ブルネルは、イギリスの19世紀のエンジニア、イサムバード・キングダム・ブルネル(Isambard Kingdom Brunel、
1806年生~1859年没)であります。ところで、日本機械学会の会員に馴染みが深いのが硬さのブルネリ硬さであるが、
これはJohan August Brinell(1849-1925、スウェーデン人)の功績であり、ここで取り上げるブルネルとは別人である。
ブルネルは、イギリスでは偉大なエンジニアとして有名である。2002年に行われたBBCによるTV番組放送後の人気投票では、
第1位のチャーチルについで第2位がブルネル、第3位はダイアナ皇太子妃、第4位はダーウィン、
第5位はシェークスピアの順でした。しかし、わが国では、ブルネルの名前はあまり知られておりません。
筆者は、イギリスのブルネル大学(ロンドン郊外西側にあり、ヒースロー空港から車で20分、
ブルネルという偉大なエンジニアにちなんで名づけられた国立大学法人。)に研究滞在し、ブルネルの偉業を知り、
1999年以来、日本にブルネルを紹介する活動を進めてきました。2003年、日本機械学会の技術と社会部門に
「ブルネル研究会」を組織し、2004年・2005年には、明治大学で公開研究会を開催してきました。
2006年は、ブルネルの生誕200年に当たり、ブルネルの母国・イギリスでは、“BRUNEL 200 ”というイベントがロンドン
から西へ約150kmのブルストル市を中心に、活発に展開されました。2006年1月にイギリスを訪ね、“BRUNEL 200 ”
の内容を知り、日本でも“BRUNEL 200, JAPAN”なる「ブルネル生誕200年記念」のイベントを開催することにしました。
その一環として、2006年10月27日、28日に「ブルネル生誕200年記念行事」―講演会とパネルディスカッション―を
無事開催することができましたので、以下に報告いたします・・・。
◇ 生誕200年記念行事について ◇
・ テーマ:ブルネル生誕200年記念講演会「ものづくり、ひとづくり、ことづくり」講演会
・ 日時:2006年10月27日(金)、28日(土)9:30〜4:30
・ 会場:千葉県立現代産業科学館(市川市)
・ 主催:日本機械学会(技術と社会部門)ブルネル研究会、日本技術史教育学会
・ 共催:千葉県立現代産業科学館
・ 後援:千葉大学、文部科学省、経済産業省、国土交通省、英国大使館、日英協会、千葉県、
千葉県教育委員会、ちば国際コンベンションビューロー、市川市、千葉日報社、NHK千葉放送局
■10月27日(第1日)
ブルネル研究会の佐藤建吉主査による開会宣言の後、来賓の宮崎清(千葉大理事)、エドワード・ライト
(英国大使館一等書記官)、大川時夫(本学会前会長)各氏が挨拶した。英国からの招待講演者ロバート・ハルス
(Robert Hulse、ブルネル博物館長)、アンガス・ブキャナン(Angus Buchanan、バース大学名誉教授)
両氏によるブルネル紹介がなされました。
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現代産業科学館玄関前で、左からハルス館長とブキャナン教授夫妻
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午後は、日本人によるブルネル紹介で、フォトシネマ(綿貫潤氏、ブルネル研究会)、TV番組(日本テレビ系列で10月17日に放送、
藤保修一氏、TVディレックター)、また講談(田辺一鶴氏、講談師)が行われました。
その後のパネルディスカッション(司会:大川時夫)では、英国人3名のほか小池滋氏(英文学者)小池滋氏
(英文学者)、菅建彦氏(交通文化振興財団)、鈴木孝氏(元・日野自動車)により、関連分野からわかりやすく
ブルネル精神について提言がなされました。通訳は、マーチン・モリス助教授(千葉大、英国出身)が担当された。
その後、当日夕刻には、懇親会が行われ、ブルネル談義に花が咲いた。ブルネル父子に掛けて、
川上父子による津軽三味線の共演は英国からの招待者はじめ日本人にも好評でありました。
■ 10月28日(第2日)
第2日目は、ブルネルの革新性、挑戦心を「ものづくり、ひとづくり」に生かすために、各界の方々による講演、
提言がなされた。レオナルド・ダ・ヴィンチの創造性(神谷和秀氏、富山県立大学、司会:白井靖幸理事)、
デザインは公共のために(水戸岡鋭治氏、ドーンデザイン研究所)、また江戸の技術の粋、萬年時計の復元模型製作
(土屋栄夫氏、元・精工舎)、本田宗一郎について(西田通弘氏、元・本田技研工業、司会:渡辺辰郎理事)が、
講演されました。
最後のパネルディスカッション(司会:大河内信夫)では、大輪武司氏(日本機械学会、元・工学教育センター長)、
坂本勇氏(大阪産業大学名誉教授)、上野耕史氏(文部科学省)、出淑枝氏(小松製作所)、山崎和雄(日刊工業新聞社)
が登壇し、ものづくり、ひとづくりについて意見と討論が行われた。
最後に、筆者は、青少年、若者はその進路を定めきれず、戸惑いの中にあり、課題や目標に挑戦する心や活力が弱い今日こそ、
この講演会で語られたブルネルとそのスピリットの一般への理解と定着が必要であると総括し、無事閉会することができました。
ご参加頂いた方々、御支援、御協力頂きました方々、団体組織には心から御礼申し上げます。
◇ ブルネルスピリットの拡がり ◇
こうして、ブルネルのエンジニア魂を、以降ブルネルスピリットと呼び、日本のものづくりに元気と活力を呼び起こす気運をつくりたいと考えている。
いまそうした動きが展開を見せ、2007年8月には、「ブルネルスピリット2007」と称する行事が東京の六本木ヒルズで開催される運びで、
準備しております。今後、ブルネル研究会のHPhttp://www.eureka.tu.chiba-u.ac.jp/brunel/index.htmlでも紹介する予定であります。
また、ブルネルを理解していただくために次の書籍を刊行しましたので紹介させていただきます。
@佐藤建吉(著)『偉大なるブルネルの挑戦』、日刊工業新聞社発行(1680円税込み)ISBN 4-526-05721-5
A大川時夫(訳)『ブルネルの生涯と時代』、LLP技術史出版会(4830円税込み)ISBN:4-434-08485-2
以上
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