イブニングセミナー(第120回)

(技術と社会部門企画)


開 催 日: 2009年9月30日(水)18.00〜20.00
会   場: 早稲田大学理工学部(西早稲田キャンパス) 62号館W中会議室
東京都新宿区大久保3-4-1/電話(03)5286-3000
地下鉄副都心線「西早稲田」駅(早稲田大学構内に出口)0分、JR「高田馬場」駅戸山口下車徒歩12分,
早稲田大学キャンパス案内図(http://www.waseda.jp/jp/campus/okubo.html)

趣   旨:

 技術はいま,資源,環境問題をはじめ,巨大化とブラックボックス化による人間疎外の傾向に関して多くの批判にさらされている.技術が受け入れられて発展するのも,拒絶され衰微するのも,また技術者の社会的地位のあり方も社会との深い関わりの中にあることは明らかである.我々が新しい時代を担う責任ある技術者であろうとするならば,人間についての深い洞察を持つとともに,社会の動きを正しく見極めなければならない.技術と人間,技術と社会の関わりについて現状を理解し,将来を展望することを目的とする.

テーマ
および講師:

「日本の金(砂金、小判など)を分析科学する」

 一昨年から世界文化遺産の登録、近代化産業遺産の認定などが続き、また、昨年、国立科学博物館で「黄金の国ジパングとエル・ドラード」展が開催されるなど、日本の金についての関心は、現在高まっている。
  講演者は、新日本製鐵株式会社基礎研究所で分析科学研究に従事後,国立歴史民俗博物館情報資料研究部で、金属歴史資料の分析科学を担当した。
 本講演では、金の歴史の概要を述べ、続いて次を詳述する。

1. 蕪木5号墳出土金銅製遺物の自然科学的研究 (国立歴史民俗博物館発行、1992年)
 千葉県山武郡松尾町蕪木5号墳(6世紀後半)出土した金銅製巾着形容器と金銅装小刀(いずれも国立歴史民俗博物館蔵)の金銅層を、X線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡で、研究した。いずれの試料も金銅法(当時の一般的な金めっき法、金と水銀のアマルガムを銅地に塗り、熱して水銀を除く)が使用されていた。金めっき層は銀含有率が、巾着形容器で2.8%で、小刀で4.0%で、それぞれ予想以上に極めて薄く(10 μm以下)、かつ均一であった。

2.東北地方産古代砂金の自然科学的研究 (国立歴史民俗博物館発行、1994年)
 「続日本紀」によると、天平二十一年に陸奥国小田郡(現在の宮城県涌谷市)に日本で初めて産金があり、東大寺の大仏の建造に献上された。このみちのくの砂金を自然科学的に研究するために、地元研究者等との共同研究グループを結成し、砂金の採取法を習得し、東北地方9カ所で試料を採取し、X線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡で、研究した。砂金は川に流れている間に、表面から銀が化学的に脱離することなどがわかった。また、この地方の砂金は銀含有率が9.5~16.8%で、鉄や銅はそれぞれ0.1%以下であった。同時に採取した板碑と墓碑(1366~1722年)の金箔は銀含有率が9.6~11.9%で、鉄や銅はいずれも0.1%以下であった。 

3. NON-DESTRUCTIVE ANALYSIS OF THE FINESS OF KOBANS IN THE YEDO PERIOD (IMES  日本銀行発行、1996年)
 1601年に慶長小判が発行されて以来、元禄、 宝永、正徳、享保、 元文、文政、天保、 安政、万延の各小判まで、10種が発行された。これの小判の品位については、当時は公表されなかった。明治になってようやく湿式化学分析法で分析された。国立歴史民俗博物館は、日本銀行からの研究依頼を受け、同銀行が所蔵し、選定した江戸期小判39枚について、オージェ電子分光分析装置、X線マイクロアナライザー付走査型電子顕微鏡などにより、分析科学的研究を実施し、結果を報告した。オージェ電子分光分析により、小判表面は「色揚げ」されていることがわかった。分析結果の例は次の通り。慶長小判(9試料)の平均銀含有率は14.6%、享保小判(3試料)の同率は13.7%、万延小判(3試料)の同率は41.5%であった。鉄や銅の含有率は、いずれの試料でも0.1%以下であった。

なお、金の歴史の概要は、「金属の百科事典 田口ら編、丸善」による。

 

講師: 田口 勇(東京産業考古学会 会長)

定   員: 40名
参 加 費: 会員1000円(学生無料),非会員1500円(学生非会員500円)
(当日会場にて受け付けます)
申込み方法: 「イブニングセミナー(第120回)申込み」と題記し,(1)会員資格(会員番号),(2)氏名,(3)勤務先・所属,(4)連絡先(郵便番号・住所・電話番号・E-mailアドレス)を明記の上,E-mailまたはFAXにて下記までお申し込みください.
なお,当日会場でも申込みを受付けます.
申込先

日本機械学会(担当職員 井上 理)E-mail:inoue@jsme.or.jp ,FAX. 03-5360-3508

<懇親会> 高田馬場駅前の土風炉(とふろ)にて、講師を囲んで懇親会を行います。
(会費\3,000程度)
問合せ先:

(株)日機装技術研究所/小西義昭/tel.:042-392-3087? E-mail: y.konishi@nikkiso.co.jp
都立航空高専/吉田喜一/tel.:03-3801-0146 ex.544 E-mail: kyoshida@kouku-k.ac.jp

次回予定:

一人で博物館を創った男
講師:鈴木 昭(元日本工業大学博物館館長)


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