一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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第81期会長就任のご挨拶

改革の継続推進と成果の確実な発信

田中 重穗[長崎総合科学大学 理事長]
Shigeho TANAKA


会員の皆様のご推挙により,第80期筆頭副会長を経て,第81期の会長に就任することになりました田中でございます.
100年を越す歴史の中で,「機械および機械システムとその関連分野」(第二世紀構想委員会以後 日本機械学会の包含する分野はこのように拡大されている)における高い能力を有する専門家の集団として機械工学,機械技術,機械産業およびその関連分野での輝かしい成果を挙げてきた日本機械学会の会長を務めさせていただくことは,大変光栄に存じますが,厳しい社会・経済情勢の中での責務の重さを考えますと身の引き締まる思いがいたします.
さて現在我が国は,「科学技術創立国として人類社会に貢献すべく」科学技術基本法を制定して,国を挙げての改革に取り組んでいる最中であります.これにより実現しようとする社会の特徴を4つ挙げるとすれば次のようになると私は認識しております.

(1)環境と調和のとれた資源・エネルギー・物流システムによる持続可能な循環型社会
(2)高度に情報化された利便性豊かで創造性あふれる高齢化社会
(3)生命科学の成果が倫理性を持って定着する社会
(4)知的資産を重視する社会

これらの特徴を持った社会の構築は容易ではありません.例えば(1)の循環型社会の構築1つをとっても,1997年京都で開催された気候変動枠組条約締約国会議で日本は,地球温暖化ガスの排出量を2008年から2012年の平均値で1990年の排出量の6%低減を約束しております.
これを実現するためには,再生可能な自然エネルギーの高効率利用技術の開発および既存のエネルギーシステムの一層の高効率化と信頼性の向上を飛躍的に推進しなければなりません.また,(1),(2),(3),(4)の特徴を持った社会は,単一科学分野だけの力では実現できません.しかしこの社会の実現に向けて日本機械学会は重要な一翼を担って貢献しなければならないと考えております.
そこで第81期の活動目標は質の高い情報を提供し,元気のある製造業の復活,技術者の社会的なステータスの向上を目指し,部会,部門,支部,センターの協力を得,かつ,第80期の伊東会長の強力なリーダーシップで進められた諸改革の成果を大きな流れとして引きつぎ発展させつつ,次のような諸活動を実施することといたします.

1.産官学の連携強化による機械技術の新展開に向けての諸活動

(1)技術開発支援センターによる技術相談事業の促進
(2)製造業活性化の新しい芽を大学や企業から見つけ出して苗に育てる活動
(3)国家的プロジェクト事業の受託促進
(4)対外広報活動の強化

2.会員サービスの強化・会員増強に向けての諸活動

(1)会員が学会活動に参加することの意義・具体的成果が分かるシステム構築の検討
(2)会員を対象とした特別なWeb情報および海外情報提供に向けての検討
(3)外国人会員,存外会員のためのオンライン支部の充実
(4)より親しめる学会誌をめざした編集方針の確立
(5)次世代の技術者「ジュニア会員の拡充」および事業の促進
(6)女性技術者活躍の場を増やすなど,女性技術者拡充への努力
(7)会員であることのメリット拡充

3.技術者教育事業の促進並びに機械技術者の資質維持向上に向けての諸活動

(1)日本技術者教育認定機構による大学教育プログラム認定事業への協力
(2)技術者に対する継続教育支援プログラム提供などの活動
(3)国際的に運用する技術者資格認定制度のための活動

4.健全な財政に向けての諸活動

(1)各事業が独立会計で運営できるシステムの構築
(2)支部交付金算出基準の制定

5.国内学協会との連携強化

(1)国内機械系学協会「会長会議」をより充実した共同研究や政策提言の検討
(2)機械系学協会の「英文誌」共同出版の検討
(3)技術系にとっての「資格取得の意義」普及活動
(4)分野間の連携強化

6.国際展開戦略(グローバル化に相応しい国際交流)

(1)アジア地域内にある機械系学会とより一層の協力関係の促進
(2)世界の機械系学会とより一層の協力関係の促進

7.今後の戦略(社会とのチャンネル機能)

(1)循環型社会の構築に向けての活動
(2)「科学技術基本計画」などに対して機械工学の重要性をアッピールする提言
(3)高度情報化・高齢化社会に対した施策の検討
(4)新領域進出に向けての対策
(5)工学者・技術者の地位向上のための新評価尺度の検討と提案

この中で近年,会員の減少に歯止めがかからないことが最も気にかかることであります.これについては,直接会員増強に繋がると考えられる会員サービスの強化策を打つことはもちろんですが,現在政府が進めている教育改革項目の内の“理科大好きスクール”“スーパーサイエンスハイスクール”で確かな学力を向上させるための総合政策を打っていることと基本的な考えを共有して,長期的な視点から次世代の技術者「ジュニア会員の拡充」と「女性技術者拡充」にも力を注ぐこととしたいと考えております.
最後になりましたが,第80期伊東 誼会長はじめ役員の方々,各部会,部門,支部,センターで活躍された会員の皆様に心から敬意を表しますと共に,引続いて第81期にもご支援を賜りますようお願いして就任の挨拶といたします.