イブニングセミナー(第209回)アメリカに見る子供の防火教育と火付け防止プログラム
企 画 技術と社会部門
開催日 2017年8月30日(水)18:00~20:00
趣 旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.
われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
私が過去23年勤務した在日米海軍消防隊で学んだ,米国消防の特徴あるStrategy(戦略).その中で特に目から鱗の子供への防火教育と火付け防止プログラムをお届けします.
皆さん,最近日本でも火災統計の中に火遊びによる火災が増えているのをご存じですか?米国では1970年代より子供 (0~15歳)によるFire Setter(火付け)は,大問題でした.
FBIが子供による事件で最大被害額が火付けによるものだと報告しています.
子供達は好奇心で,仲間からの圧力で,親の離婚などによるストレスで火で遊びます.その中で悲しいことに命を落とす子供達がいるのです.
消防士たちは,小さな子供の遺体を前にして,何とか火傷が小さいうちに自分の身体に着いた火は自分で消させようという決意のもとに,プログラムを考えだしました.
このような考え方は,日本ではあまり聞かれません.日本では良い子はマッチやライターでは遊ばない.もし洋服に火が付いたら用意した水で消しなさい.
近くの大人や先生に言いなさい.などと教えています. 私の子供たちもそうでしたが,日本の子供は受け身です.
アメリカの子供はだれにも頼らず,自分で洋服についてしまった火は自分で消すように教えられます.何故ならいつも大人が側にいるとは限らないからです.
消防士から習ったことを生かし,燃焼の三原則(燃えるに必要な3つの要素)のうちの酸素の供給を断つために,地面に体をこすりつけ,窒息消火させる“Stop Drop and Roll”そして火災が起こった自宅からの大人顔負けの大脱走(Great Escape)です.
高い知識を噛みくだいて教えることで,子供は,本来ならば恐ろしいはずの火災でも,落ち着き,技術を使って危機を回避することが出来るのです.
このような危機管理感覚というものは,訓練を受けなければなかなか身につきません.
講師:長谷川祐子(リスクウォッチ、リスクコミュニケーター,前 在日米海軍司令部地域統合消防隊予防課課長)
懇親会 明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.
懇親会参加費3,000円,学生1,500円.
セミナー終了後に懇親会場にて受け付けます.
次回予定
第210回2017年9月27日(水) 18:00~20:00
テーマ:エンジニアの海外奮戦記―シニアエンジニアの世界プロジェクト紀行―
講師:藤木良隆(技術士/建築部門,総合管理部門,APECエンジニア)