マイクロガスタービン分散エネルギーシステムの普及促進のための3つの提言(2001年)
2001年4月
マイクロガスタービン分散エネルギーシステムの普及促進のための3つの提言
日本機械学会 第79期会長 小林 敏雄
日本機械学会では,研究協力部会所属のRC185研究分科会「超小型ガスタービン利用分散型エネルギーシステム研究分科会」(平成11年6月~同13年5月, 主査:平田賢,幹事:笠木伸英・吉田英生)を設置して,21世紀のエネルギー有効利用の方策を検討して参りました.その結果,未来のエネルギー需給の有力オプションとして,マイクロガスタービン分散エネルギーシステムの普及促進のための3つの提言をまとめるに至りました.専門技術者集団として,この提言を広く関係各方面によびかけたいと存じます.
1.マイクロガスタービン分散エネルギーシステム関連技術の短期・長期目標に基づく基礎研究,開発研究の戦略的推進と,産官学アライアンスによる競争力獲得
現在の第一世代マイクロガスタービン技術において,我が国は欧米諸国に遅れを取っている事実は否めない.しかし,優れた要素技術,システム化技術,生産技術,保守管理技術を有する我が国が,目標と意志を持って当たれば,今後5~10年後に開発が予想される第二,第三世代マイクロガスタービン,あるいは燃料電池とのハイブリッドシステムの開発において,世界の強豪と肩を並べ,優れた小型分散システムを世界市場に供給することが可能である.産官学連携の戦略的研究開発体制を緊急に整備する必要がある.
2.小型分散システムに対する規制緩和と電力市場の自由化推進の加速
原理的に優れた分散エネルギーシステムの中核エンジンと位置付けられるマイクロガスタービンの性能向上と安全性・信頼性の確保と共に,市場導入に障害となっている技術規制・ガイドラインなどの早期の見直しが必要である.特に,技術主任の選任,常時監視義務,系統連系ガイドラインなどの見直しが必要である.併せて,国内電力市場の自由化への制度整備が喫緊の課題である.
3.小型分散エネルギーシステムの健全な普及のために,熱利用市場のデータベース整備,優れた熱併給システムの導入助成,用途別燃料価格,優遇税制などの推進
電力に比べて我が国の熱需要の詳細データベースは極めて乏しく,用途別,温度レベル別の市場調査が必要である.また,熱供給の形態を省エネルギー・温暖化ガス排出削減の見地から体系的に評価するシステムを確立し,優れた熱利用を促進する助成制度の検討を進める必要がある.燃料の使用形態に関しても同様の評価と,それらに対応した料金制度の可能性を検討すべきである.以上