2050年温室効果ガス排出実質ゼロを達成するための提言(2021年)
動力エネルギーシステム部門
2020年度(第98期)部門長 武田 哲明
2020年10月、日本政府は「温室効果ガスの排出量を2050年までに実質ゼロにする」(以降、「2050年実質ゼロ」)方針を発表し、「省エネルギーを徹底し、再生可能エネルギーを最大限導入するとともに、安全最優先の原子力政策を進めることで、安定的なエネルギー供給を確立」すると表明した。将来にわたり持続可能な脱炭素社会を実現するためには、電力部門において再生可能エネルギーと原子力発電といったゼロ・エミッション技術を最大限活用していくことが急務であり、加えて、産業・民生・運輸といった非電力部門において省エネルギー化や電化を進め、エネルギーシステムのイノベーションを図っていく必要がある。非電力部門の電化が進めば、これまで以上に電力システムが我が国経済、国民生活に果たす役割が大きくなる。
日本機械学会動力エネルギーシステム部門は、正しくこのような将来のエネルギー社会を構築する電力システム関連技術の開発に取組む学術専門家集団である。本提言は、将来関連技術を開発し実現する当事者としての責務の下、現在、政府にて議論が進められている「第6次エネルギー基本計画」の検討に資するべく、将来関連技術の実現可能性、事業性等にかかる科学的かつ技術中立的見地に基づいた望ましい2050年頃の電源構成割合や今後取り組むべき課題について見解を示すものである。
以下に、政府への提言1:2050年の脱炭素社会に向け目指すべきエネルギーシステムについて、提言2:エネルギーシステムを支えるインフラと投資について、提言3:2050年以降にあるべき姿についてまとめた。
提言1:脱炭素社会に向け、より高度なS+3Eを追求するとともに3R(Renewable, Resilient, Reliable)エネルギーシステムの確立を図るべき
持続可能な脱炭素社会は安全で経済効率的でかつ環境を害することのないエネルギーシステムによって構築され、エネルギーは安定的に供給されなければならない。発電では炭素排出源かつ海外資源に頼らざるを得ない化石エネルギーからの脱却は必然であるが、同時に、現実的な電力料金を維持しつつ安定供給を確保できる電源構成のベスト・ミックスを今後も追求すべきであり、いずれの電源においても、安全確保を前提としたその発電効率の高度化、経済性向上、環境適合性向上のための技術革新に努め、より高度なS+3E(Safety + Energy Security、Economic Efficiency、Environment)を目指していく必要がある。一方、「2050年実質ゼロ」を目指した再生可能エネルギーを主力電源とするエネルギーシステムのイノベーションには、S+3Eに加え、新たな視点として3R(Renewable, Resilient, Reliable)が必要と考える。これらは相互に関係しており、エネルギーイノベーションに柔軟に対応できるエネルギーシステムを構築する上での新たな視点として検討されるべきである。2050年における「より高度なS+3E+3R」は従来の方法に捕われない柔軟な技術の活用と、革新的・野心的な発想による技術開発の成果によって構成される電源のベストミックスによって達成され得る。広く社会の理解を得ながら各電源の開発方針や目標を定め、これを達成すべきである。そのためには、全ての発電技術の今後の開発状況や社会への実装状況、及び社会の意見を踏まえ、経済性、安全保障(エネルギー、資源、技術)の観点から定期的にその成果を検証し、合理的かつ柔軟にその方針を見直していく必要がある。
(提言1-1)再生可能エネルギー(Renewable)の最大限の導入とそれを補完するクリーンな安定電源の確立
再生可能エネルギーの最大限導入:2019年時点における総発電量に対する再生可能エネルギーの割合は、水力、地熱、バイオマス等の安定な再生可能エネルギー(安定再エネ)が10%、太陽光と風力等の変動性の再生可能エネルギー(変動性再エネ)が8%であり、今後の開発により2030年には、我が国の2030年度の再生可能エネルギー割合目標の「22~24%」を達成できる見込みである。他方、「2050年実質ゼロ」のためには、これを半分(55%:年間総電力需要量1100TWhとした時の605TWh相当)以上とすることを目指し、再生可能エネルギーを最大限導入すべきである。安定再エネの拡大には我が国の国土条件の制約により限界があり、2030年までにほぼ限界に近い総発電量の15%(年間総電力需要量1100TWhとした時の165TWh相当)程度に達すると予想されるが、15%以上の実現を目指し、これをできるだけ増やしていくことが重要である。変動性再エネは主力電源として、日中の変動性(昼間の余剰電力と夕方の不足電力等)を考慮し総発電量の40%(年間総電力需要量1100TWhとした時の440TWh相当)以上を目指し、経済的合理性を確保しながら最大限導入していくべきである。特に、今後、導入の拡大が必要となる洋上風力発電設備については、風車の工法(浮体式及び着床式)や制御設備等、設置場所に適合した技術開発も必要になる。
蓄エネルギー技術の確立:変動性再エネを最大限導入するにあたっては、系統安定化や調整力の確保が課題となる。2050年も現在の電力需要並みと想定すれば、朝夕の不足電力発生に伴って停電に至らないように、90GWh規模(1日当たりの最大の不足電力)の調整力が必要となる。この調整力として、新たにCO2を排出しない形での蓄電(揚水発電の拡大、電気自動車等の利活用、その他定置型蓄電池※の活用等)及びそのリユース・リサイクル技術の確立、更には蓄熱・電熱変換といった蓄エネルギー技術の確立と低コスト化のための技術開発が急務である。※リチウムイオン電池、レドックス・フロー電池、ナトリウム・硫黄(NAS)電池、バイポーラ型電池等
調整力に富んだクリーンな安定電源の確立:再生可能エネルギーの最大限導入には、調整力に富んだ安定電源の維持も必要となる。火力発電の最大の課題はCO2排出量をゼロにすることであるが、高効率化による低排出化、水素、バイオマス、アンモニア等の低炭素燃料化を図り、炭素回収・再生循環利用・貯留(CCUS)と併せ運用することでこの課題に対処することができる。例えば、海外で安価に生産された水素を輸入し、水素を燃料とした火力発電技術の実証試験が進められており、革新的な発電技術として期待できる。CCUSについては、我が国の沿岸域において1億トン以上のCO2を貯留可能な地点を複数確保できれば、総発電量の5%程度(1年間のCO2が排出量は3000万トン)をCCUS付き火力発電で賄うことが可能である。限られた我が国の国土でCCUS地域をより多く確保し、経済的な貯留を実現していくために、諸外国との技術協力も活用して技術開発を促進していけるよう、引き続き国の支援が重要である。加えて、火力発電は慣性力を有しており、変動性再エネ大量導入により電力系統の同期化力の低下が懸念される中、クリーンな火力発電技術の確立は系統の安定性を維持する上でも重要である。また、ゼロ・エミッション安定電源である原子力発電のより積極的な活用も重要である。原子力発電は、火力同様慣性力を有し、出力調整能力(負荷追従運転)や多目的(蓄熱・水素、炭素燃料製造等)に利用可能な熱の生産といった多様な機能を持ち、変動性再エネを柔軟に補完できる。このような柔軟な原子力発電の運用は仏国・独国・カナダ等において実績があり、国際機関等において注目が高まっている。我が国においても、蓄電・蓄熱技術の開発と並行してこのようなゼロ・エミッション電源を再エネと併せて電源の主流とするベスト・ミックスを追求し、35%(年間総電力需要量1100TWhとした時の385TWh相当)以上の安定電源を維持すべきである。
分散型電源技術の確立と革新的技術の追求:新たな分散電源技術を確立するとともに革新的・野心的技術を積極的に追求すべきである。需要地に近接し柔軟に設置可能な、又は地域賦存資源を活用可能な分散型電源は、エネルギーの地産地消に貢献しながら再生可能エネルギーの導入を後押しする有望なシステムである。例えば、変動性再エネを主力電源とし、電気自動車や、公共の移動交通手段、地域内の共用設備に蓄電池等を用い、エネルギー供給を統合管理するスマートコミュニティはその一例であり、変動性再エネ発電設備が需給一体的に活用されることにより系統負荷の軽減が図られ、かつ、後段のレジリエンス強化に重要な役割を果たすことが期待できる。電気自動車を家庭用の電力需要に対する再生可能電力の高効率利用手段として活用するV2H(Vehicle to Home:電気自動車から家へ)といった考え方、米国で検討されているようなディーゼル発電や石炭火力を代替する小型原子炉システムの活用等、従来の技術や発想に捕われない革新的・野心的な技術や活用を追求するとともに、これらを利用可能とするデジタル技術開発や制度の導入を進めるべきである。
(提言1-2)災害に強い(Resilient)エネルギーシステムの確立
電力系統強化:北海道胆振東部地震に起因するブラックアウトを踏まえ、電気を安定的に供給するためには周波数を一定に保つ必要があることが再認識された。また、変動性再エネの主力電源化により、北海道・東北や九州における変動性再エネによる発電量が増大する見込みである。これらの課題のため、地域間連系線の容量拡大を可能な限り早期に達成すべきである。
分散型電源の導入拡大:将来的に高年齢化・過疎化が進むと考えられる中、自然災害時においても自律的に電力供給を図ることができる分散型電源及び分散型グリッドの導入は単に再生可能エネルギーの主力電源化に寄与するだけでなく、レジリエンス強化の面で重要な意味を持つ。大規模な電力系統からの送電に依存しない「遠隔分散型グリッド」(平常時から独立した系統で電力供給を行う)又は「地域マイクログリッド」(災害時に主要系統から切り離して電力供給を行う)を増やすことで系統負荷を小さくすることができれば、送電システム全体としてコストの低減を図り得る他、複数の分散型電源を集約した形で運用するVPP(Virtual Power Plant:仮想発電所)や、分散型電源を所有する個人・法人が別の需要家に電力を供給し取引するP2P(Peer to Peer: ピア・ツー・ピア)等の新しい電力事業形態(ERAB:総合型電力取引。仮想発電所やデマンド・レスポンスを利用し、市場取引を通じて電力系統の統合・調整・制御等のサービスを提供する事業)の掘り起こしにも繋がる。
水素利用推進・燃料電池技術の確立:自然災害は日本国民にとって記憶に新しい身近な脅威であり、脱炭素社会の構築と災害回復力機能の高いエネルギー技術及びシステムの構築を併せて進めていく必要がある。災害時に利用可能な多様な電源を備えることはレジリエンスの面から重要であり、脱炭素社会を見据えれば、石油・石炭に代わり備蓄可能で自立したゼロ・エミッション安定電源の確保が必要となってくると見られる。再生可能エネルギーの余剰電力や原子力熱を利用した水素製造技術等、コスト競争力のある水素製造サプライチェーン構築の他、水素貯蔵輸送技術の設置や水素燃料電池技術の確立等を進め水素利用の推進・拡大を図っていくべきであり、インフラ整備を含め、これを促進すべきである。
(提言1-3)社会に信頼される(Reliable)エネルギーシステムの確立
原子力発電の信頼回復:電力各社は、原子力発電が2030年に年間総発電量の20~22%の供給を達成できるよう、既設プラントの再稼働に取り組んでいる。しかし、2013年の新規制基準制定後に許認可を取得できたのは16基と、稼働可能な原子炉数の半数にも満たない。未申請プラントを含めた全ての炉が稼働でき、運転期間を60年に延長できても、2040年以降に順次廃止措置時期を迎え、2050年までに約10GW減少していく。立地点選定から運転開始まで約20年の期間を要する原子力発電を、2050年に総発電量の30%程度を達成するためには53GW規模を維持していく必要があり、少なくとも廃止措置発電量と同等規模リプレースの建設判断を早急に行う必要がある。このためには、エネルギー政策において原子力利用の継続を明確にし、国民の原子力発電に対する信頼感を回復できるよう、①原子力発電技術の安全性の高度化と経済性向上、②福島第一原子力発電所の安全な廃炉措置、③放射性廃棄物の最終処分場の選定、④これまでに蓄積された使用済燃料を再利用する核燃料サイクルの実用化という4つの課題解決の見通しをつけていくことが不可欠である。
火力発電の高効率化・低炭素化:石炭、石油、天然ガス等の化石燃料を用いた火力発電は温室効果ガスを多量に排出するが、高効率化、低炭素燃料化、CCUS技術開発により低炭素化・脱炭素化することが可能である。調整力や安定供給といった脱炭素社会における役割を明確化し、社会に示していく必要がある。
再生可能エネルギーの課題認識:我が国における再エネの立地制約を踏まえれば、再エネの発電効率の抜本的向上が不可欠である。また、変動性再エネについては、固定価格買取(FIT)制度を契機とする近年の急速な普及により、太陽光パネルの大量設置に伴う環境破壊や豪雨時の土砂崩れ等の発生による自然災害の拡大、風車の騒音公害等の課題が浮き彫りになってきたが、これらの設備寿命を迎える2040年頃には変動性再エネ発電設備の廃棄問題が発生し得るだろう。エネルギー密度の低い変動性再エネの設備量は膨大な量となることから、同事業者が適切に処分できるしくみを作るとともに、実態の正確な把握と可能な限り部材のリサイクル方策を検討すべきである。また、保守管理、環境問題、自然災害時の脆弱性などの課題を認識し、解決を図っていく必要がある。さらに、ドイツでは変動性再エネの大量導入による電力価格の高騰、火力発電を用いた出力調整によるCO2排出量の増大、不十分な送配電網による出力抑制といった事例が見られているため、これらのリスクを理解し、普及、技術革新を進めるべきである。
提言2:次世代エネルギーインフラ整備と持続可能なサプライチェーンの構築・維持への投資を誘発するインセンティブを付与すべき
2050年を見据えたエネルギー転換・脱炭素化の道のりには数多くの不確実性が横たわることから、野心的な複線シナリオを追求し、総力戦で対応する必要がある。このような不確実性を踏まえたエネルギーイノベーションには、送電網の次世代化や分散型ネットワークシステム等のインフラ整備が必要不可欠となる。また、エネルギーイノベーションの結果、新たな産業が生まれ、その各所において国外から新たな技術が導入され得るものと考えられるが、自立したエネルギーの確保やイノベーションコストの国内への還元のためには、これらを国産技術とし、堅牢な国内産業のサプライチェーンが構築される必要がある。さらに、インフラ技術の輸出を促進して産業競争力を強化する必要がある。このようなインフラの整備やサプライチェーンの構築には継続的な投資が必要不可欠となるが、投資家が投資を継続するためには、その将来性を明確にする必要があり、「2050年実質ゼロ」の実現に向けては、このような投資を誘発するようなインセンティブが付与されるべきである。
(提言2-1)次世代エネルギーインフラの早期整備
脱炭素化エネルギーイノベーション、送電網の次世代化や分散型ネットワークシステム等のエネルギーインフラ整備には数十年が必要と考えられ、2050年を見据えれば、2030年頃には次世代のインフラ技術が確立され実装され始めるべきである。特に、運輸部門においては電気自動車等の急速な増大が考えられ、これに対応可能な充電スタンド等の整備、また、その需要に見合う発電設備の増強や充電制御の導入への支援が行われるべきである。
(提言2-2)持続可能なサプライチェーンの構築・維持
国産技術による脱炭素サプライチェーンの構築支援:太陽光や陸上風力等、特に小規模の発電事業者が参入しやすい事業に対しては、海外と競合可能な、より低コストの構造材の供給が求められる。エネルギーイノベーションが国産技術として確立し、国内のサプライチェーンにより供給され、適切に経済に還元されていく環境を構築するためには、低コスト化に向けた研究開発への積極的な支援が行われるべきである。また、過剰な経済的負担が生じないよう、そのような革新技術を事業者が取り入れやすい制度設計が必要である
安定電源の役割の明確化と次世代技術導入支援:安定電源の内、火力発電は今後増大していく変動性再エネの出力変動を調整できる重要な電源であることを再認識した上で、2050年に向けては、脱炭素を実現するためにCCUSや水素燃焼に関する技術開発を促進していく必要がある。また、原子力発電については東日本大震災以降の新規建設が凍結されており、既に約10年間、技術・インフラの空白が生まれている。約30年の原子力モラトリアムを経験した米国等は原子力発電のリプレース期を迎えるに際し原子力産業の労働生産力低下やサプライチェーンの喪失に苦心している。日本の原子力産業がそのような状況に陥らないためにも、2050年の脱炭素社会における原子力発電の役割を明確にし、原子力発電技術の安全性の高度化、経済性向上及び原子力産業インフラの再構築をすべきである。また、短中期的には、火力・原子力発電それぞれが次世代技術を用いた移行期に入ってくる。このような次世代技術の実装には研究開発費を含めた初期投資が必要となることから、これらの役割を明確にした上で政府による何らかの経済的支援策が構築されるべきである。
(提言2-3)安定なエネルギー市場の確立
新たな技術に事業者が参入する上で、事業者が適正な市場競争の下で取引ができる安定なエネルギー市場が存在することが必要不可欠となる。民間の投資判断に予見可能性を与えるためにも、国の意思と方針を明確に打ち出し、過渡期にある電力システム改革をしっかりと検証し、安定化させるための制度設計を行うとともに、エネルギーインフラ構築に産業界が参入しやすくするための投資環境を整備すべきである。このためには、発電コストのみならず送配電コストを適切に分析し、電力システム全体としての収益性を評価する必要がある。競争市場の予見性が低下し、投資の回収性にかかる不確実性が増せば、新規の電源への投資がなされず、単に市場にその経済を委ねるだけでは安定供給が維持できない事態に陥りかねない。そのため、変動性再エネが大量に導入される将来のエネルギー市場において調整力を担う電源の収益の安定化は重要な課題である。
提言3:2050年以降のカーボン・ネガティブ・エミッションの実現を目指した総合的な脱炭素戦略を構築し革新技術開発を促進すべき
2018年にIPCC(気候変動に関する政府間パネル)が公表した「1.5℃特別報告書」は、「2050年実質ゼロ」に加えて、それ以降はさらなる吸収(マイナス排出)の必要性を謳っている。2050年以降にカーボン・ネガティブ・エミッション社会を実現するためには、2050年以前からこれに備えた取組みを行う必要がある。
(提言3-1)非電力部門の電化の促進とゼロ・エミッション電源を主としたエネルギー社会の構築
カーボン・ネガティブ社会のためには、省エネ・エネルギー効率向上、電力供給のゼロ・エミッション化に加え、エンドユースの低炭素化とこのための電化が有効とされる。電化は「2050年実質ゼロ」のためにも重要な施策であり、現状26%(最終エネルギーベース、2018年)程度である電化率を更に高めていくことが求められる。2050年に民生部門は100%の電化に達する可能性があるが、産業、運輸部門についてはドラスティックな改革が必要となり、製造プロセスの電化技術、内燃機関車の効率向上、CO2回収・資源化循環利用などのCCUSのみならず、非連続的なイノベーションが求められる。また、デジタルシフトが電化に与える影響を検証する必要がある。
(提言3-2)ネガティブ・エミッションを実現する革新技術開発の促進
2050年以降に、カーボン・ネガティブなエネルギーシステムを構築するため、CCUS付バイオマス発電(BECCS)、バイオ炭(Biochar)等、その技術は発電のみならず多岐にわたるが、超長期的な戦略に基づいた技術開発を継続的に行っていく必要がある。
(提言3-3)持続可能な脱炭素化に向けた核燃料サイクルの早期実用化
世界の主要国は2050年の脱炭素化に向けて「再エネ+原子力」を主流にした電源構成とする方針を打ち出している。このため、21世紀後半には、世界的な軽水炉の利用拡大に伴うウラン価格の高騰が懸念される。また、軽水炉でのプルサーマル利用により、今後使用済混合酸化物(MOX)燃料が蓄積されていくことも考慮すれば、2050年以降の持続的な原子力利用のためには、使用済燃料をリサイクル利用し、天然ウラン資源に依存せず、放射性廃棄物の減容等を実現できる高速炉と燃料サイクルを早期に実用化すべきである。そのための技術開発を着実に進めていく必要がある。
注:我が国における原子力の利用と核燃料サイクルの実用化に関しては様々な意見があることに留意されたい。