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[部門企画]

2007年度 年次大会レポート

 

 学会創立110周年記念 2007年度 年次大会が9月9日(日)から12日(水)まで,大阪府吹田市にある 関西大学 千里山キャンパスで開催されました.

凛風館に総合受付が設置された 参加登録は2551名
 今回の年次大会参加登録者数は総計2511名,この他に市民開放行事に数百名が参加されたようです.
 発表件数はキャンセルされた24件を含み約1550件でした.このため,理工系学舎だけでは会場が不足し, 他学部の学舎を使用するほどの盛況でした.
 大会の特別プログラムは,市民開放行事を含む11分野にテーマ総数70が企画実行されました. 総合受付が設置された凛風館では,機器展示14社,カタログ展示6社,書籍展示には1社が参加しました.
 以下に当部門に関連する活動を報告します.

1.ワークショップ

 今年度は昨年度のように部門横断のワークショップの企画はありませんでした. 当部門が継続的に開催している3つのワークショップが開催されました.

(1)【W16】産業考古学シリーズ(10日,14:45-16:00),企画:緒方正則(関西大),司会:堤一郎(能開総合大) 「鉄道文化遺産の保存・活用の取り組みについて」,石原卓也・松本茂樹(JR西日本)

講師の石原卓也氏(JR西日本) 司会の堤 一郎氏(能開総合大)

(2)【WS17】戦後の技術開発史を語る(10日,16:15-17:30),企画・司会:川上顕次郎(産業考古学会) 「リングコーン変速機の変遷と応用商品群」,西尾契一郎(日本電産シンポ)

講師の西尾契一郎氏 司会は川上顕次郎氏(右)

(3)【WS18】プロフェッショナルの倫理(12日,13:00-17:15),企画・司会:小西義昭(日機装) ・「技術者が専門職になるための条件」,斉藤了文(関西大) ・「原子力企業と技術者の倫理」,西原英晃(京大) ・「公認会計士の職業倫理」,松本祥尚(関西大) ・「法律家の倫理判断の仕組み」,杉本泰治(スギモト技術史事務所) ・「建築家と社会的役割の倫理」,橋本修英(日本建築家協会) ・「医療および医療機器開発の専門家倫理に関する諸問題」,巽 英介(国立循環器センター) ・「技術者倫理と企業倫理にも集団活動を」,中村収三(立命館大) ・総合討論


2.オーガナイズドセッション

 オーガナイズドセッションは例年通り2セッションが企画・開催されました.

(1)S78 技術教育・工学教育,オーガナイザ 渡邉辰郎(東大),吉田喜一(都立産技工専) (2)S79 機械技術史・工学史,オーガナイザ 緒方正則(関西大),堤 一郎(能開総合大)

 前者は,高専や大学教育の教育プログラムの紹介や評価,教育論に関連するもの,CAI・CAD・CAE関連の教育プログラムの開発,技術と社会連関に関するものなどで,合計21件の発表がありました.  後者は,各研究者が精力的に続けている技術史や産業遺産に関連する調査研究の成果で,合計7件(講演者未到着1件を除く)の発表がありました.  両セッションとも同一会場で開催するよう企画されたため,連日多数の聴講がありました.
 以下に発表順に掲載します.

10日,9:45-10:45,[座長 堤 一郎(能開総合大)]
0801 玉より古代技術を考える/○塩津宣子(技文史研)/下間頼一(元 関西大),亀谷勝(中国軸承公司),緒方正則(関西大)
0802 天円地方思想の淵源/○下間頼一(元 関西大),塩津宣子(技文史研),亀谷勝(中国軸承公司),緒方正則(関西大)
0803 桜町遺跡出土のY 字材用途(橇史上におけるY 字材の位置付け)/,小沢康美(福井工大),○田知清夫(元 福井工大)
0804 トルコ西岸地帯の古代の運搬車の実地調査研究/○緒方正則(関西大),下間頼一(元 関西大),塩津宣子(技文史研)

10日,11:00-12:00,[座長 白井靖幸(千葉工大)]
0805 人体と機械/○藤尾直史(東大)
0806 教育用機械メカニズム模型の技術移転」/○城下荘平(京大)
0807 水車遺構に見る動力伝達機構の研究(その8)−製糸工場の照明用自家発電の事例から−/○永井唐九郎(中部プラントサービス), 天野武弘(豊川工高),天野博之(豊田市教委)
0808 日本機械学会「機械遺産」の認定と技術史的意義/○堤一郎(能開総合大),石田正治(豊橋工校),池森 寛(西日本工大), 緒方正則(関西大),小野寺英輝(岩手大),高橋征生(JSME),村田良美(明大)

講演は緒方正則氏(左)と下間頼一氏(右) 塩津宣子氏(日本技術史技教育学会)と古代の玉

10日,13:00-14:30,[座長 渡邉辰郎(東大)]
0809 高大連携事業による高校生のための実験実習授業/○吉田敬介(九大),村瀬英一,平松和昭
0810 教員養成大学におけるものづくり教育の試み/○黎 子椰(上越教育大)
0811 大学における技術者教育のための手作り模型スターリングエンジンの試験的運用/○加藤義隆(大分大)
0812 スターリングサイクルの理解を助けるアニメーションコンテンツの開発/○佐藤智明(神奈川工大),永岡慶三(早大), 小口幸成(神奈川工大)
0813 コンピュータを用いた製図教育支援システム(欠落している寸法線の評価) /○結城宏信(電通大),平川耕輔
0814 金沢工業大学の工学基礎教育における試み(所属学科における数理科目に対する意識)/○西 誠(金沢工大)

11日,9:45-10:45,[座長 西 誠(金沢工大)]
0815 子どもの遊びと機械工学/○吉田喜一(都立産技高専)
0816 初等教育におけるプロジェクトマネージメントの導入/○山本利一(埼玉大),五百井俊宏(千葉工大)
0817 発表中止
0818 環境教育ゲーム「キープ・クール」における感情的側面に注目した効果の検討/○加藤太一(東大),杉浦淳吉(愛教大), 飯田誠(東大),荒川忠一

ブーメランを飛ばす吉田喜一氏(都立産技高専)

11日,11:00-12:00,[座長 吉田喜一(都立産技高専)]
0819 工学技術者のための生物医学教育システム:REDEEM-ESTEEM プロジェクト/○松木範明(東北大院・NICHe), 武田元博(東北大院),山口隆美
0820 産業・経済に関わる教育への新手法の試み (第4報 230 名を超える機械系学科の学生に行った特別講義 「グローバル経済における産業・ビジネス・工学の進展と動向」と受講者に与えたインパクトの事例)/○本田博(都立科技大), 西美奈(エアランゲン大)
0821 科学技術コミュニケーション実践による教育効果の考察/○比屋根均(技術士会・大同特殊鋼)
0822 技術者倫理教育の問題点/○大村勝(摂南大)

3.市民フォーラム【C10】

 「機械遺産」パネル展示,9 日(日)〜12 日(水), 9:00−17:00
企画・実施責任者:堤 一郎(能開総合大)・池森 寛(西日本工大)・石田正治(豊橋工高)・緒方正則(関西大)・ 小野寺英輝(岩手大)・高橋征生(日本機械学会)・村田良美(明治大)

機械遺産のパネル展示

 市民開放行事の一つに,今年8月7日の学会制定の「機械の日」に当学会が認定した「機械遺産(Mechanical Engineering Heritage)」 25件のパネル展示が実施されました.これは当部門が企画した行事ではありませんが,今年学会創立110周年を迎えるにあたり, 記念事業委員会の下に設置された機械遺産小委員会に,委員長をはじめとして,委員全員すべてが当部門の第1位登録者が委嘱されたので, 関連行事として報告します.
 この市民フォーラムでは,8月7日の認定式典に展示された「機械遺産」の紹介パネル計28 枚を年次大会開催中に常設展示し, 併せてそれらを網羅した「機械遺産小冊子」・新聞記事・マスコミ掲載一覧を配布しました.
 大会参加者は,講演発表などの空き時間に随時立寄り,観覧されました.「機械遺産」を学会が認定したことを知らない会員もおられたようで, 観覧者のほぼ全員が熱心に見ておられました.
 総合受付と展示会場のある凛風館1階は学生のコミュニティプラザでもあり,パネルの展示がその通路に沿って設置されたこともあり, 理工系のみならず文系の学生の観覧も多く見られました.また大会初日は日曜日で,一般市民の参観もあり, 質問する方もおられました.なお,学会開催中の参観記帳数は83名でしたが,実質はその数倍とみられます.
 「機械遺産」は2017年の学会創立120周年まで,総数100 件程度を目途に毎年数件を認定することが決まりました. その選定作業は記念事業委員会から当部門に引継がれ,新たに機械遺産委員会が10月より発足しました. 当部門登録の皆様からも積極的な機械遺産候補の推薦をお願いいたします.
 関連記事は,(1)学会誌2007年9月号の告307ページ,(2)URL http://www.jsme.or.jp/kikaiisan/, (3)日本機械学会創立110周年記念2007年度年次大会講演論文集,No.07-1,Vol.5,105-106.に掲載されています. なお,応募締切は本年12月20日です.

4.部門同好会,10日(月) 18:30-20:30

 部門登録者の懇親会である部門同好会は大会初日に開催されました.他部門の会場はすべて関西大学の施設を利用しましたが, 当部門は大阪市北区にある,関西で最古のビヤホール「スーパー・ドライ・梅田店」で開催されました.
 同好会を開催した全16部門の参加者総数は407名で,当部門には27名が参加されました.会員外ながら,ワークショップの講師をされた方や, 日本技術史教育学会の女性会員の飛び入りもあり,2時間があっという間に過ぎるほど充実した和やかな同好会でした.
 同好会では,恒例の部門表彰式が行われ,業績賞を小西義昭氏(日機装)が受賞され,前部門長 村田良美先生(明治大) から表彰状と記念のプレート(川上顕次郎先生デザイン)が手渡されました.

部門業績賞を受賞された小西義昭氏(日機装)

美味しいビールにメートルが上がる
左から坂井玲子(日本技術史教育学会),白井靖幸(千葉工大),右端は下間頼一(もと関西大)の各氏

5.終わりに

 年次大会期間中に開催された部門運営委員会の席上,部門長の大久保英敏先生より衝撃的報告がありました. それは,当部門の第三者による外部評価が芳しくないという事実です.三年後の再評価で何らかの改善が見られないときは, 部門の行き先は見当たらなくなるとのこと.
 年次大会のみならず,部門主催の公開講座・講演会,国際会議等に積極的に参加し,当部門を盛り立てて行こうではありませんか! 当部門を通して工学教育,機械技術史,工学倫理など,本会の全会員に共通して必要な情報を積極的に発信すれば, その先には明るい結果が待っているはずです.
 2008年9月13日(日)から16日(水),横浜国立大学で開催される年次大会も是非,当部門のイベントにご参加ください.

執筆後記:報告者が年次大会中に複数の職務を担当していたため,部門の講演会場に張り付くことができず, したがって報告が文字主体の形になりましたことをお詫びいたします.

(報告 関西大学 緒方正則)


     


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日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.18
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