一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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第85期会長就任のご挨拶

企業の技術者に対して学会を魅力あるものにするために

齋藤 忍 [石川島播磨重工業(株)主席技監] Shinobu SAITO


第84期の笠木会長が大変分かりやすい方針を出してくれました。1.学会の足腰の強化、2.人材育成への貢献、3.技術者集団としてのプレゼンスの向上、の3項目です。またこれを実施する上での手段が開かれた協働と革新だと述べておられます。今期も基本的にはこの考え方を踏襲して学会運営に当たりたいと考えています。
さて本会は今年度創立110周年となり、記念事業実行委員会(委員長 長島 昭)が組織され各種行事が計画されています。また昨年度制定された機械の日・機械週間関連事業が全国的に実施される予定です。これらの行事を成功裏に行う必要があります。
これらは上記3に相当する活動ですが、最も重要な学会の足腰の強化に関して、現在当学会は問題を抱えていると認識しています。それは正会員の漸減が止まらないという問題です。幸いにして学生会のご努力で学生員は増加し、会員全体で見ると漸増しています。本日はこの問題に関して現在までに分かったこと、まだ分からないこと、また実施予定の取り組みなどを説明させていただき、少しでもよい方向に向かうよう、当学会のリーダーの方々のご支援をお願いしたいと思います。

問題の所在

事態を理解していただくためまず図をご覧いただきたいと思います。この図の中には学会全体の会員、企業会員、および大学等の会員の年齢別分布が示してあります。この図から一目瞭然なように近年正会員が漸減しているのは、多数の高齢者会員が定年等の都合で会員をお辞めになるのを若い企業会員の著しい減少で補いきれていないということであります。

企業の若手会員の問題

企業の若手会員が何故これほどの落ち込みを示しているのでしょう。失われた10年とか就職氷河期といわれることに原因があるのでしょうか。簡単に考えるとそのように思いがちですが、そうとも限らないと思います。日本機械学会が企業の若手会員にとって魅力がないという意見をよく伺います。会員部会を中心として企業の若手会員の希望すること、および落ち込みの原因を調査してもらいますが、企業会員のリーダーの方々から自分が考える原因と対策をぜひお聞かせいただきたいと思っています。
企業の若手技術者は学会に所属しなくなったということでしょうか。ネットで何でも調べられ、特別員の会社に所属するならばすべての学会行事に参加できるので、学会に個人で入っている意味はないとお考えなのでしょうか。私は学会活動は人のつながり、お互いに面と向かって議論することによって自分流のネットワークを作り上げ、どんな問題に対してもスモールワールドを準備しておけることにあると考えています。若い人たちがこの機会を逃し、継続的な自己研鑽の機会を減らしているとすれば、これは国家的な損失であります。わが国のようにものづくりに依存している国にとって、このままの状態が続くとすれば、10年後の未来は明るくないと言わざるをえません。先頭走者となった今エンジニアリングの重要性は決して減少していないはずです。先輩諸氏に勧誘いただきまして、ぜひとも若い技術者の会員増と活性化を図らねばならないと考えています。話は簡単です。ぜひ40歳以下の技術者が回りにいらしたら学会に所属しているかどうか聞いていただきたい。まだでしたら入会を勧めていただきたいということであります。これは理事会を先頭に、支部関係者、部門関係者、評議員、商議員、特別員の関係者など学会の総力を上げて対処すべき問題だと認識しています。皆様のご協力を切にお願いするものであります。
もう一つ企業にとって学会が役に立つのは研究成果が規格になったときだというご意見があります。規格の制定に学会がもっと積極的に関与するかどうかは、学会の財政に極めて大きな影響を及ぼす問題でありますので、関係者とよく相談の上慎重に判断したいと考えています。

学生員とシニア問題

学生会の頑張りで准員・学生員を増やしていただいているのですが、卒業とともに退会される人が多く、学生員に対するフォローが不十分であると考えています。少しでも会員として留まっていただけるような施策を考え、理事会、支部、会員部会、および学生会共同で実施していきたいと考えています。ご協力のほどお願いいたします。
また2007年問題といわれる団塊の世代の定年問題があります。高度な技術と経験を身につけ、まだまだ元気な技術者をそのまま引退させてしまうのは大変な人材の浪費だと思います。まだ働きたいのだが再雇用制度がないという方は予備調査段階で10パーセント程度であります。これらの人の活用策を検討し、できることから実施したいと考えています。
これらの諸問題は今期の理事会だけで決着を見る問題ではありません。会員諸兄の協力が何よりも必要であります。再度ご協力を切にお願いしまして新任の挨拶とさせていただきます。