イブニングセミナー(第205回) いのちの教育に科学から迫る ~シーラカンスと私を結ぶ二億のおかあさん~
趣 旨
技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も,社会との深い関わりの中にあることは明らかである.
われわれが新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
講演テーマおよび講師
ヒトの直系を縦糸にして描いた進化の歴史を考える.私たちにつながる生物を追うので,人気者の恐竜は残念ながら脇役である.
・4億年前のシーラカンスから始めるが,これの体の構造は今の私たちにも受け継がれている.
「個体発生(ヒトとしての個体の発生、成長)は,系統発生(生物の進化の歴史)をくりかえす」という法則がある.さらに長い歴史を生き抜いてきた生物の進化の背景に横たわる「法則」は何であろうか?
それらの問題を通じていのちの問題を科学的に迫り,かつ、いのちの教育にもつなげる.
・ヒトの直系を視点にすえると,魚類→両生類→哺乳類→人類へと進化してきた.シーラカンスは魚類の中の肉鰭類(にくきるい)の一つであり,ヒトの直接の祖先にあたることが明確になっている.
最近では爬(は)虫類は、傍系であるあることもわかってきた.
・肉鰭類から両生類への進化,両生類から哺乳類への進化の過程では,決して当時の「強者あるいは優秀な者」が次代へと進化したわけではない.むしろ弱者だったものが生き抜くための結果であった.
それはサルからヒトへの進化でもありえたのではないだろうか?
・現在、学校現場ではいじめが繰り返されるたびに「いのちの教育」が行われる.生徒がいのちを軽んじているというのが理由である.そして「道徳的な」いのちの教育が行われる.
はたしてそれでいいのか,あるいはそれだけでいいのかが,大きな課題と考え,ひとつの実践例としての取り組みとしてご紹介する.
講師:関根一昭(埼玉県立秩父高校講師/日本地質学会会員/地学団体研究会会員)
<懇親会> 明治大学アカデミーコモン1階の「カフェパンセ」にて,講師を囲んで懇親会を行います.懇親会参加費 3,000円,学生1,500円.セミナー終了後に懇親会場で受付けます.
次回予定:
第206回 2017年5月31日(水) 仮題:アフリカと国連の四方山話(大島賢三:アフリカ協会理事長,もと国連大使)