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振動診断Q&A

まずは、お気軽に、主査の渡部(w20010503@yahoo.co.jp)までメールでご相談ください。


振動診断Q&A(No.2011-03)
質問 監視している機材は「ポンプ」「ブロワ」とそれらを駆動しているモータです。

最近、同コミュニティサイトから「リオン社」の資料を読ませていただき、参考にしておりますが、「CF値」「変位量」を使われており参考になりました。

判定には総合的に判定するとは思いますが、これらの値について何か参考になる書籍、文献などがございましたらご紹介くだされば幸いです。

現在はIMV社カードバイブロを使い、速度はISO基準、加速度はSKF社基準を使い、特にベアリングはFFT、生波形なども使って判定しております。

先だって、測定を行った際にCF値も注視していましたが、測定値がしきい値を超えていてもCF値的には3〜5程度であり、この辺りがいま一つスッキリしていません・・・。

回答 ISO-18436に基づく機械状態監視診断技術者(振動)資格取得セミナー用テキスト(推奨)などに基づいて記述します。

@測定対象機種としてポンプ、ブロワ、モータがどのような振動数が発生するかをカテゴリーUテキストの表4.2 、表4.3で確認してください。

A今回の対象機種のように転がり軸受で支持された回転軸の場合で、アンバランス、ガタ、ミスアライメントなどに起因するような振動数の場合は、ISOによる振動速度実効値が判定の参考となります。(カテゴリーUテキストp96)

B転がり軸受自体に起因する振動数の場合は、軸受メーカーなどの振動加速度の相対値基準や絶対値基準が正常、注意、危険などの判定の参考となります。(カテゴリーVテキストp409)

C転がり軸受の簡易診断としてCF値(波高率)も参考となります。(カテゴリーVテキストp408) ここに、最大周波数が例えば10kHz以上となるようにピックアップ選定およびその取り付け方法が必要となります。

D上記のAからCまでのどれか一つの値が許容値をオーバーする場合は、FFTなどを使った精密診断が必要となります。振動の原因が、アンバランス、ガタ、ミスアライメントなのか、転がり軸受の損傷なのかなどを究明する必要があります。



振動診断Q&A(No.2011-02)
質問 @振動指示計とはどのようなものか。
回答 例えば、IMVのカードバイブロというポータブル振動計の場合では、標準としての振動速度は10Hz〜1kHzなので、一般的な仕様であると考えられます。ここで、サンプリング周波数は19.2kHzと高いので、「フィルタ無しの設定」、として問題はないものと考えられます。
JFEメカニカルの神童君も同様です。他にはリオンや昭和測器にも当該の製品があるようです。

質問 Aインターネットで検索したレベルでは、最近のセンサはほとんどが何らかのフィルタがかかっているようだが、フィルタ無しの設定ができるものがあるのか。
回答 IMVのカードバイブロに使用されるピックアップとしては、低域振動測定用として3Hz〜300Hzの範囲のものもあるようですが、上記の標準仕様10Hz〜1kHzのものを使用すればポンプ試験に適合すると考えられます。当社には、IMVとJFEの製品がある為、上記の例を出しましたが、他社の製品については、不明なので調査して下さい。

振動診断Q&A(No.2011-01)
質問 ☆☆ HI規格 振動測定について ☆☆

アメリカの水中ポンプ試験にHI規格というものがあるのはご存知でしょうか。
American National Standard for Submersible Pump Tests Hydraulic Institute, Inc.
この規格の中に、振動測定の項があります。

この文章中、
11.6.8.3 Test procedure に、
『The unfiltered root-mean-square(rms) vibration〜』と記述されています。
判定値は、Figure 11.6.16A - Vibration limits (metric) を見ると、Vibration mm/s rms - maximum unfiltered という単位のようです。
”フィルターを通さない振動速度の実行値”、ということのようですが、この解釈が上手く出来ないでいます。

回答 『The unfiltered root-mean-square(rms) vibration〜』について
Unfilteredの意味は明確ではないですが、10〜1kHzの範囲でゲインが下がらずデータを採るようにすれば同義と考えます。

おっしゃられる様に、 ”フィルターを通さない振動速度の実効値”と考えてよいと思います。
この場合FFTによる測定を指しているのではなく、通常の振動指示計を使用して測定する。この時フィルター設定はしない(広帯域)でレンジは振動速度のrms表示とする。という事と解釈できます。

逆に周波数帯域を決めて判定する例が、カテVテキスト4章 4.4-(3)周波数帯域別のアラームおよびトリップの項にあります。

FFTを使用するとするなら、測定対象機器が発する周波数成分に対し、アンチエリアジングフィルタが影響しないように、すべての周波数をカバーする周波数帯域で測定し、オーバーオール表示をrmsで読むことになると思います。
振動速度センサの周波数範囲10〜数kHz程度かと思います。

FFTで測定した特定の周波数のピークの値を読んだ場合は、ピークの周波数成分のみの値となります。ピーク周波数だけを通過させる極狭帯域フィルターで測定したことになります。

質問 @JIS B 0906 に、広帯域振動速度という言葉で、
特定の振動数成分を取り出すためのフィルターを通さずに測定される振動データ、という定義があるのですが、同じことでしょうか。
FFTで振動を測定する場合、必ずアンチエリアジングフィルターを通すので、何か別の方法で、フィルターを通さない振動測定をせよということなのでしょうか。
回答 10〜1kHzまでの振動速度上の実効値
たとえば500HzまでのFFTを使用しないことを言っているだけです。卓越周波数成分があれば、下記で求められます。
(ISO10816-1)
質問 AFFTで振動測定することでよしとした場合、振動シビアリティーに同じく、10〜1kHz までの振動速度をオーバーオールで表した値を判定に用いるのでしょうか。
回答 ISO10816では、上記の振動速度の実効値を判定に用いる。
FFTのオーバーオール(OA)はFFTの測定周波数範囲で測定されたすべてのピークの二乗和の平方根で求めた実効値の√2倍より計算上求めています。
質問 B規格文章中、オーバーオールという記述は出てこないので、10〜1kHz の範囲で測定した振動速度のうち、ピーク値を判定に用いることは可能なのでしょうか。
(ただし、個人的には、FFTで測定した値のピーク値をとるということは、バンドエリミネートフィルターを通すこと=特定のフィルターを用いた振動測定に同義なのではないかなと思っているのですが、間違いでしょうか。)
回答 振動速度のうち、ピーク値を判定に用いるのは、軽微な異常が発生し始めた場合に、ピーク値の周波数以外の振動が大きくなり、状態が変化したことに気づかないので、好ましくないです。
FFTで測定した値のピーク値をとるということは、バンドパスフィルターを通す振動測定に同義です。
質問 Cオーバーオール値を求める場合、適切な分解能を選ばなければ過大評価になるという指摘もあるようですが、ナイキストのサンプリング定理を満たした測定、もっと極端に言って、10〜1kHz までの周波数範囲で分解能1.25Hz であれば、オーバーオール値を求めることが過大評価とはならないと思うのですが、いかがでしょうか。
回答 FFT のOAと振動計の指示の差について
指示計の方が若干高めに指示するという事例を聞いた事があります。
この事例ではFFTの周波数範囲や窓関数の影響が出ているものと考えられます。

まずは校正された振動計で測定し、判定を外れる等の異常振動の原因究明のためFFTで周波数分析されるスタンスの方が良いように思います。

尚、OAですが、計測器メーカーによってまちまちかも知れません。
仕様を確認することをお勧めします。



また、視点を変えてみると、

一般に、ポンプの試験の場合に、振動周波数の成分として考えられるのは、

@ポンプの据付け基礎構造部の固有振動数に起因する振動や、サージング、旋回失速など比較的に低い周波数の振動成分

Aポンプのアンバランスなどに起因する軸回転数の振動成分、ミスアライメントによる高調波成分、ポンプの羽枚数に起因する振動成分など

Bキャビテーションなどによる高い周波数の成分

このうちで、サージング、旋回失速、キャビテーションなどは異常振動として、運転条件を変更して振動を防止します。

これらを除いた振動成分について合成された振動が測定されるものと思われます。

これらの振動成分のどれかをフィルタで取り除くのではなくて、すべて含めて測定する意味で、unfiltered vibration、という言葉を使っているものと思われます。

デジタル処理を行っているFFTや振動計におけるアンチエリアジング・フィルタなどは、信号処理器に不可欠な固有の機能であって、機械振動の特定の成分をフィルタする目的のものではなく、unfiltered vibration、を損なうものではないものと考えられます。