巻 頭 言

「技術大好きプランの提案」

 



渡邉辰郎 
(東京大学)

 昨今、「科学技術離れ」、「理科離れ」が指摘されている。この、世の中の動きに対応するために文部科学省では「科学技術・理科大好きブラン」を実施している。その中身は、1.サイエンス・パートナシッププログラム、2.理科大好きモデル地域事業、3.理科大好きボランティア・理科大好きコーディネーター、4.国際科学技術コンテストに対する支援、5.スーパーサイエンスハイスクール、6.理科教育等施設整備費補助、7.目指せスペシャリスト、8.環境教育推進グリーンプラン、9.先進的科学技術教育用デジタル教材の開発、が実施されている。上記プログラムは理科系学会の推進活動の成果と思ってよい。しかし、この中に「技術」に対する啓蒙活動が一つも盛り込まれてないことが問題である。現実、初等中等教育課程の中で教科になっている「技術科教育」は授業時間が削られ、惨憺たる状況になっている。中学校の学習指導要領によれば、昭和33年告示および゛44年改訂で、技術・家庭は同じ時間帯に男女別々、一学年105時間三ヵ年で315時間の授業時間が確保されていた。その後、昭和52年改訂ではみかけの合計が245時間(実質210−225時間)、平成元年改訂ではみかけの合計が245時間(実質175時間)、平成10年改訂でははみかけの合計が175時間(実質105時間)となっている。つまり、義務教育の中の「技術教育」はほとんど、機能してないことになる。「科学技術離れ」、と言われている中で実質、初等中等教育課程の中では「技術教育」は教えられていないと認識をすべきである。これでは、物の対する認識不足は当然であり、「ものつくり」系に関心を示さない、教育をしている事になる。我が国の将来、何を糧に、を考える。国の施策である「科学技術創造立国」の根幹となす、「ものつくり」を疎かにしていると、今、以上に苦しい立場におかれるのではないかと思われる。では、何をなすべきか。その答えの一つは、義務教育の中の「技術教育」の復活と拡大である。「技術」判った子供を育てることであり、そのためには「理科大好きプラン」と共に、「技術大好きプラン」を提案して、その推進向けて「工学系学会」が協調活動して行うべきと思われる。併せて、初等中等教育技術科担当者の再教育プランの推進、専門学会の参加も呼びかけるべきである。最近、教育系の学会に参加すると、次期初等中等教育課程の改訂では現在以上に「理科・家庭科・技術科」の縮小の検討がされていると耳にする。「工学系学会」は危機感をもって行動を起こす時期に来ていると痛感する昨今である。

     

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日本機械学会
技術と社会部門ニュースレターNo.16
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