[受賞者挨拶]

優秀講演論文賞を受賞して

 

 

永井唐九郎(株式会社中部プラントサービス技術開発部)

 

 

このたび優秀講演論文賞を受賞する栄誉に預かり、大変光栄におもっております。受賞対象となった「水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その9)−ガラ紡績工場のタービン水車の事例から−」は、2000年より発表を続けてきたシリーズの9作目にあたります。

本シリーズは2000年に愛知県の名城大学で開催された日本機械学会年次大会が、きっかけで始まりました。「東海地方に残る水車遺構の現状および動力伝達機構の実態を把握し、その技術史的特徴を明らかにすることを目的」として、ガラ紡績・製茶・製土など東海地方特有の産業を中心に調査・発表してきました。

そして10年目となった今年、研究総括としての発表をおこない、本シリーズのまとめとしました。

皆さんご存知の通り、日本は江戸時代に培われた「からくり人形」に代表される、我が国独自の技術を基盤にして、明治以降に導入された西洋の技術が融合し、イノベーションをおこしつつ、急速な技術発達をとげました。また、第二次世界大戦後に立案された諸々の産業政策やライセンス生産による技術移転によって、日本は世界有数の経済大国に成長しました。

技術史研究の必要性は、第二次世界大戦直後より強く言われてきました。さまざまな研究者により、地道な研究が積み重ねられ、現在では「過去の技術発展をもたらしてきた技術者の活動や教育、遺構や遺跡からみる技術史の研究が、次世代への技術伝承や新たなビジネスモデルの構築へとつながる重要な鍵である」と認識されています。

私が会社業務の傍ら技術史の調査研究に関わるようになって今年で13年目となります。私にとって技術史研究とはじめて関わりを持ったのがこのシリーズの調査でした。共同研究者の天野武弘先生と現地調査や論文作成を一緒におこなうなかで、また発表を通じて様々な研究者に出会うことで、研究者になるための基礎を鍛えられた13年間でした。

技術と社会部門では、まだまだ駆け出しの若輩者ですが、今後も日本の技術史を掘り下げる調査研究に関わっていきたいと思います。今後ともご指導の程よろしくお願いいたします。

 

     


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日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.22
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