日本機械学会2009年年次大会が9月13日(日)から16日(水)までの4日間にわたり,岩手県盛岡市にある岩手大学の全キャンパスにて開催された.大会委員会側の発表では約2300名の参加者があり,約1300件の学術講演が行われた.その他,市民向けの企画として多くのフォーラムやワークショップが開催され,当部門でも盛岡駅近くの公共施設“アイーナ”において市民フォーラム「機械遺産パネル展示」とワークショップ「東北の先進性を語る産業遺産たち」を実施した.また,当部門の同好会が岩手県有数の観光地である“小岩井農場内のまきば園”において5部門合同で行われ,大盛況であった.
以下に当部門に関連する活動を報告する.
1.ワークショップ
今年は,岩手県埋蔵文化センターの佐々木清文氏,新興製作所の佐藤宏氏を講師にお迎えして,下記のワークショップを開催した.会場が満席になるほどの盛況であった.
[W2001] [C2005] (技術と社会部門 企画)
東北の先進性を語る産業遺産たち(1)
[企画 小野寺英輝(岩手大)] [司会 小野寺英輝(岩手大)]
日時 9月13日(日) 13:30−14:30
会場 アイーナ501B会議室
産業考古学シリーズ:北の鉄文化
佐々木 清文(岩手県埋蔵文化財センター)
[W2002] [C2006] (技術と社会部門 企画)
東北の先進性を語る産業遺産たち(2)
[企画 小野寺英輝(岩手大)] [司会 小野寺英輝(岩手大)]
日時 9月13日(日) 14:40−15:30
会場 アイーナ501B会議室
戦後の技術開発を語る:日本の電信を支えた機電技術
佐藤 宏(新興製作所)
2.一般セッション
一般セッションでは,以下の3件の発表があった.2件はモノづくり教育に関する研究,1件は産学連携に関する発表であった.
9月14日(月) 9:00−9:45
[G2001-1] 技術と社会部門 一般
座長:星 朗(一関高専)
G2001−1−1 地域再生プロジェクトを通した地域協働型技術者教育/○坪根 弘明(有明高専),岩本 達也,明石 剛二,川嵜 義則
G2001−1−2 機械工学の観点から見た産学連携と大学の社会貢献との関係/○吉田 敬介(九大)
G2001−1−3 技術ものづくり教育における機械領域の役割/○梅野 貴俊(福岡教大),川島 多香子(菅中学)
3.オーガナイズドセッション
オーガナイズドセッションでは,「機械技術史・工学史」オーガナイザー:小野寺英輝(岩手大)・緒方正則(関西大)に6件,「技術教育・工学教育」オーガナイザー:吉田喜一(都立産業技術高専)・渡邉辰郎(東京大)に12件,「人機能支援の工学」オーガナイザー:村田良美(明治大)・高田一(横浜国立大)に3件,「知的財産権&技術革新を促進するための社会制度」オーガナイザー:小西義昭(日機装梶j・高田一(横浜国立大)に5件,合計で29件の研究が発表された.
以下にオーガナイズドセッションにおいて発表のあった講演を記す.
9月14日(月) 9:55−11:25
[S2004-1] 機械技術史・工学史
座長:小野寺 英輝(岩手大)
S2004−1−1 映像史料分析による戦後コンクリートダム建設機械化の諸相/○馬渕 浩一(名古屋市科学館),今
尚之(道教大)
S2004−1−2 深川造船所の概要と小史/○堤 一郎(職能開大),池森 寛(西日本工大)
S2004−1−3 機械機構模型における明治・大正時代の技術移転/○城下 荘平(元 京大)
S2004−1−4 水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その10)―東海地方における技術史的特徴―/○天野 武弘(豊橋工高),永井 唐九郎(中部プラントサービス)
S2004−1−5 古代メソポタミアの「ものさし」の実地調査研究/○緒方 正則(関西大)
S2004−1−6 桜町遺跡出土のY字材用途(押して運搬する方式の修羅とみなされるY字材)/小沢 康美(福井工大),○下間 頼一(元 関西大)
9月14日(月) 13:00−14:00
[S2001-1] 技術教育・工学教育(1)
座長:西 誠(金沢工大)
S2001−1−1 原子力発電所運転員の訓練及び資格/○大須賀 安彦(NTC)
S2001−1−2 小学校における科学と技術に興味を持たせる授業づくり/○板倉 嘉哉(千葉大),鈴木 久美子
S2001−1−3 産業・経済に関わる教育への新手法の試み(第10報 個々の大学の実情に応じた専門教育とリーダー養成教育のあり方について)/○本田 博(産業フロンティア研)
S2001−1−4 量産可能な工学教育支援システムとしての自動浮上機能付き小型磁気浮上実験装置の開発/○三谷 祐一朗(沼津高専),津島 亮(スズキ)
9月14日(月) 14:10−15:10
[S2001-2] 技術教育・工学教育(2)
座長:吉田 喜一(都立産技高専)
S2001−2−1 小型汎用エンジンを教材として利用するための吸入空気量計測と負荷制御/○加藤 義隆(大分大),立石 万大,平田 豊,森廣 啓
S2001−2−2 学生および大学院生の研究活動の改善(その2 目標の認識と進捗の管理)/○平田 豊(大分大),立石 万大,安藤 真,加藤 義隆
S2001−2−3 口腔健康科学科におけるコンピュータ利用ものづくり教育/○村山 長(広島大),玉本 光弘,下江 宰司,牧平 清超,笹原 妃佐子,河原 和子,里田 隆博,二川 浩樹
S2001−2−4 神戸市立工業高校における産学連携による工業高校実践教育の試み(第2報)/○永井 千秋(神戸産振財),芳井 隆(科技高),土井 直祐(神戸市教育委員会),橋本 基宏(神戸工高),平野 敦(神戸市工業課)
9月14日(月) 15:20−16:20
[S2001-3] 技術教育・工学教育(3)
座長:渡邉 辰郎(都立産技高専)
S2001−3−1 3D-CADによる完結型設計教育の取り組み/○藤原 康宣(一関高専),星朗,関根 孝次,畠山 信夫,原 圭祐
S2001−3−2 金沢工業大学の基礎数理教育―学生の学習達成感と理解度向上のためのアクティブラーニング―/○西 誠(金沢工大),谷口 進一
S2001−3−3 高専を活用した中小企業人材育成事業/○吉田 喜一(都立産技高専)
S2001−3−4 工業教育に関する一考察 ―文部科学省支援により導入された工学教育の現状と問題点―/○田邊 裕治(新潟大),鳴海 敬倫,田村 武夫,岡 徹雄,丸山 武男,佐藤 孝,原田 修治,大川 秀雄
9月15日(火) 11:00−12:00
[S2002-1] 人機能支援の工学
座長:村田 良美(明大)
S2002−1−1 リハビリにおける高齢者の歩行能力の定量的評価/○高田 一(横浜国大),田中 権太,松浦 慶総
S2002−1−2 車いす上座位保持における胸郭下部支持の効果について/○長門 五城(青森県保大),渡辺 一郎
S2002−1−3 簡易型腰部負担軽減具についての簡易力学モデルによる考察/○河越 恒夫(岡本),山口 安昭(東芝物流),今戸 啓二(大分大)
9月15日(火) 13:00−14:15
[S2003-1] 知的財産権&技術革新を促進するための社会制度
座長:高田 一(横浜国大)
S2003−1−1 研究開発に有益な特許情報の分析方法/○加藤 浩(METI)
S2003−1−2 企業アンケートに基づく産学連携の分析/○齋藤 裕美(政研大学院大),隅蔵 康一
S2003−1−3 日本の製薬企業における大学・研究機関のナレッジの活用:特許の共同出願人データに基づく分析/○隅蔵 康一(政研大学院大),齋藤 裕美
S2003−1−4 技術開発プロジェクトと権利の帰属/○児玉 晴男(放送大/総研大)
S2003−1−5 基本特許と周辺特許の悩み分け/○小西 義昭(日機装)
4.市民フォーラム
本年度は,当部門と実行委員会の合同で,以下の市民向けの企画が実施された.会場が盛岡駅近くの公共施設であったこともあり,多くの市民の方々が足を止めてパネルに見入っていた.
[C2001]〜[C2004] (技術と社会部門, 実行委員会 企画)
機械遺産パネル展示
日時 9月13日(日)〜9月16日(水) 各日とも9:00−18:00
会場 アイーナ4F県民プラザ
5.部門同好会,14日(月) 18:30−20:30
9月14日(月)の講演会終了後は,各部門主催の同好会が催された.当部門の同好会は,送迎バスで40分ほど移動した小岩井農場内のまきば園を会場に開催され,この会場の参加者は他4部門と合わせて130名以上,うち当部門は17名の参加者があり,大盛況のもとに実施された.
同好会では恒例となっている部門表彰式が行われ,下間寄頼一先生(関西大学名誉教授)が功績賞を,永井唐九郎氏(樺部プラントサービス),天野武弘氏(愛知県立豊橋高等学校),天野博之氏(豊田市教育委員会)が講演論文賞を受賞され,前部門長の吉田敬介先生(九州大)より表彰状と記念のプレートが授与された.下間先生は,機械技術史・工学史の分野において,早くから世界各地にて数多くの現地調査研究を行い,東洋と西洋を比較検討し,多くの新事実を明らかにする成果をあげていることが受賞の理由である.また,永井氏らの講演論文賞の対象となった論文は,「水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その9)―ガラ紡績工場のタービン水車の事例から―」(2008年度年次大会 OS機械技術史・工学史(1)にて発表)で,水車遺構の現地調査を入念に行った上で,その内容を文献調査で補完して相互の関連性を検証した優れた講演論文である.
なお当部門の同好会では,部門長 小野寺英輝先生(岩手大)によるテルミン(世界最古の電子楽器.電磁場の形成された2本のアンテナに手を近づけることによって音高や音量を変化させて演奏する.)の演奏も御披露され,参加者の皆様は小岩井農場の美味しいジンギスカンに舌鼓を打ちながら会話も弾んでいる様子で,楽しい時間を過ごすことができたのではないかと思う.
本企画では岩手大学の実行委員会同好会御担当の先生方に大変お世話になりましたこと,この紙面をお借りして御礼申し上げます.
6.終わりに
技術と社会部門の継続も決定し,今後,部門主催による講演会,国際会議,公開講座など,ますます活発な活動が期待されている.2010年の年次大会は名古屋地区での開催が予定されており,当部門の登録メンバーはじめ,工学・技術ならびに工学教育に関心がおありの先生方おかれましては,積極的なご参加をお願いしたい.
2009年の年次大会は,世の中では未だに景気の低迷が続き,また新型インフルエンザの流行に伴って学会参加への自粛ムードがある中,当部門ではほぼ昨年に近い発表件数があり,ワークショップや同好会も盛会で,概ね成功に終わったものと考えている.これは偏に,岩手大学を中心とする実行委員の先生方,そして当部門の諸先生方の御指導,御助力によるものであり,ここに深く感謝,御礼申し上げ,年次大会 技術と社会部門の御報告とさせて頂きたい.
(報告 一関工業高等専門学校 星朗)
|