第82期会長就任のご挨拶
日本の産業と機械技術・機械工学は一心同体
長島 昭[横浜国立大学 理事]
Akira NAGASHIMA
産業・大学そして学会の変革期
機械学会会員の皆様,日本機械学会は,困難な問題はあるものの,今年も若い新会員,新学生会員を迎え,未来に目を向けております.いま,日本の産業界は苦しいトンネルを抜けて再び新しい発展を目指す段階に到達し,また日本の教育研究制度も新しい変革期を迎えております.厳しい世界にあって,私たちは困難な問題が与えられていること自体を一つのチャンスと感じて意欲を燃やしていかねばならないと考えます.
機械学会の歴史をかいま見てみますと,昔の日本の危機,変革の時代には,機械技術,機械工学は,その時々の社会の困難に正面から立ち向かい,産業と社会を支える中核となってきたことが分かります.日本の産業と機械技術,機械工学は,浮かぶにも沈むにも一心同体であります.機械技術が栄えるには産業の繁栄が必要で,産業が栄えるには機械技術が強くなければなりません.日本の産業復活は,機械技術,機械工学の発展なくしてありえないと考えます.
しかしながら,産業の復活において,製造業が消えることは決してありませんが,といって同じ技術が復活するのではないのは当然であります.同様に,機械技術,機械工業も,そしてまた,その革新をリードする機械学会も同じままに留まることはできません.
機械学会が現在,多くの問題を抱えていることはいうまでもありません.しかし,困難はこれまでも常に存在してきたことであり,私たちは目標設定をしっかり行って,明るい面に目を向けて行かなくてはならないのです.
本年もこれまでの諸事業は継続していくつもりであり,財政面の取り組みや出版や諸行事をはじめとした学会の根幹をなす諸事業については,柘植副会長,辻副会長をはじめ,理事会の総力で取り組んでまいります.すべての項目が重点ともいえますが,それらに加えて,今年度の新課題,重点的な取り組みを3課題に集約して申し上げます
会員増強の新課題
まず第1は,会員数の課題であります.正員,学生会員に対しては,一方で会員増強活動,他方では会員カード新設や会員サービスなどを通じた既存会員へのサービス強化,などが効果をあげつつあります.それらに加えて,特に本年の課題としては,田口筆頭副会長とも相談を致しておりますが,特別員への対応,これまで先送りされてきた女性会員増強,外国籍会員の増強などに取り組んで参りたいと考えます.特別員については,特別員の会社の実情やご希望を直接聞くための具体的行動も実施してみたいと考えます.女性会員や外国籍会員についてはそれぞれタスクグループを発足させて,推進をはかりたい.外国籍会員,在外日本人会員,留学生については第9番目の支部として国際支部の新設へ向けた動きをスタートさせたいと考えます.
政策形成への寄与
第2に,国や地域の政策形成との関わりであります.機械学会は,明治時代に発足のころは,日本の国家や社会のニーズを意識し,政府の政策形成に資する活動を行っております.しかし現在では,残念ながら国策への影響や政府機関との意志疎通は,希薄な状態となりました.機械学会が国や地方自治体の政策形成や行政にも貢献し,存在感を発揮する方向に舵をとっていく時代であると考えます.そのために何をなすべきか,私はまず第1に人脈形成とシステム作りが必要と考えます.柏木副会長をはじめ,何人かの理事には,その視点から,人脈形成の方策を考え,可能なことは本年度から試行していただくことをお願いいたしました.
どこからでも見える機械学会へ
第3に,私は機械学会が社会的な影響力をもつためには,広い意味での広報活動が極めて重要と考えます.会員へのサービスとしての,いわば内側への広報は,歴代の広報理事や広報情報部会の努力で,かなりの効果が上がってきております.しかしこれからは会員向け広報だけでなく,機械学会を背負った姿勢での対外広報の強化が必要であります.機械学会の社会における存在感を示し,そのことで新しいニーズや期待を吸い寄せ,さらに新しい活力に結びつけていくことが必要であります.
田中前会長をはじめとした前期81期の理事会,支部・部会・諸委員会のみなさまの果たされた献身的なご尽力に心から感謝申し上げます.今期82期の機械学会では,伝統を継ぐ諸事業に私ども新役員一同が誠意をもって取り組むことは当然のことであり,この伝統を継承していきたいと考えます.
それに加えて,変革期の世の中に対応して,ただいま申し上げたような新しい道を探る努力も行ってゆきたい.機械学会は,会員のためだけでなく,社会的役割を果たすことを期待されている組織であります.社会的存在を認められる活動が,ひいては会員である機械技術者の活躍の場を広げていくことにつながると信じます.
会員のみなさまのご支援をお願い申し上げます.
(2004年4月9日 通常総会あいさつより)