識が目立ち、標的タンパク質の分布が必ずしも忠実に画像化できないという問題に直面していた。さらに使用できる蛍光色素に限りがあるために多種類のタンパク質を染め分け、同一の細胞で観察することも困難であった。本発表では、最近我々が、これらの問題を解決するために開発した新しい超解像顕微鏡法IRISについて報告する(Kiuchi et al., Nat. Methods, 12: 743-746, 2015)。IRISは、蛍光1分子の高精度な位置測定に基づく超解像顕微鏡法(例PALMやSTORM)の原理を利用している。IRISでは、標的分子に結合解離する蛍光プローブを用いて、標的を標識する。標的に結合した蛍光プローブを蛍光1分子画像として取得し、プローブの中心位置を高い精度で決定する。多数枚の蛍光1分子画像を取得し、多数の中心点を積算することで高分解能画像を再構築する。このため取得する画像の枚数に応じて多数回のプローブの結合(すなわち標識)を捉え、標的の標識密度を上限なく高めることができる。さらに結合解離プローブを洗い流し、別のプローブと交換することで、連続多重染色を実現する。我々は、IRIS方式を実証するためにアクチン線維や微小管、中間径フィラメント、接着斑に局在する様々なタンパク質の断片から結合解離プローブの作製を行った。そして同一細胞でこれらの構造の多重染色超解像画像を得ることに成功し、微小領域での細胞骨格や接着斑の空間的な位置関係の観察を可能にした。
【司会】工藤奨(九州大学 大学院工学研究院 機械工学部門 教授)
【定員】50名