部門賞
[贈賞理由]
機械技術史・工学史の分野において,早くから世界各地で数多くの現地調査研究を行い,東洋と西洋を比較検討し,多くの新事実を明らかにする成果をあげた.なかでも,ねじ・歯車・水車・チャリオット(二輪馬車)など,紀元前後の古代機械の発祥と発展過程について,長年継続して取り組んでおり,特にユーラシア大陸,アフリカ大陸の各国に現地調査を行い,現在の鉄道の国際標準ゲージ(軌道間距離)が古代ローマ時代のチャリオットのゲージに起原することを解明するなど,機械技術史の発展に寄与した.これらの研究成果は,日本機械学会誌や著書を通して積極的に公表され,多くの機械技術者・若手会員・学生会員に,もの作りにおける根幹技術が重要であることを再認識させた.功績は誠に顕著であり,技術と社会部門功績賞に値する.
部門一般表彰
優秀講演論文表彰:
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対象論文: 「水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その9)―ガラ紡績工場のタービン水車の事例から―」(2008年度年次大会,機械技術史・工学史(1)オーガナイズドセッションにおいて発表)を代表とする一連の機械技術史および機械遺産に関する研究講演論文
永井唐九郎(樺部プラントサービス)
天野 武弘(愛知県立豊橋工業高等学校)
天野 博之(豊田市教育委員会)
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[贈賞理由]
上記一連の講演論文は,候補者らがまず水車遺構の現地調査を入念におこない,その内容を文献調査で補完し相互の関連性を検証した後に講演発表をおこなうという機械技術史と機械遺産に関わる代表的な講演論文といえる.機械技術史と機械遺産の両分野では,現地調査と文献調査の二つは,研究手法上欠くことができない重要なものである.こうした調査研究はまさに時間が味方であり,現地調査も一度ではなく数回に及ぶと推察される.永井唐九郎氏の現地調査への積極的な取り組み,天野武弘氏による経験豊富な指導力,そして天野博之氏による文献面での支援という三者の研究システムが,見事に連携した一連の模範的な講演論文であり,技術と社会部門の講演論文賞に値する.
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