部門長挨拶

第82期部門長

小西 義昭


 日本機械学会には「基礎工学分野」,「応用分野」の19部門と,「共通分野」である技術と社会部門がある.別な見方をすると,命題がはっきりしている部門と,人の社会活動に絡み,命題以前の価値観そのものを創り出す部門からなると言っても良い.従って部門のキーワードには,技術教育,技術史,技術者倫理,知的財産権等のように人間および社会に直接関連するものが多い.また,特に教育,歴史において広い活動実績があるが,今年は部門の中に「技術・工学教育委員会」「技術倫理委員会」「技術史・工学史委員会」「知的財産権委員会」の4専門委員会を設けた事でさらに広い活動を展開していきたい.
 日本機械学会の技術と社会部門の中で活動するというよりも,人間の方に主体を置き,部門および学会を使って社会に有益な活動をする人々の集まりとなり,またその活動の場を提供していきたいと思う.技術の発展が社会に影響を与え,社会の動きが技術の発展を加速,時には減速するが,その中心には必ず人間がいるという地味な活動を続けていきたい.
 当部門が開催するイブニングセミナーは60回を越えた.毎月末の水曜日に,会場も同じで,専門家でなくても分かる話をしてもらい,お茶を飲みながら聞き,30分の質問時間で足りなければ,後の懇親会で座って話す.同じエネルギーを充填するにも,専門事項に対するチャージとは違って,専門以外のこのような自由な時間を多く持てる事は楽しみにもなる.当日,会場での参加申込が約半数で,面白そうなテーマだから来たというようなことも,この部門の活動全体を象徴している.
 教育や歴史といった部門の性格上,経験豊富な人材にも恵まれているし,活動を見ていると若手よりも若い方も多い(少なくとも本人達はそう思っている).また,色々の他学会においても活動しているというよりも,一人一人が色々な学協会,企業,教育研究機関の橋渡しをしているという感じの方が多いのも特徴のひとつと思う.このために,日本機械学会が色々な学会の母体になったように,他の部門,学会などと共同で活動していくには最もふさわしい部門であると思う.
 専門分野での連携だけではなく,技術士法の改正により技術者のあり方が明確になり,JABEEで技術者倫理,生涯教育が重視されるように,もっと広く,本当の意味で国際的に通用する人間的な技術者になること,またはそれを助けることで社会との連携も考えてみたい.
 また,共通部門とはいえ,教育,歴史,技術者倫理,知的財産権に代表される技術社会における専門分野も持つことから,今年度は専門分野においても,記録に残るものとして査読付き論文から講演会,国際会議まで活動を広げる最初の一歩を一緒に踏み出したいと思う.



日機装(株) 流体技術カンパニー)

トップページへ