交通・物流部門−技術と社会部門連携企画 

 

 

1回:鉄道関係 合同見学会+意見交換会

 

2009 11 4 (水)13:0017:00,標記の行事が,埼玉県さいたま市大宮区大成町に所在する鉄道博物館にて開催されました.

 表記の行事に関する報告の前に,部門連携活動について説明をする必要があります.表記の行事は,今期から始まった部門連携企画を継続的に実施していくための方向性を確認することと部門同士の相互理解を目的に実施されたものです.交通・物流部門の松岡部門長の就任の挨拶では部門連携に関する言及があるものの,認識されている方は少ないかと思います.この行事報告が,交通・物流部門と技術と社会部門の部門連携企画のことを知る最初の機会になる会員も居られるかと思います.

 この部門連携企画は,「交通機械と産業遺産」をキーワードに,将来的には研究・発表促進,合同イブニングセミナー・講習会等の企画開催,部門連携研究分科会等の設置,年次大会等における合同セッション企画等の成果物の創出を目指すことを意図しています.表記の行事は,その目的故に出席者が限られていました.交通・物流部門の運営委員11名と技術と社会部門の総務委員会構成員11名が参加予定でしたが,新型インフルエンザの関係で直近になって1名の方が出席を取りやめました.各部門の出席者の立場は,名称の違いはあるものの,似たようなものです.なお技術と社会部門の小野寺部門長は出席者であると同時に講演者でもあります.

 行事は二部構成で,第1部の合同見学会では鉄道博物館の主幹学芸員である奥原哲志氏から鉄道博物館の概要と0系新幹線に関する話題提供をして頂いた後に鉄道博物館の見学を行い,第二部の意見交換会では技術と社会部門の小野寺部門長から「工学の立場から見た歴史」というタイトルで話題提供があった後に意見交換が実施されました.

 第一部は松岡部門長から行事の趣旨が説明された後に,最初の講演で奥原氏から鉄道博物館の概要が説明されました.説明は事前に配布された資料に沿っているお陰で,内容が11項目にわたり多いにも関わらず聴き易いものでした.行事の開催場所が鉄道博物館の中の一室であり,入室までの間に鉄道博物館の一部を通って来ている為,参加者の中には鉄道博物館を初めて訪れている者が少なくないにも関わらず,実感を伴って聴講できる部分もありました.逆に,講演の後の鉄道博物館の見学に際して参考になる部分もありました.印象に残るのは,鉄道博物館は博物館であるということで,素直に自身の感想を記述すると「博物館なんだ」という子供じみたものになります.御存知の方であれば同意して頂ける可能性が高いと予想しておりますが,鉄道博物館はテーマパークのような雰囲気があります.年間100万人を超える来館者がある一方で,展示品等が損傷するなど長短があるという話が印象的です.展示車両の選定について説明があったのは,今回の行事の性格を反映したものか,それとも博物館として当然の説明であるか,判断はともかくとして,そのような話もありました.質疑応答では,展示物の選定方法や車両の復元をどの時点の形態にするのかということが話されました.

 鉄道博物館が,鉄道・鉄道会社・時代背景などについて遺産や資料を保存し調査研究を行うと同時に,模型・シミュレーション・遊戯施設などを活用して子供たちへの体験的な教育を提供していることは,講演と共に見学をすることで実感することができました.鉄道博物館の見学で感じることは,娯楽で人を惹きつけることに成功していることと,展示物に対する説明が少ないことは,多くの方が共通して持てる意見かと思います.

 

第一部の講演と会場の全体図

合同見学会での集合写真

 

第二部の講演

意見交換

 

 第二部は,技術と社会部門の小野寺部門長の基調講演から始まり,全体的にスケジュールが遅れ気味だったため,意見交換の時間を短くして時間調整がなされました.基調講演の内容は第1部と同様に事前に資料が配布されています.講演者の意図に沿わない恐れがあるため,つたない要約を報告に記述することは差し控えますが,機械遺産を産業や技術の道標として見る視点は機械遺産や技術史に疎い報告者にとっても違和感の無いものでした.意見交換というよりは質疑応答の形になりましたが,意見交換での発言は技術と社会部門から出席している者の占める割合が高かったのが気懸かりです.交通物流部門の方々がどう感じていたのか気になるところです.

 反省点としては,技術と社会部門の側はもっと活動内容を伝えていく努力が必要であると感じます.技術と社会部門の扱う内容は「機械屋の教養」とも言うべきもので,それぞれ別々の専門分野で活動しながら技術と社会部門で活動している特殊性も十分に伝わっていなかったように感じられます.次回の課題としては,意見交換の場において意見を引き出すことかと思われます.その準備として,機械遺産委員会や技術史に深く関わるメンバーから,普段技術史を扱う専門家がどのように見て・記録し・評価していくのか.またその他の資料から何を読み取っていくのかを解説するのも良いと思われます.

 交通・物流部門の幹事補佐であられる東急車輛の谷口氏が手際よく円滑に幹事役を果たされているのを見て,幹事役に対する態度を反省させて頂きました.

 

加藤 義隆(大分大学)

 


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