勝田 正文
第78期小澤守部門長の後を受け、日本機械学会「技術と社会部門」の第79期部門長を勤めさせていただく、早稲田大学機械工学科の勝田正文です。就任に当り、一言ご挨拶させていただきます。
このところ「技術と社会」部門長は、2代続けて熱工学を専門基盤とする先生方にご尽力戴いてまいりました。実は、私の専門分野も熱工学で、伝熱工学の学問体系に立脚して冷凍空調、自然冷媒、ヒートパイプそしてスターリング機関と、比較的幅広く研究を展開しております。前部門長のご尽力、会員諸賢のご協力もあって、本部門も順調に成長発展を遂げ、部門単独の講演会を持つとともに、見学会、イブニングセミナーそして研究会活動など活発に機能しております。いままで構築していただいた財産を大切にしつつ、更なる飛躍のために、若輩ではございますが奮闘する覚悟でございます。皆様のご支援、ご協力をお願いする次第です。
さて、本部門は小澤前部門長が指摘されますように、機械技術、さらには技術そのものと社会との関連を対象とした部門であります。
最近、大学の体制にどっぷり漬かっている者にとりましても、科学技術基本法、TLO加えて国立大学や研究所の行政法人化、さらに我が国全体の経済状況を反映して新産業の創出を目指したアントレプレナーの育成、社会に開かれた教育(エクステンション)など、科学技術政策や産官学連携問題に出会わない日がないような状況になっております。また、技術教育認定(JABEE)を意識し、大学院課程も視野に入れた一貫カリキュラムの構築や、ISO14001の取得など、社会的な要請に対するアカウンタビリティーを問われる局面が増えてまいりました。これは、すなわち大学が求められる真理の探求と智の創造がアカデミアに留まることなく、すなわち社会とは無縁でなく、社会からの要請を常に敏感に捉えまた大学内のシーズを常に社会へ発信せねばならないことを示しております。
同様なことが、日本機械学会全体にも投げかけられているのではないでしょうか。つまり、機械技術を含む技術全体が社会とは無縁のものでなく、技術そのものが実は社会における一局面にあると私も考えます(小澤前部門長)。我が「技術と社会」部門の出番はまさにここにあるのであって、上述した各種政策の大部分が活動の中に含まれると同時に、技術による社会変革という立場からは、もっと多くの提言(アプローチ)を社会(国の政策)へ向けて発信できる母体になりうる、日本機械学会唯一の部門といえるでしょう。このような観点から「技術と社会」部門の役割は極めて重要であり、まさに今が大いなる飛躍の時期だと捉えることができます。
しかしながら、これらの課題に少しでも回答を出すには、真摯に受け止めかつ議論を重ねる努力が必要となります。幸い当部門では、機械技術史、産業・機械工学連関研究・技術社倫理・新産業創出につながる産学技術協力のあり方分科会そして人機能支援工学・エネルギーと社会動態・機械技術の継承調査・技術と社会連関研究会などが活発に活動し、成果を世に問う準備を行ってきており、その蓄積も大きな財産といえるでしょう。このような有効な場を大いに活用していただくとともに、新しい視点からの(切り口)各種ご提案を可能な限り取り入れて、当部門の活動を国内ばかりでなく、国際的にも認知されるように、益々活発にしてまいりたく存じます。
重ねて、皆様のご参加、ご支援、ご鞭撻をお願い申し上げます。