部門長挨拶


第86期部門長

吉田敬介


 この度,大久保英敏 前部門長を引き継ぎ,部門長を仰せつかりました.小野寺英輝(岩手大学)副部門長,加藤義隆(大分大学)幹事とともに第86期の部門運営を行ってまいりますので,よろしくお願い申し上げます.
 当部門は,日本機械学会にある20部門の中でも小さな部門のひとつです.機械工学に関する学問や技術と社会との連関,いわゆる「つなぎ」の観点から学会活動を進めていこうとする部門です.我々の活動の大きな柱は3つあります.すなわち,(1)技術者倫理や知的所有権など技術者が専門職として活躍するために受ける倫理的・法的規制のあり方を研究する分野,(2)技術・工学の歴史を研究する分野,そして,(3)それらを含む技術者の人材育成や継続教育のあり方やそれらの方法を研究する分野,です.
 本会の英語名称「Japan Society of Mechanical Engineers」は,アメリカにける「American Society of Mechanical Engineers」に対応するものです.後者を直訳すれば「米国の機械技術者の団体」であり,したがってJSMEは本来,「日本技術者協会」と訳してもよい性格の団体のはずです.この意味をもう一度考え直し,「学術研究」だけでなく「産業技術」,すなわち「ものづくり」に関する技芸への関心を高める活動にもさらに積極的に取り組むべきという声が本会内で大きくなりつつあります.すなわち,本会を単なる学術研究団体としてだけではなく,技術者の人材育成や継続教育に対する積極的な取り組みを通して産業界に寄与できる団体に発展させていこうとものです.
 本来,このような声を率先して取り入れ,それに応える活動ができるのは当部門であると信じております.したがって当部門は,大学の研究者が多い本学会では第1位登録分野とはなりにくい側面があるものの,少なくとも第2位登録分野以降のどこかには全ての会員が登録して頂きたい部門であります.しかしながら,部門登録者数は第5位登録まで入れても2,000人足らずと,本会会員4万人のわずか5%程度に過ぎないのが現状です.本会発展のためにも,当部門の登録者を大幅に増やす必要があると考えておりますが,そのためには,部門活動のさらなる活性化はもちろんのこと,部門活動の他部門との差別化やPR活動が必要不可欠と考えております.
 当部門では,部門活動の活性化を進めるためにさまざまな活動を行ってきました.中でも,「部門活動の活性化には地方における活性化が不可欠である」との認識に立ち,部門活動の拠点を1.北海道,2.東北,3.関東,4.北陸,5.東海,6.関西,7.中国・四国,8.九州・沖縄の8地区(支部に同じ)に置くことを目標に,各地区で活動のキーとなる会員や団体に様々な働きかけを行いました.一部の地域を除き活動拠点のめどは立ちましたが,今後はこの活動拠点での活動を実際に活発化するためのイベントを計画すると共に,各地区会員への部門登録の働きかけを進めていく予定です.なお,地方における活動活性化の具体的な仕掛けの一つとして,本年度の部門講演会は北九州市の西日本工業大学小倉キャンパスで9月20日(土)に行い,翌20日は北九州地区の機械遺産群の見学を行います.
部門活動のPRに対しては,本会広報担当者とも連携しながら昨年度までにホームページを大幅に更新するとともに,部門行事だけでなく部門登録者に有用な関連行事などの案内も行うなど,会員サービスとしての広報活動にも力を入れて参りました.
 また,部門活動の他部門との差別化は,会員各位の当部門での活動への魅力度を大きく左右します.当部門の特徴的な行事であるイブニングセミナー(毎月最終水曜日の夕方に早稲田大学理工学部で開催)も2007年11月に100回目を迎えることができました.学術講演会とは全く違う切り口から,しかも機械工学技術者が関心のあるテーマを提供する本イベントのようなイベントを,今後は多く計画していこうと思っております.さらに,2年毎に開催される当部門の国際会議ICBTTは,business and technology transfer,すなわり「技術移転」「ビジネス移転」という,通常の機械工学では考えられない観点から機械工学を語ろうという会議で,いつも大変ユニークな内容の講演が行われており,本年度はその開催年で,12月4日〜6日にアメリカのWilmingtonで開催が予定されております.
 このように,当部門はユニークな活動を行い,それをさらに発展させていこうとしておりますが,これらを実現し維持していくための部門運営は,所帯の小さな当部門では想像を絶するものがあります.そのため,他部門のみならず他学会とも協力を進めながら活動していかねばならないと思っておりますが,やはり本会会員各位の部門登録の増加が一番の力となります.当部門の今後の活動にご期待頂くとともに,各位の当部門へのご参加,部門登録をお待ちしております.



(九州大学・ 准教授 吉田敬介)

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