部門長挨拶

第81期部門長

堤 一郎


 第80期吉田喜一部門長(東京都立航空工業高等専門学校)からバトンを引継ぎ,第81期部門長になりました職業能力開発総合大学校の堤 一郎です.小西義昭副部門長(日機装梶j,大島まり幹事(東京大学)を始め委員にご就任いただいた方々とともに,当部門の積極的な運営を進めたいと思っておりますので,どうぞよろしくお願いいたします.

 技術と社会部門は,1991年9月に発足した日本機械学会第20番目の比較的新しい部門で,今年で12年目を迎えます.「人と技術と社会」を部門の核に置きこれら相互の関わりを明らかにするとともに,その成果を世の人々の活動や生活に有効に還元させることが大切な使命です.これは将来に向けた,新たなデザイン活動であるともいえましょう.こうした使命を実現するため多くの会員の方々が当部門に登録され,自らの研究や実践の成果を背景に活発な意見交換を行いながら,多面的な部門活動を展開してまいりました.

 考えてみれば人も技術も社会も人類が地上生活を始めた時から存在し,「生きる」ということを意識しながら互いに密接に関わりを持ってきたものですから,当部門のルーツは非常に古いといえます.言うまでもなく,人の生活環境は技術を巧みに応用した生産活動の展開とその成果である人工物の登場により質的な変化を遂げ,高度に複合化された現代社会が形成されてきたのです.人類が誕生した頃の生活環境を現在と比べれば,技術のもたらした飛躍的な進歩の跡が歴然としています.しかし同時に,生活環境の破壊も少しずつ進んでおり,環境との調和をどのようにするかが技術を担う人々に課せられた大きな課題でもあります.

 現在の当部門では,「技術教育・工業教育」,「技術史・工学史」,「知的財産権」の三分野がオーガナイズドセッションとして学会誌やホームページに掲載され,皆様にもよく知られた活動分野になっています.これらはいずれも他部門には見られない大きな特徴ですが,これは当部門が日本機械学会の中で部門横断的な性格を強く持っていることによります.また,会員の皆様向けの活動に毎月最終水曜日夕方に開催される「イブニングセミナー」があり,すでに50回を越える実績を持っています.毎回ユニークな話題提供をしてくださる講師の方を探すのは結構大変ですが,毎月このセミナーを楽しみにおいでくださる参加者の熱意に支えられながら担当幹事は努力を続けています.部門を越えたこのセミナーに,皆様どうぞご参加ください.

 ところで学問や研究の発展を,人の「手」がそのモデルにあたると私は考えています.すなわち各専門分野が「指」に,「手」が機械工学全体に相当するという考え方です.かつて機械工学が形成されつつあった時代には,隣り合う「指」が互いに寄り添っていたため,研究者は専門分野と同時にその関連分野への活動の展開が,自らの努力により横断的に行えたと思われます.しかし機械工学の発展につれて,「指」はいっそう伸びるとともにそれらの間隔が扇を開くように離れていきました.このため専門分野を横に連絡する機能が求められ,技術と社会部門が誕生したともいえます.単繊維を縦横に組み合わせ織り上げられた平織物もこれと同じ事例です.短繊維が一次元であるのに比べ平織物は二次元の面構成になり,これにより皆様の参加による日本機械学会の活動範囲も自ずと広がっていくと信じています.将来的には,会員が登録可能な部門の数が現在の3部門からもう少し増えることを期待したいところです.こうしたことが会員の活動の自由度を増し,その成果が学会の活性化に大いに貢献することになると考えます.

 第81期の技術と社会部門の活動ではこれまでと同様,日本機械学会の中での横断的役割を果たすとともに,部門の独自性をさらにアピールしたいと考えています.その一つは,部門のみならず各支部とも連携を取りながら行事開催を企画したいことです.支部長を始め支部役員の皆様には,この件についてのご検討をぜひお願いいたします.次は2002年10月,当部門が京都大学で開催した「経営と技術移転に関する国際会議」を,2004年秋にイギリスで開催すべく準備を進めることです.多くの会員による講演発表のお申込を歓迎いたしますし,詳細は改めて当部門のホームページでご案内いたします.そして三つ目は,ここ数年にわたり,日本機械学会の機械工学振興事業資金援助をいただき発行している小冊子「機械記念物」の続編を編集・刊行することです.この小冊子は12ページ構成で,日本機械学会創立100周年記念事業の一環として企画されたものです.これまでに工作機械編と鉄道編(蒸気機関車と電気機関車・内燃機関車)が刊行され,将来的には日本機械学会から単行本として世に出したいと計画しています.

 これらのことが第81期の技術と社会部門の主な計画です.各部門と各支部の皆様との連携をはかり,日本機械学会のさらなる活動の充実と広範囲な展開を考えておりますので,積極的なご支援とご協力を重ねてお願いいたします.

 簡単ですが,第81期の技術と社会部門部門長就任にあたり,ご挨拶とさせていただきます.



職業能力開発総合大学校  主任研究員)

トップページへ