基礎教育講習会‐エンジン技術の基礎と応用(その24)
2011年11月25日 | エンジンシステム部門講習会主催No.11
【協賛(予定)】
自動車技術会,石油学会,日本燃焼学会,日本マリンエンジニアリング学会,日本内燃機関連合会,日本ガスタービン学会
【趣旨】
本基礎教育講習会は,将来のエンジン技術を支える企業の若手技術者や学生を対象として,エンジン技術の基礎と応用に関わる幅広い分野の実用的な知識を提供し,教育することを目的として企画しております.今回は,予混合圧縮着火エンジンの燃焼の機構,排ガス計測の基礎,HCCI燃焼の基礎,燃料噴射系製品のこれまでの歩み,自動車用燃料の動向など,将来のエンジン技術開発のキーポイントとなる事項について,実務に即した基礎的内容の講習を企画いたしました.昨年度は受講者の大多数が「非常に役立った」と回答されています.是非,若手技術者の育成にご活用下さい.
なお、昨年度まで同一内容にて東京・関西2会場にて実施をしておりましたが、本年度は東京会場にて1回のみの開催となります.
【題目・講師・司会】
[司会:河崎 澄 滋賀県立大学]
≪午前≫
9.00‐9.05/挨拶 基礎教育講習会企画委員会 委員長 森吉泰生(千葉大学)
9.05‐10.15/(1)予混合圧縮着火エンジンの燃焼の機構と実現のための技術
近代のガソリン機関燃焼システムは,高効率を実現するために軽度なノッキングが生じる条件下で運転されることがあり,火炎伝ぱ燃焼の燃焼終期にHCCI的燃焼が存在し得る.高効率を追求する近代のディーゼル機関では,排気清浄化および熱損失低減を目的に低温燃焼が志向され,従来の拡散的燃焼に加えて,高EGR率,高過給の条件下での予混合的自己着火燃焼が導入されている.近代エンジンの燃焼を理解には,HCCI燃焼過程の理解が必須である.
HCCI機関実現のための技術課題として次の4点が挙げられる.すなわち,1.着火タイミングの制御(燃焼位相の最適化),2.高負荷運転の実現(高い圧力上昇率によるノッキングの発生回避),3.燃焼完結性の確保(CO,HCの低減,高効率の実現),4.サイクル変動の制御(変動機構の解明と制御)である.ここでは,予混合圧縮自己着火燃焼の機構について,素反応数値解析例を示して理解を深めるとともに,HCCI機関の実現のために4つの課題克服にチャレンジした先人研究者の取り組みについて紹介する.
講師 慶應義塾大学 理工学部 システムデザイン工学科 飯田 訓正
10.25‐11.35/(2)排ガス計測の基礎と最新の計測技術について
近年,環境・温暖化・エネルギー問題に関して,世界規模で同時に議論されるようになってきた.
その中で,オンロード・ノンロードに関わらず,エンジンを通して排出される規制物質,或いは未規制物質の更なる低減目標が各国で掲げられている.研究者,技術者は,その低減目標に向け日夜研究開発を続けている中,その一端を担う計測器においても高安定,高精度要求に伴う改良技術や最新技術を取り入れた計測法の開発がされてきた.ここでは,多様化してきた排ガス計測において,各種分析計の原理から排ガス・PM質量計測(CVS法)システムの基礎を体系的に解説する.また新しい計測技術として着目されているレーザーを用いた排ガス計測技術についても紹介する.
講師 株式会社堀場製作所 東京セールスオフィス 木原 信隆
11.35 – 11.50/全体質疑(午前の部)
≪午後≫
12.50‐14.00/(3)HCCI燃焼の基礎とポテンシャル
内燃機関に対して熱効率の向上と環境負荷の低減が強く求められる中,高効率と低エミッション性を両立する予混合圧縮着火(HCCI)燃焼に対する期待は高い.しかし,予混合気を圧縮自着火させるHCCI燃焼では,着火時期を適切に制御することが難しく,また,HCCI燃焼を適用できる運転領域が極めて狭いなど,実用化に向けて解決すべき課題は多い.ここでは,HCCIエンジンの研究開発動向を概観し,HCCIエンジンの特徴,実用化に向けた課題と対策について紹介するとともに,HCCIエンジンが有するポテンシャルについてまとめる.
講師 千葉大学大学院工学研究科 機械系コース 窪山 達也
14.10‐15.20/(4)燃料噴射系製品のこれまでの歩みと将来の展望
自動車を含む運輸部門からのCO2排出量は全排出量の2割を占め,地球温暖化防止や地球資源保護の立場から,CO2排出量の低減に向けて燃料消費を減らすことが求められている.また自動車の排気に起因すると考えられる大気汚染も,酸性雨や人体への影響が取りざたされ,その対応が大きな課題となっている.さらに今後はエンジンのさらなる高効率化やハイブリッド化等の電動化による燃費性能の向上や,急速に拡大する中国等の新興国市場への対応も考慮しなければならない.
その中で燃料噴射系製品は,内燃機関の燃焼性能を左右する重要製品であり,燃費性能の向上や排気改善に果たす役割は少なくない.燃料噴射系製品は,これまで排気規制や燃費規制の強化とともに進化してきた.
ここではガソリンエンジンとディーゼルエンジンの燃料噴射系製品に関して,これまでの変遷と今後の展望を紹介する.ガソリンエンジンではポート噴射システムと筒内噴射システム,ディーゼルエンジンではコモンレールシステムを取り上げ,それぞれのシステムを構成する製品の特徴と製品開発を進める上での課題について説明する.
講師 株式会社デンソー技研センター 技術研修部技術2室 谷 泰臣
15.30‐16.40/(5)自動車用燃料の動向 -バイオ燃料の課題と対応-
自動車用燃料は,エネルギーの運搬性,貯蔵性の観点からエネルギー密度の高い液体燃料が適しており,従来は専らガソリン,軽油等の石油系液体燃料が用いられてきた.今後も自動車用燃料の主流は石油系液体燃料であると見込まれる.一方で温室効果ガス削減や持続可能性の観点から,エネルギーの多様化を目指す動きがある.
ここでは,まずは石油系液体燃料の動向について紹介する.続いて,バイオ燃料を中心に,液体燃料の一次エネルギー資源多様化の取組みを取り上げる.バイオ燃料は,再生可能で温室効果ガス削減効果のポテンシャルを持つが,調達コスト低減や量の確保をはじめとする経済性・供給安定性の両立や,食料等との競合回避といった課題も多いことを示す.また,これらの課題への対応として,セルロース,藻類等の次世代バイオ燃料の技術開発の動向を紹介する.
講師 JX日鉱日石エネルギー株式会社 研究開発企画部 金子 タカシ
16.40‐16.55/全体質疑(午後の部)
16.55‐17.00/閉会挨拶 基礎教育講習会企画委員会 幹事 岡田 陽一((株)堀場製作所)
【定員】
60名,申込先着順により,定員になり次第締切ります.
【申込締切日】
2011年11月15日