イブニングセミナー(第80回)

(技術と社会部門企画)


開 催 日: 2006年1月25日18:00〜20:00 (毎月最終水曜日開催)
会   場: 早稲田大学理工学部(大久保キャンバス)55号館S棟2階第4会議室予定
[東京都新宿区大久保 3-4-1/電話(03)5286-3000/JR「高田馬場」駅戸山口下車 徒歩12分,都バス「都立 障害者センター」下車徒歩1分,地下鉄東西線「高田馬場」駅下車徒歩12分] →大久保キャンパスの地図(早稲田大学のホームページ)
趣   旨:  技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も社会との深い関わりの中にあることは明らかである.我々が新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.
テーマ
および講師:

テーマ:「男の茶」

我々日本人は何故こうも自国文化に興味がないのだろうかと時々思う。
敗戦をきっかけに大きく生活習慣、考え方が変化したところに原因があるとも考えられるが、町のいたるところに横文字で書かれた看板があり、会話の中にも多数の英語が混入されている、家に帰れば、家族でテーブルを囲んで食事をし、洋式トイレで用を足し、ユニットバスで湯浴みをし、フカフカのベッドで夢を見る。着ている物も洋服が常識で、着物姿で電車に乗れば、「どっか悪いのか」とでも言いたげな視線で、白足袋の足元から、着物、最後に顔をじろじろ見られる。まあ洋風文化が定着し、それが現在の日本の文化になっているのだから、致し方ないことだと思うが、せめて自国の古くから持っている文化に、少しでも興味を持っていただきたい。

 茶道と言う言葉から皆さんは何を連想されますか?抹茶、着物、回して飲むんだろ、正座、等等色々出てくると思いますが、そのイメージの元になっているものは、TV番組とかデパートの催事場とかお寺などではないでしょうか。 実際茶会に参加された方は、意外に少ないと思われます。なぜならきちんとした茶会に参加できる機会はそうあるものじゃあありませんからね。これは伝えるべき立場の我々の怠慢でもあります。今回は茶会とはどのような事をするのか、何を目的に行うのか、どのように振舞うのかという点についてお話をしたいと思います。

@茶の種類  茶会では2種類の茶を提供します。良く皆さんがご存知の「薄茶」、そして茶会のメインであります「濃茶」。茶の産地は色々ありますが 基本的には同一です。しかし抹茶に出来るのは、特別な環境で生産された極上等の葉だけを摘み取り、立冬の頃まで茶壷に保存し熟成します。壷の中心に和紙の袋につめた濃茶を入れ、その周りに薄茶用の葉をぎっしり詰めておきます。これを今の季節で言うと11月ごろに茶壷の封を切り、新茶を取り出し、石臼で引いて飲むわけです。 ですから茶の世界では11月から12月にかけて「茶の正月」などと言い、「口切の茶事」と言う茶会を開いて、新茶を楽しむのです。
A茶会  茶会と言うのはもしかすると、皆さんのご想像とは少し違っているかもしれません。 我々は「茶事」と称しますが、実は約4時間に渡る日本古来のパーティーなんです。客を招き、一汁三菜が基本ですが 美味しい料理と美味しい酒を少し差し上げて、その後濃茶、薄茶と差し上げる、その中で主客が心交わし、相手の気持ちをありがたく感じ取るとっても楽しい場なのです。

B目的  茶事の目的はお招きした客を心を込めておもてなしする たったそれだけのことなのです。 何かを求めるわけでもなく、ましてや利益は100%有り得ない、逆に私財をつぎ込んででも納得のいくおもてなしをするのです。  利休の面白い話に、ある茶人の茶会に千利休と他二人ほど招かれ、露地を進んでいきますと、そこには落とし穴が掘ってあったそうです。もちろん彼らはそれに気づき、これは何か趣向があるに違いない、面白そうだから皆で落ちてみよう、ということになり わざとドスンと落ちたところ、その亭主があわてて飛び出してきて「これはこれは大変な粗相をいたしまして」と謝り、「御召し物が泥だらけになりまして申し訳ございません、風呂の用意をしてありますのでどうぞ」と言うことで、皆さて次はどうなるのかと期待しながら 湯を浴びて出てくると、そこには真新しい召し物が用意されており、着替えて席に入ると心を込めた懐石の用意と美味しい茶のもてなしがなされたそうです。天下の茶人千利休を迎え、穴を掘った亭主も天晴れながら、利休ほどの茶人でもその場でその趣向を見抜き、わざと落ちる。こんな遊び方もあったそうです。

C振る舞い  抹茶は好きだけど、作法がなんだか面倒なんだろ、とよく言われます。 どうやって茶を飲んだらいいのか教えてくれと言われると、思わず茶碗を口元に持って行き、ゆっくりと傾けてください、そうすれば自動的に茶は飲めますよ、と申し上げております。良く礼儀作法を身につけるのに、茶道は良いといわれます。

 確かにそのとおりですが、私の師匠に「お前たちは作法作法とそればかり追いかけているが、作法より大切なのは礼儀じゃ」と怒鳴られます。本当にそのとおりですが、この礼儀と言うのはなかなか難しくて、理解できそうで理解できない。それに対し作法はマニュアルどおりに行えば理解もへちまもありません。誰にでも簡単に出来ることなのです。しかしながら、礼儀を理解しようとすれば、どうしてもその前に作法を身に付けておかなければなりません。したがって茶の稽古は見て聞いて、作法の真似事から始めるのです。 それを5年10年と繰り返していくうちに、作法の本当の意味が理解できてきます、そうなればその作法をぶち壊して礼儀とするようなことも出来るようになるわけです。

この度「男の茶」と題しましたのは、今申し上げた作法をぶち壊して礼儀とする。そのことなんです。例えば、男同士で酒を酌み交わす時、作法は無くても心は通い合います。なぜなら、酒を飲みながら相手を理解し分かり合おうとしませんか。会話の中に愛情さえ感ずる事だってあるんじゃないでしょうか。それは酒の力を借りて本音で話せるからで、酔ってるからできるんだよ などとおっしゃるかも知れませんが、茶の湯はこの酔って分かり合う感覚を、言葉も使わずに心で味わい、楽しむそんな世界なんです。  これが出来るようになるのは坊主が悟りを開くようなもんで、何十年修行したら理解できるのか見当もつきませんが、男はどちらかと言えば単純な理想主義者が多いので、感覚は掴みやすく出来ているんじゃあないでしょうか。


講師:秋山宗泰(表千家教授)

定   員: 40名
参 加 費: 会員1000円(学生員無料),非会員1500円(学生非会員500円)(当日会場にて受け付けます)
申込み方法: 「イブニングセミナー(第80回)申込み」と題記し,(1)会員資格(会員番号),(2)氏名,(3)勤務先・所属,(4)連絡先(郵便番号・住所・電話番号・E-mailアドレス)を明記の上,E-mailまたはFAXにて下記までお申し込みください.
なお,当日会場でも申込みを受付けます.
FAX送付先: (03)5360-3508(担当職員 加藤佐知子)E-mail:kato@jsme.or.jp
問合せ先: 〒189-8520 東京都東村山市野口町2-16-2
日機装(株)流体技術カンパニー
 小西義昭
TEL:042-392-6610
E-mail:y.konishi@nikkiso.co.jp

または,
東京都立航空高専
 吉田喜一
TEL:03-3801-0146 ex.544
E-mail:kyoshida@kouku-k.ac.jp

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