一般社団法人 The Japan Society of Mechanical Engineers

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生成 AIの利用に関するメッセージ

2024年3月26日

技術倫理委員会

人材育成・活躍支援委員会

最近の生成AIの急速な発展・普及に伴い、機械システムの設計、解析、運用、保守に対しても、生成 AI の活用によって飛躍的な新発想や圧倒的な効率改善が期待されます。また、教育や人材育成の過程で生成 AIを活用すれば、より効率的な教育・人材育成が実現できる可能性も示唆されています。一方、生成 AI の利用に当たっては、誤った結果の出力、知的財産権の侵害、想定外の事象に対する安全性の欠如といった負の側面も懸念されています。これらを踏まえて、本会は技術倫理と教育の二つの観点から以下のメッセージを発信します。

 

<技術倫理>

生成 AI に関しては様々な倫理的な懸念があります。コンテンツの生成と利用に際して、他者の知的財産権やプライバシー権を侵害することがないか、生成物は十分なクオリティを持っているか、社会に存在する差別的なバイアスを反映していないか、それが利用される領域で重視されている価値に反するようなものではないかといったことに留意する必要があります。また関連する産業界の持続可能性といった長期的で大きな視野の問題については、多様な分野の専門家や多様なセクターのステークホルダーで議論をしながら、より良い将来の社会に向けて協力していく必要があります。生成 AI は今後も発展を続けるでしょうし、それに関連する制度や慣習も変わっていくことが予想されます。生成AIを提供する側も利用する側も、絶えずそういった変化に注視し、技術者としての社会的責任を自覚して、適切に対応していくことが望まれます。学会として、そのような議論の場を設定したり、情報を提供したりするなどの努力をします。

 

<教育>

現在、知識偏重のプロイセン型教育から主体性や判断力・表現力が重視される教育への転換が図られていますが、生成 AI が教育や人材育成分野に及ぼす影響は非常に大きい、あるいは今後非常に大きくなると予想されています。グループ討論におけるアイデアの提示、より自然で正確な文章表現の創出、コンピュータ・プログラミングの補助など、教育現場での生成 AI の広範な活用が期待されています。一方、生成 AI はウェブ上に存在する膨大なデータから出現頻度の高い情報を抽出する優れた性能を有していますが、間違った情報、不適切な個人情報なども多く含まれるため、その利用に際しては生成 AI が提示する情報の正誤を利用者自身が適切に判断することが求められます。生成 AI が教育上便利で効果的なツールであることは間違いありませんが、その利用に関しては細心の注意が必要であり、今後、学会として生成 AI のより望ましい利用方法に関して検討を続けてまいります。