第79期会長就任のご挨拶
-機械学会の新たな挑戦-
小林敏雄(東京大学)
このたび、会員の皆様のご推挙により第79期の会長に就任することになりました。
長い歴史と輝かしい伝統をもつ日本機械学会の会長職を務めさせていただくことは私にとって大変光栄なことでありますが、変革の只中で舵操りを行うということに責任の重さを痛感しているところであります。筆頭副会長、副会長理事等の役員、事務局職員の協力を得て全力を尽くす決意でおります。会員の皆様のご支援を心からお願いいたします。
さて、わが国の産業構造は大きな転換の時に入り、新しい構造の模索がなされております。この変革の波は学術団体にも当然及んできており、私達機械学会もそれへの対応策を講じてきております。すなわち、5年前の第74期(阿部博之会長)に第二世紀将来構想検討委員会の答申が出され、それに基づいて第75期から第78期までの間に、機械学会の基盤整備の方針、実行計画等が確認され実行に移されて参りました。76期では主として財政運営の方式を転換し、赤字体制からの脱却が図られました。77期、78期では、第二世紀将来構想実施計画に沿って情報発信・交換機能の強化、国際連携、産学官連携、組織改革、工学教育に関して道筋を示しました。学会の理事会は78期より、理事2年制と筆頭副会長制度を導入しました。選出された78期の筆頭副会長は79期の会長に就任するといういわゆるプレジデント エレクト制であります。さらに79期からは常勤理事を導入し学会運営に対する連続性と戦略性を発揮できる体制に変革しております。したがって79期理事会は77期、78期に作成した道筋に沿って走ることになります。78期から79期への引継事項の主なものは、1)本部組織改革の分析、2)財政基盤の検討、3)機械技術者の能力開発・継続教育事業の整備、4)機械工学系学協会との連携強化、および会員増強活動であります。79期は考え方としては第二世紀将来構想の基本理念を受け継ぎますが、機械学会としての新たな挑戦の年度でありたいと思っています。その中でも特に次の三つの挑戦を重点項目としたいと考えています。
第一は高品質の学術・技術情報の発信を強力に行うことであります。歴史を持つ多くの学会の創立の目的は、それぞれの分野の先端技術の情報交換あるいは先端技術を入手するためであり、会員となる動機もこのことであったと思われます。機械学会もそうであったと思います。しかし、最近はさまざまな情報通信手段が普及し、情報源も限りなく多くなりました。機械学会が発信する情報の占める割合が相対的に少なくなっていると思われます。機械学会の発信する情報は高度な、しかも信頼性の高いものである必要があります。更に情報の範囲を広げる必要があります。社会において機械工学の守備範囲の拡大に応じて機械学会20部門の活動も展開されるべきであります。
同時にその発信源である機械学会論文誌、International Journal等の国際的地位の向上も視野に入れる必要があります。
第二は「ものつくり」「人つくり」を学会運営の柱のひとつにすることです。「ものつくり」は既に機械学会のキーワードとなっておりますが、新たなシステムを導入します。「人つくり」については技術者の能力開発・継続教育に関する事業を推進します。すなわち、79期では二つのセンター「研究開発推進センター準備室」と「工学教育センター準備室」が活動を本格化します。今期の活動がセンターの将来を決めるという気持ちで両センターの立上げに最大限の努力をいたします。
第三は「外」との協調であります。昨今は国の科学技術基本計画にもようやく「学会」の役割が議論の中に入ってくるようになりました。この機をとらえ機械工学関係の学協会の連携を強め、その中心となるべく活動をしたいと考えます。同時に国際活動の一環として、アジア地域の機械学会との連携を強めます。秋の年次大会には中国、韓国、インドネシアとの間で機械学会会長会議を実施すべく計画を進めております。
以上三つの具体的な挑戦を申し上げましたが、これらの活動を通して会員ひとりひとりの交流を活発にする場所を提供することが学会としての大きな役目であると思います。専門情報の交流の場はもちろんのこと、世代を超えて専門を超えて交流できる機会を増やしたいと考えます。ひとりでも多くの会員が機械学会会員であることに意味を見出していただくことを期待しています。
最後になりましたが、78期棚澤一郎会長はじめ役員の方々、各部会、部門、支部で活躍された会員の皆様に心から敬意を表し、引き続いて79期にもご支援賜りますようお願いして就任のあいさつといたします。