TRANSPORTATION AND LOGISTICS DIVISION
TRANSPORTATION AND LOGISTICS DIVISION
受賞理由:受賞者は,交通・物流部門の広報委員幹事(2005 年),同委員等(2006 年),第3(鉄道)技術委員会幹事(2008 年),同委員長(2009 年),交通・物流部門幹事(2013年),学術誌編集委員会幹事(2007 年~2016 年)等を歴任した。また,STECH2003 事務局,STECH2009 論文幹事,鉄道技術連合シンポジウム(J-RAIL)実行委員長(2009 年),TRANSLOG 実行委員幹事(2012 年)等の国際会議や大会の企画運営に参加して,部門内の技術発表や議論の場の活性化に貢献している。さらには,鉄道車両のダイナミクスとモデリング出版分科会主査として書籍「鉄道車両のダイナミクスとモデリング」の執筆(2017発行)や,毎年の同名のセミナーを企画して,2018 年には「鉄道車両のダイナミクスに関わる基礎教育(講習会・セミナーの開催と書籍出版)活動」として日本機械学会教育賞を受賞しており,部門内の教育や議論の場の提供として多大なる貢献をしている。加えて鉄道技術の発展を見据えて「鉄道技術将来戦略検討委員会」をはじめとした多くの企画を検討していたものの,2021 年に逝去したためその一部は未完となっている。体調を崩されながらも最後まで交通・物流部門の発展のために貢献を続けた受賞者は,部門功績賞受賞にふさわしい。
受賞理由:受賞者は,鉄道車両の上下乗り心地を向上するため,主にセミアクティブ制御を用いた上下振動低減に関する実用的な研究開発を行った.鉄道車両の1次ばね系の上下振動低減による車体の弾性振動低減法を初めて提案したうえ,その効果を実車走行試験により明らかにした.また,2次ばね系の上下セミアクティブ制振システムをメーカーと共同で開発し,鉄道車両用の上下制振制御装置として初めて実用化した.この装置は国内のクルーズトレインや観光特急列車の一部に採用され,車内快適性向上に寄与した.これらの業績により,本会学会賞(論文)(2009年),同(技術)(2018年)を受賞したほか,イギリス機械学会The George Stephenson Prize(2011年),科学技術分野の文部科学大臣表彰(開発部門)(2019年)などを受賞し,技術の発展に貢献したことが本会以外でも認められている.また,交通・物流部門大会(TRANSLOG)幹事(2014年,2017年),鉄道技術連合技術シンポジウム(J-Rail)実行副委員長(2018年),同部門鉄道技術委員会委員長(2019年)などを務め,2020年に本会フェロー認定を受けるなど,部門業績賞にふさわしいと考えられる.
受賞理由:40年の永きにわたり, 自動車の運動性能に関する研究開発に尽力し, 実用運動理論の構築, 運動制御システムの開発, 運動性能開発プロセスの構築, 新プラットフォーム開発などの 業績を通して、自動車の安全性と快適性の向上に大きな貢献を果たした. また, 人材育成, 教育活動にも尽力.
・駆動力の運動性能への影響を解明し、 前輪駆動車,四輪駆動車の性能向上を牽引.
・車両運動状態量に基づく新たな運動制御論理を考案し、 後輪操舵システム, スタビリティコントロールシステムの実用化, 普及を先駆.
・運動性能MBDの体系化に取り組み, 企画計画段階から商品化に至るまでの実践的運動 性能開発プロセスを構築, プラットフォーム開発にて定着化.
・大学(非常勤), 機械学会講習会等にて自動車運動力学の講師を継続 (1999~).
受賞理由:日本の交通事故死者数で歩行者の占める割合は最も高く、その割合は近年高まる傾向にある。その中でも低速度の車両が歩行者と衝突する事故では車両後退時の事例割合が高いことが知られている。一方で従来の後退時に物体検知する後方ソナーは、もともと駐車支援を目的として開発されてきた。候補者は、この車両後方ソナーは車両後退時の歩行者検知としても有効な対策技術の一つであることを検証・提案した。この研究結果をもとに、国連欧州経済委員会では、車両後退時の装備要件に係る新規則として、後退時カメラ又は後方ソナーを車両に装着することとなり、その技術基準は日本や欧州域内法に適用されている。車両後方ソナーは検知時警報音により運転者にとっても認識しやすいことから、カメラと組み合わせるとより有効な事故防止手段となる。以上より、受賞者の提案した技術要件は、日本や欧州で販売される全ての車種に適用され、世界での歩行者死傷者数削減が期待される学術成果であり、交通・物流部門の技術発展に貢献した業績であるとして、部門業績賞を贈賞する。
受賞理由:受賞者は長年パワーステアリング技術を研究し、電動化への嚆矢となるEPSやその応用であるVGSの開発に従事した。EPSに関しては国内外で論文発表もされており,特にFISITA発表では論文賞2位を獲得した。日本機械学会交通・物流部門においては,自動車技術委員会幹事を2008年から2年間務め,その翌年には交通物流部門の広報幹事,更に2011年には広報委員長を務めた.また2015年から2016年は部門の自動車技術委員会委員長を務め,機械学会の活動に貢献している.更に2009年から9年間機械学会が毎年発行している工学年鑑の執筆にも携わった.自動車技術委員会の活動を通じて,鉄道や船舶の領域と連携し見学会や体験型のイベントを企画し,横通しの技術交流などにも多大な功績を残していることから,部門の功績賞として贈賞する。
受賞理由:受賞者は超電導磁気浮上式鉄道(超電導リニア)の開発業務に30年以上にわたり携わっており,超電導リニアに関連する特許について,「磁気浮上式鉄道地上コイル(特許第3595784号(P3595784))」等,候補者が発明者に名を連ねた特許が100件以上あり,機械工学や工業の発展,ならびに超電導リニア実用化の基盤技術確立に大きく貢献した.現在はリニア開発本部長として,超電導リニアによる中央新幹線の実現に向けた技術のブラッシュアップを取りまとめており,首都圏~中京圏~近畿圏を結ぶ高速鉄道輸送の二重系化を実現する超電導リニアによる中央新幹線プロジェクトにより,社会全体に大きく貢献することが期待される.
また受賞者は2017年より本会の財務理事,2019年より監事の職責を果たす傍ら,2017年度には部門のあり方検討委員として,本会が今後も世界をリードする技術者集団であり続けるための部門のあり方を検討し,2018年2月の答申に大きく貢献した.その他にもイノベーションセンターの運営・企画委員を務めるなど,本会事業の拡大とプレゼンスの向上に貢献するべく活動を行っており,本会の運営,発展に多大に貢献している.
受賞理由:2021年度交通・物流部門運営委員会の委員として部門の活性化へ寄与し、STECH2021事務局長として講演会を盛会に導かれた.
受賞理由:2011年にインホイールモータ車の駆動力配分によるヨー,ロール,ピッチの3Dモーメント制御法を提案し,国内外で論文発表を行った.それにより,自動車技術会論文賞を受賞(2013)した他,SAE Arch T. Colwell Merit Awardを受賞(2015)する等,国際的にも高い評価を受けている.その後,乗り心地制御法の開発に従事し,ばね下の上下加速度を用いることで不快な周波数帯域を制振する手法を提案した.こちらも自動車技術会論文賞を受賞している(2018).更に,より汎用的なばね上加速度センサのみを用いて同等以上の制振効果を得る画期的な手法である「トリプルスカイフック制御」へと発展させ,国内外で論文発表やシンポジウムでの講演を行っている.本部門においては,2012年と2019年の講習会「とことんわかる自動車のモデリングと制御」にて,それらの研究成果を題材に講師を務めている.以上のように,優れた業績に加え,日本機械学会並びに自動車業界の発展に対する大きな貢献が認められる.
受賞理由:鉄道車両の走行安全性、特に車両脱線防止に関する研究開発に従事され、また新幹線車両の高速化の実現に尽力され、これまでに数々の高速試験車両(STAR21、FASTECH360、ALFA-X)の開発に携わられてきました。新幹線高速化の開発においては2019年5月にE956形式新幹線試験電車「ALFA-X」での試験走行を開始させ、2020年10月には時速382kmでの試験状況も公開されてこられました。以上の通り、日本の鉄道車両の高速化実現に大きく貢献されている。
受賞理由:交通・物流部門鉄道車両のグランドデザイン研究分科会幹事(2002~2004年),交通・物流部門鉄道技術委員会幹事(2012年),同委員長(2013年),マルチボディダイナミクス研究会幹事(2010年),英文論文誌および日本機械学会論文誌アソシエイトエディタ(2008年~現在),交通物流部門副部門長(2017年),同部門長(2018年)を歴任した.また,交通・物流部門大会(TRANSLOG)幹事(2009年,2011年),同実行委員長(2017年),鉄道技術連合技術シンポジウム(J-Rail)実行副委員長(2009年, 2012年)などを務め,交通・物流部門に多くの貢献を行っている.さらに,部門大会での優秀講演論文賞受賞,鉄道車両のダイナミクスを学ぶ者にとって貴重な教材の著作・出版・講習会実施により日本機械学会教育賞を受賞するなど,交通・物流部門に多大な功績があるうえ,2020年2月に本会からフェロー認定を受ける.
受賞理由:運動制御・自律移動に関わる研究および教育に従事し、車両型ロボットの遠隔操縦技術、自律走行、ドローン技術など自ら設計に従事するその対象は幅広い。特に「軌道誘導方式SSM(Sensor Steering Mechanism)」を提案し、マイコンが動作する基板作製から、制御系設計・車両開発全般に渡って携わり、マイコンカーの競技会、最近ではつくばチャレンジと実証実験を積み重ねている。これらで構築・蓄積された技術は、当会を始めとする関連学会に多くの論文を投稿し、一般雑誌Interfaceをはじめとする幅広い各種解説記事を執筆するなど機械工学への貢献が大きい。
受賞理由:1987年に世界初の乗用車用4輪操舵システムをプレリュードにて実用化しこの研究開発成果により公益社団法人日本発明協会の全国発明表彰で内閣総理大臣賞を受賞した。その後自動運転システム、2足歩行ロボット、先進運転支援システムなど、革新技術の研究開発プロジェクト責任者を務めた。またISO/TC204/WG14国際議長を2回務め、ITS(高度交通システム)における運転支援システム技術の国際標準化に取り組む。さらに、車両運動制御に関する国際学術シンポジウムAVEC(1992)、自動車交通予防安全技術に関する国際学術シンポジウムFAST-zero(2011)を立ち上げるなど、学術面においても大きな貢献を行っている。
受賞理由:長年自動車の車両運動性能を研究し,その集大成として専門書を上梓した。また日本機械学会交通物流部門において自動車技術委員会委員長(2013,2014)、部門幹事(2015)、企画表彰委員長(2016)、部門活性化ワーキング幹事(2017~)などの重責を歴任するとともに、当部門が主催する講習会「とことんわかる自動車のモデリングと制御(2013~2018)」、セミナー「気持ちよいハンドリングのしくみと設計(2017~)」、セミナー「交通・物流のダイナミクスの俯瞰~共通点と相違点の理解~(2018)」の講師を務めるなど、部門への貢献も極めて大きい。
受賞理由:自動車の制御に関わる研究および教育に従事し、日産時代には、後輪を前輪に協調して操舵する「電動Super HICAS」の研究開発に携わり、ここで構築された技術は、日産自動車の基盤的な制御技術となっている。さらに、九州大学に移ってからは,道路交通情報を利用した自動車の省エネルギーモデル予測走行制御など、ITと交通・物流とをつなぐ先駆的な研究で、当会を始めとする関連学会に多くの論文や解説記事を投稿し、講演会での講師を務めるなど機械工学への貢献が大きい。
受賞理由:留岡氏は,2004年度~2011年度において交通・物流部門第3技術委員会,2004年度J-Rail担当委員に従事している.また,2006年度には,鉄道車両に関する技術に関して日本機械学会賞(技術)を受賞するなど交通・物流部門に多大な功績があったため.
受賞理由:人見氏は,革新的自動車用エンジンの研究開発に従事し,その成果は,2011年度 超高圧縮比ガソリンエンジン(1.3L)の開発10-15モード燃費30km/Lの実現,2012年度 走る歓びと環境性能を両立する新世代クリーンディーゼルエンジン(2.2L)の開発-超低圧縮比14.0コンセプトの実現-と,日本機械学会賞(技術)を連続受賞するに至った.EVシフトと叫ばれる中,内燃機関を極めることで機械工学への貢献が多くあったため.
受賞理由:相馬氏は,当部門の初代幹事(1991年度)として部門の立ち上げに尽力した. また,常設委員会で主に自動車に関する技術を調査する第2技術委員会にて2011及び2012年度に委員長を務められた.
相馬氏は,2009年開催のSTECH09における実行委員会幹事(事務局)を2007年度から務め,また,当部門の国内会議であるTRANSLOGの2002,2013及び2014年度部門大会幹事を務められた.
また,相馬氏は長年論文校閲委員を務め,2010年度から2012年度にかけ,当部門の対外活動として重要な,英文エディタを務められた. さらに,2013年度から和文論文誌主査(カテゴリーチーフエディタ)を務められ,現在も当職にある. また,新学術誌の準備にあたられ,今までにない英文レター誌の発行について精力的な活動を行われ,対外的に学会のプレゼンスを上げるために貢献されている.
この他にも,相馬氏は,1985年度以降およそ40件の学会委員会委員または幹事を務められ,2008年度に自動車技術会の関東支部理事,2012年度から今日まで同会東海支部理事,本部理事を務められ,2014年度から今日まで日本交通医学工学研究会の理事を務めて社会貢献しておられ,当部門においては,2000年以降,毎年実施している講習会「とことんわかるモデリングと制御」の企画・立案,講師を務められ,若手技術者及び学生の教育活動に励まれている.
受賞理由:綱島氏は,1998年度交通・物流部門第3技術委員会幹事,1999年度交通・物流部門第3技術委員会委員長,2001年度交通・物流部門幹事,2002年度交通・物流部門第1技術委員会委員長,2014年度交通・物流部門副部門長,2015年度交通・物流部門長を歴任.また,鉄道技術国際会議STECH2009においてプログラム委員長,STECH2015において実行委員長を務めた.2009年度から部門英文ジャーナル編修委員長,2014年度から部門カテゴリマネージャを務め,交通・物流部門に多くの貢献を行っている.さらに,2007年3月に日本機械学会交通・物流部門第15回部門大会賞を受賞するなど交通・物流部門に多大な功績があるため.
受賞理由:西脇氏は,1976年トヨタ自動車(株)入社以来,永きにわたりブレーキと予防安全の性能向上に取り組んでこられ,自動車業界並びに機械工学の学術の発展に寄与する多くの業績を残している.
氏がブレーキの研究に着手した70年代までは,ブレーキノイズは摩擦係数が負の速度勾配の時に起きる自励振動と理解されており,より摩擦係数の高い材料によるブレーキ効き向上に対し大きな障壁となっていた.これに対し,氏は航空機主翼のフラッター現象に着目し,振動系の動的不安定がブレーキノイズの原因であることを理論的に示すとともに,ブレーキの幾何学的要因と固有振動数適正化による改良方法を提案した.また,パルスレーザホログラフィによる8kHz以上の振動モード世界初の可視化,その低減方法を定式化して設計した改良型ディスク提案,ブレーキ取り付け部の剛性改良によるうなり音低減など,独創的な技術を数多く創出し,これらの新しいブレーキ鳴き低減技術の提案は大いに評価された.さらに,実際の車両をローラ上で昼夜連続自動運転させるベンチ実験設備の開発や,ブレーキ鳴きFEM計算の実用化等,ブレーキ設計のためのツール開発においても世界をリードした.氏が提唱した理論・技術は,今日では世界中の自動車業界に共有されることとなり,ブレーキの高性能化・軽量化に道筋がつけられ,自動車の性能向上に繋がっている.
学術論文・講演では,1991年に”Study on Disc Brake Squeal”で,1998年には”低周波数ブレーキ鳴きの実験解析”で,独創的実験解析と考察により2度に渡り自動車技術会論文賞を受賞している.海外でもSAEからの招待で講演(”Why do we still have brake noise problems?-Development of Brake Noise Analysis and Current Technical Issues”として初期設計の重要性を提唱)する等,大変高い評価を受けている.
2009年には帝京大学宇都宮キャンパスの理工学部教授に着任,実務経験と理論に裏付けられた工学教育および基礎研究に携わるとともに,自動車やブレーキ産業にゆかりの深い栃木県産業振興課との共催で,研修会「摩擦振動を中心とした談話会」を2009年より継続開催(現在は日本機械学会のブレーキの摩擦振動研究会主催).2016年には国際会議 Brake Forum in Japan(日本機械学会主催)の開催に尽力する等,産官学による業界の発展に寄与している.また,2011年からFISITA主催 I.Mech.E.協賛の Euro Brake Conference とSAE Brake Colloquium のAdvisory Board を務め,学会と企業の研究推進に貢献している.
受賞理由:高田氏は,当部門常設委員会で主に自動車に関する技術を検討する第2技術委員会(現自動車技術委員会)にて2000及び01年度に幹事,2009年度に委員長を務められた.2005年度に当部門広報委員会委員長,2006及び2007年度に当部門の部門幹事,2007年度は部門全体に関わる企画立案活動を行う第1技術委員会の委員長を務められた.さらに,2013年度には当部門の副部門長及び部門大会実行委員長を兼務され,2014年度には当部門を統括する部門長を務められた.
また,高田氏は2006年度より現在までJSME技術ロードマップ委員会において当部門の代表委員を務められ,当学会110周年記念事業であるJSME技術ロードマップを作成され,当学会の2007,08年度年次大会,110周年記念講演会,日本機械学会誌にて発表された.2009年度も技術ロードマップの発展に尽くされる一方,2009年にCOP15に向け当学会が世界に発信する技術提言資料作成代表者として活躍された.
さらに2000年以降,自動車技術委員会にて毎年実施している講習会「とことんわかる自動車のモデリングと制御」の企画・立案及び講師を務められ,若手技術者および学生の教育活動にも励まれている.合わせて日本機械学会誌の年鑑執筆も担当され,1997年度より校閲委員,2007年度より英文ジャーナルエディタを務められている.
近年では,2014年度より自動運転に関する研究会を部門横断型として立ち上げられ,部門を超えた技術発展への貢献をされており,2017年度には専門会議への発展を視野に入れ,活発な活動をリードされている.
これらのことより日本機械学会にとって,高田氏の貢献は多大なものであり,交通・物流部門の功績賞として推薦する.
受賞理由:井上氏は,自動車の運動制御,予防安全,運転支援のシステム開発,並びにこれらを統合した制御システム構築で自動車産業界を牽引してきた.代表的な商品例としてActive Suspension & Active Rear Steering統合制御システム(1991年:世界初,ソアラ)やVSC(Vehicle Stability Control 1995年:世界初,クラウンマジェスタ),PCS(Pre-Collision System 2003年:世界初,ハリアー),車両統合システム(2006年:世界初,レクサスLS)等がある.又,これらの予防安全システムの普及にも尽力した.特にVSCにおいては米国のトヨタ全SUVへの標準展開を2003年に完結させ,SUVの安全性向上でも業界を牽引した.その後の米国国家道路交通安全局(NHTSA)の調査では,VSCによりSUV車の単独ロールオーバー事故が激減した結果が報告され,日本・欧州でもVSCにより乗用車の単独死亡事故が約30%低減した分析結果が報告されている.このような結果からも,氏の行動が,法規によるESC(VSC)装着義務化(米国起点で全世界に拡大)に繋がったとも言え,交通事故死傷者の大幅な低減に大いに貢献した.また,レクサスLSで採用した車両統合システムは,氏の提案による,個々の安全技術・システムを連携させ「事故を起こさないクルマ」を目指す統合安全コンセプト(Integrated Safety)に基づいたもので,Vison-zeroに向けた更なる安全技術の向上を導く先駆的役割を果たしている.提案当時から,路車間や車車間の情報活用により,運転状況に応じた最適な運転支援を行うことを念頭においたシステム設計を実施しており,現在の自動運転実現に向けた技術開発の基盤を築いたと言える.
近年では,車両の知能化やドライバ研究を軸に,先端・先行技術開発に関する産官学連携プロジェクトの立案と推進に尽力し,国・経団連等の活動を通じてSIPやCOI設立に貢献した.現在も戦略的イノベーション創出推進プログラム研究開発テーマ「高齢社会を豊かにする科学・技術・システムの創生」(Sイノベ)のプロジェクトマネージャとして,高齢者の自立を支援する自律運転知能システムの開発を進めると共に,産業界の横連携・産官学連携の強化のためにFAST(Future Advanced Safety Technology)研究会を立ち上げる等,欧州の産官学プロジェクトに対抗するAll Japan体制構築や,産業競争力向上の国施策に貢献している.
これらの業績を鑑み,交通・物流部門の業績賞として推薦する.
受賞理由:1988年のアクティブサスペンション開発スタート以来,プロジェクトのリーダーを務め,2001年世界で初めて鉄道車両におけるアクティブサスペンションの実用化に成功した.当初の空気圧式に加え,電動式を開発し,現在国内で新幹線や優等列車の800両以上に採用され,鉄道車両の乗り心地向上に貢献した.また,2013年9月STECH2013(ソウル)にて,アクティブサスペンションの開発の歴史について基調講演を実施し,本国際会議の成功に大きく貢献した.
受賞理由:2015年度交通・物流部門運営委員会の委員として部門の活性化へ寄与し,第22回鉄道技術連合シンポジウム実行委員長,STECH2015事務局長として講演会を盛会に導かれた.
受賞理由:交通物流部門第2技術委員会に所属し,2005年から2011年にかけて,大会幹事・技術委員会委員長,部門幹事,副部門長,部門長を歴任した.よって部門に対する貢献・功績はきわめて大きいもの考えられる.そこで候補者を功績賞に推薦する.
受賞理由:
・超高速輸送システムである超電導リニア車両の開発,山梨実験線の走行試験に長きに旦り従事され,超電導リニア技術の実用化に大きく寄与された.現在,超電導リニアシステム全体の開発責任者として,将来の日本の大動脈となる中央新幹線の営業線実現,及び日本の高速輸送システムの海外展開に大きく貢献されている.
・日本機械学会の各種シンポジウム,国際会議(STECH’03,J-RAIL2003,MOVIC2010等)で超電導リニアの基調講演を実施され,国内外に広く情報発信されている.
・日本機械学会員(交通物流部門登録者)の増員に大きく寄与されている.
受賞理由:日産自動車時代から,自動車の操縦安定性および予防安全システムの研究・開発に従事し,新システムを実用化してきた第一人者であるとともに,その業績は論文賞としても認められている.代表的な商品例として,レーンキープサポートシステム(2000年:世界初,シーマ),前後輪アクティブステア(2008年:世界初,スカイライン),電動パワーステアリングの過渡アシスト制御(2007年:世界初,B,CプラットフォームFF車)などが挙げられ,退職後に商品化されたダイレクトアダプティブステアリング(ステアバイワイヤ),インテリジェントパーキングアシスト(自動駐車)の開発などにも携わった.いずれのシステムにおいても,最初は周囲の理解が得られない中で開発をスタートし,それを現実のシステムに纏め上げると共に,理論的な背景を論文などにまとめて,汎用的に使える技術としている点が高く評価される.特に,レーンキープサポートシステム開発のきっかけとなった旧建設省プロジェクトAHS(Advanced Highway Systems)のデモでは,供用前の上信越自動車道路で磁気マーカーを頼りに自動運転を行い,現在の自動運転に先鞭をつけた.当時のステアリング制御においては,道路曲率を未知の外乱として扱い,カルマンフィルタにて推定する手法を用いていたが,この技術の本質は,現在のGoogleなどの自動運転で用いられるSLAM(Simaltaniously Localization and Mapping)と本質的に同じ考え方である.現在は,東京農工大学において事故分析,人間―自動車系解析,自動運転,運転支援に関して教育・研究に従事しており,国の自動運転プロジェクトなどにも参画している. また,機械学会交通物流部門活動においても,各種セミナーの講師や委員を務めるなど本学会への貢献は高いと考えられる.以上より,業績賞として推薦する.
受賞理由:新しい車両運動性能理論を構築するとともに,それらを応用した数多くの世界初,日本初の新システムを考案・開発・商品化を行った. また,理論構築では,操安キャパシティー,K-fy線図,β―メソッド,DYC(ダイレクト・ヨーモーメントコントロール)など新指標,新手法を考案,開発し普及を図った. これらはテクニカルタームとして定着しDYCなどは数多くの論文タイトルとして使用されており,自動車技術進化への貢献度が極めて高い.本部門第2技術委員会の強い推薦を受け,推薦致します.
受賞理由:自動車・鉄道車両・新交通システムなどの各種車両の運動性能評価や,装置機器の耐震・免震設計などの研究に従事し,様々な研究業績を挙げている.交通・物流部門の設立当初より部門活動に大いに貢献しており,長年技術委員を務めるとともに,第71-72期(1993-1994年)に第2技術委員会委員長,第73期(1995年)交通・物流部門副部門長,第74期(1996年)に交通・物流部門 部門長を歴任している. 以上より,下坂陽男氏の当部門に対する貢献は目覚ましく,部門功績賞に相応しいと考え,さらに本部門第2技術委員会からの強い推薦を受け,推薦する.
受賞理由:下記の役職を歴任し,交通・物流部門の発展に多大の貢献を果たした.
(1)2000年度,交通・物流部門 広報委員会 委員長
(2)2002年度,交通・物流部門 第3技術委員会 委員長
(3)2008年度,交通・物流部門 大会(TRANSLOG2008)実行委員会 委員長
(4)2009年度,交通・物流部門 部門長,STECH2009,TRANSLOG2009,J-RAIL2009の主催部門長として,成功に導いた。
本部門第3技術委員会からの強い推薦を受け,部門功績賞に相応しいと考え,ここに推薦する.
受賞理由:自動車を中心に高齢者や障がい者のモビリティの向上に関する研究に長きに渡り従事され、研究成果を精力的に論文として公開し、数多くの講演も行われ日本の第一人者としてこの分野を牽引してこられました。日本機械学会においても2003年~2007年に交通のバリアフリー化・シームレス化に関する研究会の主査として部門横断的にこの分野を牽引され、また、交通・物流部門第85期副部門長、第86期部門長を歴任され、部門活動の活性化に大きな足跡を残されました。 以上のように,交通・物流分野において優れた研究業績を残されたのに加え日本機械学会交通・物流部門への貢献,社会的活動などから見て,部門功績賞に最適な方であると第二技術委員会各委員の強い推薦を受け、推薦致します.
受賞理由:新幹線の高速化,ならびに地震時の新幹線の脱線・逸脱防止対策で, 研究開発を推進して安全且つ安定した高速鉄道システムの実現に貢献しており,当部門に関する技術発展での功績が顕著である. また,これらの技術に関し,論文投稿や学会・大学などでの基調講演を実施し,多数の功績がある.さらに,新幹線の海外展開のため, 米国,イギリス,インドなどで日本の高速鉄道技術のPRを実施し,国際交流の分野での功績も顕著である. 以上より,日本の新幹線の高速化および安全技術の発展とその研究開発,ならびに,海外への新幹線技術PRにより, 我が国の機械工学・工業の発展に大きく寄与しており,当部門に関する功績が顕著である.
受賞理由:車両運動性能の研究に約30年間従事され,多くの業績を上げると共に理論研究だけでなく製品開発でも中心的役割を担ってきた. 特にスーパーソニックサスペンション,後輪操舵システム,前後輪アクティブステアシステムの開発では理論解析から導かれた制御則を実車に適用することで, 従来出来なかった性能を実現し,日本の自動車競争力の向上にも大きく貢献した.近年は新たな解析方法として「状態速度ベクトル図」を提案し,車両の安定性解析,カウンタステア時のドライバモデルの検討など多くの技術者に継続的に新たな知見を与えて,この分野の活性化にも大きな貢献をしている. また,本学会においては,1995年より交通・物流部門の運営委員,第2技術委員会委員,第2技術委員会委員長を歴任されると共に, 自動車の運動力学セミナでは12年の長きに亘って講師を務め,後進の育成に多大な業績を上げた. 交通物流部門第2技術委員会各委員からの強い推薦を受け,ここに推薦いたします.
受賞理由:須田義大氏は,前後非対称操舵台車,独立回転車輪,レールの波状摩耗,車輪レール間の摩擦の制御, などの研究に従事し,鉄道車両のダイナミクスと制御に関わる顕著な研究業績がある.また,自動車,船舶などビークル全般に関する研究も行っており, 機械学会賞も多数受賞(論文2件、技術1件)している.第78期に第三技術委員会委員長,第84期には部門長,また、2003年の鉄道技術連合シンポジウム (J-Rail)実行委員長を務めるなど、当研究分野の研究を先導されてきた.このように,須田義大氏の当部門に対する貢献は目覚しく, 部門功績賞として当に相応しいと考えられる.
交通・物流部門第3技術委員会各委員からの強い推薦を受け、推薦いたします.
受賞理由:候補者は、当部門において技術委員として部門の運営に貢献した。 また、車両の運動力学分野において多くの業績を上げ、自動車の快適性、安全性向上に大きく貢献した。 部門においては、2000年より現在まで第2技術委員会の委員、2001年より現在まで部門運営委員、2005年から2年間委員長、2007年から現在まで英文エディタを歴任している。 また、第2技術委員会が企画するセミナー「自動車の運動力学」の講師を長年務め、11年間で延べ3000名に対して運動性能に関する体系的な教育を実施している。 研究面では、ドライバ支援システムの設計、非線形車両運動制御系の設計、車両運動の解析、ドライバの運転動作モデルの開発など、数多くの研究成果を発表している。
交通・物流部門第2技術委員会各委員からの強い推薦を受け、推薦いたします。
受賞理由候補者は、交通事故発生メカニズムの解析、二輪車の直進安定性に関する研究に多くの業績を上げ、 自動車の安全性向上に大きく貢献した。また、当部門において技術委員として部門の運営に貢献した。 研究面では、主に、二輪車の直進安定性に関する研究、見通しの良い交差点における出会い頭事故の研究、 及びドライブレコーダーを用いた交通安全など、数多くの研究成果を発表している。
交通・物流部門第2技術委員会各委員からの強い推薦を受け、推薦いたします。
受賞理由: 候補者は,航空機力学,飛行制御の研究に1977年より32年間の長きに渡り従事し,国際的な学術団体より著名な賞,称号(1986年R&D100受賞(米国),2003年10月ICAS(国際航空科学連盟)Executive Committee Member等)を得るなど,日本の航空工学の第1人者として長くこの分野を牽引してきた.また,研究活動だけでなく,書籍,マスコミ等を通じた啓蒙活動を積極的に行っている.さらに,日本機械学会 交通・物流部門第4技術委員長を経て副部門長,部門長を歴任し,部門活動の活性化に取り組んでいる.
以上,鈴木真二氏の日本機械学会 交通・物流部門に対する貢献は部門発足当初から目覚しく,部門功績賞として相応しいと考え,ここに推薦いたします.
受賞理由: 石田弘明氏には,車両の走行安全性評価、脱線や転覆に関する研究,輪重横圧連続測定装置の開発,鉄道の脱線事故調査など,鉄道車両のダイナミクスに関わる性能および安全性向上技術の分野において顕著な研究業績(機論約4編,機構論約20編)があり,当該技術分野の発展に寄与されている.また,第77期(1999年)に第3技術委員会委員長として技術委員会を先導された.鉄道車両の車体ダイナミクスに関わる安全性の分野での研究・技術開発に貢献した.
このように,石田弘明氏の鉄道車両の走行安全分野に対する貢献は目覚しく,部門業績賞として当に相応しいと考え,ここに推薦する次第です.
受賞理由:候補者は,車両の各種制御装置の開発に多くの業績を上げ,自動車の快適性,安全性向上に大きく貢献した.また,当部門において技術委員として部門の運営に貢献した.
研究面では,主に,車両運動や振動などの制御系の開発,乗員の振動感受性やドライバの運転操作性,視覚特性などの人間特性を考慮した車両特性設定や予防安全装置の開発,及び人間特性や予防安全装置の性能評価を行うためのドライビングシミュレータの開発など,数多くの研究成果を発表すると共に実際の製品開発に携わり,発明考案も数多く出している.
交通・物流部門第2技術委員会各委員からの強い推薦を受け,推薦いたします.
受賞理由: 小島殿は,自動車運転者の運転特性,交通事故分析等自動車交通の安全向上の研究に長きに渡り従事され,研究成果を精力的に論文として公開し,日本の第一人者としてこの分野を牽引してこられました.日本機械学会においては交通・物流部門第2技術委員会第77期・78期委員長,第82期副部門長,第83期部門長を歴任され,部門活動の活性化,部門活動の方向性決定等に大きな足跡を残されました.また,交通安全に関わる国機関,国民生活センター,警察関係の各種委員会委員,委員長を歴任されています.
以上のように,小島殿は自動車運転教育や事故分析分野の研究活動により交通分野において抜群の業績を残されたのに加え日本機械学会交通・物流部門への貢献,社会的活動などから見て,部門功績賞に最適な方であると判断した.
受賞理由: 鈴木氏には,粘弾性補強材を有する平板の振動,磁気浮上式車両の荷重測定法,鉄道の軽量車体の振動解析,車両の衝撃応答解析,衝突安全性向上のための構造最適化など,車体振動の振動抑制性能向上技術の分野において顕著な研究業績(機論約10編,機構論約15編)があり,多くの解説記事も含め,当該技術分野においてその引用がなされている.また,第77期(1999年)に副部門長兼部門大会実行委員長として大会開催を成功に導き,第78期(2000年)には部門長として部門を先導された.鉄道車両の車体振動に対する車体構造設計分野での技術開発に貢献したことで,部門の名声を高めたといえます.
このように,鈴木康文氏の部門に対する貢献は目覚しく,部門功績賞として当に相応しいと判断した.
受賞理由: トヨタ自動車において,音響,振動,制御に関するエンジニアとして活躍され,その後ハイブリッド自動車「プリウス」開発にチーフエンジニアとして関わられた.「プリウス」によって自動車の燃費は大きく改善し,その技術は世界の自動車産業,さらには工業全体に大きな影響を与え,日本が誇る先端技術の1つとなっている.その技術開発の中で受賞候補者は重大な役割を果たしており,その業績は交通・物流部門業績賞に値する.
受賞理由: 藤岡先生は,東京大学において一貫して車両工学の研究を行ってこられました.研究内容は鉄道車両・自動車・2輪車などの運動特性からITS・ヒューマンインターフェースまで多岐にわたり,鉄道台車のダイナミクス,磁気浮上車両の制御,車両の操縦性・安定性,車両の自動運転,サスペンション機構,タイヤモデル,人間-自動車系の特性,ライダの特性を考慮した2輪車のダイナミクス,ドライビングシミュレータの構築等々,多数の論文を執筆されておられます.日本機械学会においては交通・物流部門第3技術委員会第74期委員長,第2技術委員会第75期・76期委員長,79期副部門長,80期部門長を歴任され,部門の活性化,部門活動の方向性決定等に大きな足跡を残されました.また車両運動力学に関する複数の講習会を企画され,毎年多くの参加者得て部門活動に貢献されています.さらに車両運動制御に関する国際会議AVEC (International Symposium on Advanced Vehicle Control)の実行委員会委員長などを歴任され,国際的にも活躍しておられます.自動車技術会,国際交通安全学会等においても各種委員長などを歴任されています.以上のように,藤岡先生は車両工学分野の研究活動を常にリードされてこられました.専門分野における抜群の業績に加え日本機械学会交通・物流部門への貢献,国際的・社会的活動などから見て,部門功績賞に最適な方であるとの結論を得ました.
受賞理由: 谷藤先生には、鉄道車両のダイナミクス・制御・走行性能向上技術の分野において顕著な研究業績(機論約40編)があり,多くの論文においてその引用がなされ,この分野での第一人者であられることは誰もが認めるところです.また,第80期(2002年)に副部門長兼大会実行委員長として部門大会開催を成功に導き,第81期(2003年)には部門長として部門を先導されました.さらに,鉄道の事故に対してもその原因分析に協力し,社会的に貢献したことで,部門の名声を高めたと言えます.このように、谷藤先生の部門に対する貢献は目覚ましく,部門功績賞として当に相応しいと考え,ここに推薦する次第です.
受賞理由: 人間-自動車系の研究を長年にわたり実施した.提唱した操舵モデルは,吉本モデルとも呼ばれ,現在でも他の研究でよく用いられる.また,ドライビングシミュレータの効用を早期から主張し,モーション付のシミュレータを日本で最初期に作成した.シミュレータもいまや普及し,部門の先端シミュレータ研究会も作られ活動しており,その顧問でもある.また,当該研究会が主催し2006年に日本で始めて開催したドライビングシミュレータ国際会議において,日本におけるシミュレータ開発の基調講演を行い,欧米に日本のシミュレータ技術の先進性を示した.最近ではドライブレコーダやASVに関する国土交通省の検討会の座長等を務め,予防安全技術の普及に貢献している.
受賞理由: 近森順先生は、東京工業大学、新三菱重工(その後社名が三菱重工、三菱自動車工業に変更)、成蹊大学、芝浦工業大学において一貫して自動車工学の研究を行ってこられました.研究内容は多岐にわたり、操舵性・安定性、サスペンションの機構、ブレーキノイズ、人間・自動車系の応答、連結車両の特性、ドライビングシミュレータの構築、ドライバの覚醒度に関する研究等々、多数の論文を執筆されております.日本機械学会においては交通・物流部門第2技術委員会初代委員長として揺籃期であった部門の活性化、部門大会の開催、部門活動の方向性等に多大な貢献をされました.近年ではJABEE委員会において国際的に通用する技術者の教育プログラム策定にも尽力されておられます.社会的な活動として国土交通省自動車アセスメント評価検討会座長を始め運輸審議会特別委員、リコール対策委員会委員長他、要職を歴任されております.この他、内閣府、軽自動車検査協会、交通事故分析センターなど多方面でご活躍されております.また、自動車技術会では理事を始め各種委員長などを歴任されております.以上このように、近森先生はこの方面の研究活動、教育活動を常にリードされてこられました.自動車工学分野における抜群の業績に加えて、日本機械学会交通・物流部門への貢献、社会的活動による交通安全問題・工学教育への貢献が高く評価され、複数の候補の中から部門功績賞として最適であります.
受賞理由: 原田宏先生は、東京大学大学院、トヨタ自動車、防衛大学校において一貫して自動車工学の研究を行ってこられました.研究内容は多岐にわたりますが、振動騒音、乗り心地性能、操舵性安定性、シャシー制御に関して多数の論文を執筆し、特許を取得しておられます.このような一貫した分野で研究されてきた内容の基礎的な部分を、「自動車技術者のためのビーグルダイナミクス」(産業科学システムズ)という大部な教科書にまとめて昨年出版されました.機械工学の基礎分野と異なり真にオリジナルな教科書と呼べる書籍が英語を含めても非常に少ない自動車工学の分野において、この教科書は正に自動車技術者、自動車工学研究者が熟読玩味すべき書物になっています.
研究者としての自動車工学分野における抜群の業績に加えて、このような稀有な教科書を執筆されたことが高く評価され、業績賞に最適な方であるとの結論になった。
受賞理由: 景山先生は,当部門において発足当時から技術委員会委員として積極的に活動を盛り上げてこられ,第二技術委員会委員長を始め,部門大会実行委員長,部門長を歴任される中で,現在の部門活動の基礎を作ってこられたことは,周知のことと思います.研究面での功績も,操縦安定性分野において,メインとなる車両の運動解析はもちろん,運動の元となるタイヤの力学から,最終的に判断を下すドライバーの人間特性まで,操縦安定性全般に渡る幅広い領域で多くの研究成果を発表しておられます.誠実な人柄とも併せ,功労賞を受賞されるにふさわしい方と確信致します.
受賞理由: 岡本勲氏は,鉄道車両の台車設計及び新方式台車の開発に多くの業績を上げ,車両の軽量化・鉄道の高速化に大きく貢献した.
今では一般的になった軽量ボルスタレス台車の開発に当初から携わり,新幹線電車で最初にボルスタレス台車が採用された300系では,台車諸元の選定から実用化に至るまで中心となって開発を進めた.また,在来鉄道の高速化にも取り組み,振子車両の開発では,制御付振子車両,特急振子気動車の実用化やコロ式振子のローラーベアリングへの改良など多くの業績を残している.このほか,既に北海道で営業運転を行っている283系特急気動車では,制御付振子とともにボギー角連動操舵台車を実用化した.現在軌間可変電車(FGT)の実用化に向けた研究開発を指導的立場で進めている.
(社)日本機械学会では,フェローとして後進の指導・学会活動にも貢献している.
受賞理由: 安部正人氏は,自動車の運動と制御の分野においてこれまで一貫して研究を行っており,この分野の指導的な立場として学会等の活動を行っている.
この成果をまとめた同氏の執筆した「自動車の運動と制御」(山海堂)はこの関係の研究者に広く愛読されている.
また,現在車両運動・制御関係の国際会議として,IAVSD並びにAVECが挙げられるが,同氏はIAVSDでは理事として,AVECでは創設時からの主要メンバーとしてご尽力されており,これらの活動を通じて自動車の運動関係に与えた功績は非常に高く評価される.
受賞理由: 略歴が示すように,交通・物流部門発足前後の数年間,部門の立ち上げ企画運営に携わり,部門活動の基礎を定着させた.また,機械学会主催の高速鉄道に関する国際会議の組織・実行委員会,各種研究分科会の委員・主査を歴任し,部門の活性化に貢献した.
特に,鉄道車両,磁気浮上式鉄道,自動車等の車両工学に関する数多くの研究論文を日本機械学会論文集,JSME International Journalに発表し,また数多くの専門書や解説を通して,車両工学の発展に多大の業績をあげている.また,部門大会に多くの学生を発表させ,優秀論文講演賞を4件受けるなど,若手の人材育成・研究教育面で多大の業績をあげている.
受賞理由: 可変ギヤ比ステアリングシステムの研究・開発を通じて,車両の低速走行時,高速走行時及び旋回において,安定したハンドル操作が行える方法を提案し,理論解析にあわせて所要のギヤ比特性が具現化する基本機構を提案した.また,設計,実験と改良を重ね,多数の論文を発表すると共に,本システムを量産車両に世界で初めて搭載した.
この技術は21世紀の車両研究に対して一つの方向性を示すものであり,ステアリングギヤ比は一定という自動車誕生以来の考え方から脱却して,人間の操作とそのシステムの最適化に対して根本的な提案をすると共に実用化を行ったもので,交通・物流分野の技術における大きな業績である.
松本陽氏は,車輪/レールの相互関係に関する実験的研究,理論的研究を進めて成果を広く発表し,車両技術のみならず軌道を含む鉄道技術の発展に大きく貢献した.また,鉄道技術のダイナミクス,都市交通システム等に関する講演などを通じて積極的に情報発信を行い,部門の活性化に努めた.
一方,鉄道技術に関わる機械工学,電気工学,土木工学の各分野の研究者が一同に会して発表・討論をする場を作るため,電気学会,土木学会等の他学会との調整を図り,3学会共催で第一回鉄道技術連合シンポジウムを初代委員長として開催すると共に,継続的に開催する基盤を築いた.このほか,第二回部門大会実行委員長,第72期部門長,評議員,関東支部商議員等を歴任し,学会及び部門活動に各方面で貢献した.
日本ダンロップ護謨株式会社の研究課長として多くのタイヤ特性の研究を行い,またその後,財団法人日本自動車研究所の部長として多数の新鋭タイヤ試験機を試作し,これを使用した多くの実験的研究及び理論的研究を,日本機械学会,自動車技術会,SAEなどに発表して,タイヤ工学および自動車の操縦性安定性の進歩発展に大きな貢献をした.さらに,「タイヤ工学-入門から応用まで」(グランプリ出版)を著すとともに,日本自動車研究所部長及びその後就任した大阪産業大学教授として上記研究分野において多くの後進の指導育成に寄与した.
佐藤真実氏は,㈱本田技術研究所において,ABSの黎明期よりその研究に着手し,日本メーカとしては初の4輪ABSの開発に成功,量産化してABSの普及に貢献した.更にFF車としては世界初のトラクションコントロールシステム,及び電動4WSを開発・量産化した.また,上記をはじめとする新技術の研究・開発の過程を通じ,車両運動制御の分野における技術の向上と後進の育成に寄与した.日本機械学会においては第2技術委員会幹事,交通・物流部門大会オーガナイザ,研究協力部会RC141分科会委員などとして,日本機械学会の活動に貢献してきた
松川安廣氏は,㈱日立製作所において,長年クレーン構造物の設計業務に携わると共に業界の技術的中核として業界の発展に貢献した.
昭和41年には,当時として国内最大級のゴライアスクレーンを完成させた.ここで初めて下面開放形ボックス構造を採用し,カルマン渦に対処したパイプ構造の適用,クレーン構造物の風洞実験などを学会に発表して大型クレーン構造物の基本的手法を確立した.
また,国内各種クレーンの実働荷重実測を行い,学会への発表を通じて,現在のクレーン疲労設計基準の確立に貢献した.さらに,現在のJIS B8821(クレーン鋼構造部分の計算基準)のベースとなっている日本機械学会の基準作成委員として大きく貢献している.
西村誠一氏は永く鉄道車両の研究・開発に従事し,絞りにより振動減衰を与えた空気ばねの力学モデルの定式化と防信設計指標の確立などの成果を挙げました.また,それを実現する特殊ダイヤフラム型空気ばねの発明は東海道新幹線び高速台車を実現し,その後幅広く普及しました.その他にもコロ式自然振り子方式の発明など,数々の研究・開発を行い,現在も教育と研究に貢献されておられる氏を推薦致します.
林 靖享氏は,自動車の運動と制御システムの理論開発に長年取り組み,自動車産業の中に人間機械系を考慮した制御系設計の支店を浸透させた.1979年には本会計測自動制御委員会委員として自動車と飛行機の制御に関する調査研究を実施し.1985年には,先進車両研究の分野で他学会とも協力し,次世代に向けての人間自動車環境系の最適化を追求する研究を指揮した.1991年には社内の車両系研究部担当取締役部長として研究の指導を行い,その研究成果を広く社会に発信すると共に,学会に関係する研究者の教育,啓蒙活動にも注力されている.
以上のように,自動車の運動と制御の観点より車両の安全性と快適性を高め,車両制御技術の開発に大きく寄与した同氏が交通・物流部門の進展,活性化に多大な貢献をされていることが,推薦の利用である.
田中眞一氏は,高速鉄道システムにおいて,その安全性に最も重大な関係を持つ車軸強度の研究に長年取り組み,その実態を明らかにし,疲労寿命を合理的に評価する手法を確立した.今日見られる高性能車両の開発もこの研究成果の適用によって可能となった.これらの研究成果に対しては数多くの賞が贈られている.
本会に関しては多くの論文,講演論文を発表し,車軸強度設計に関する公表論文の大多数に関与した.また,評議員,理事,副会長を歴任したほか,学会に関係する研究者の教育,啓蒙活動に注力されている.
以上のように,同氏が交通・物流部門の進展,活性化に多大な貢献をされていることが,功労賞の贈呈理由である.
得田与和氏は,交通全体のシステムの研究・開発に長年取り組み,自動車産業の中に高越の視点の重要性を浸透させた.1972年には,新交通システム構想「日産ALLシステム(Area and Line Linkage System)」を提唱し,建設省プロジェクトのデュアルモードバスシステムの開発にチーフエンジニアとして参画した.1985年からは,先進的車両研究の分野で,次世代に向けての快適な移動を追求する研究を指揮した.1991年には,社内に交通研究所を設立,初代所長として研究の指導を行い,その研究成果を広く社会に発信している.本会に関しては,論文の投稿をはじめ,評議員4期,交通・物流部門委員2期を歴任された.
以上のように,同氏が,交通・物流部門の発展に多大な貢献をされていることが,功績賞の贈賞理由である.
寶田直之助氏は,浦賀船渠(現住友機械工業)で船舶設計・研究に従事し,その間に超大型及び半潜水式など様々な海洋構造物の研究,舶用超電導電気推進システムの開発等を行った後,大学において船舶・海洋構造物の設計の研究と教育に従事し,後進の指導にあたった.また,浮体構造物や,高速船などの最新技術の開発を積極的に推進するなど船舶・海洋工学において指導的立場である.
以上のように,同氏が交通・物流部門の技術開発,教育,研究において多大な業績を残されていることが,業績賞の贈賞理由である.
松井信夫氏は,日本機械学会理事,評議員,分科会委員長等の重責を全うし,特に鉄道車両の研究・開発への貢献は大きい.国鉄時代に国鉄,メーカーの若手台車設計者の勉強会を主催し,「多自由度モデルによるボギー車の蛇行動解析,計算の方法」の普及に努め,その時の成果が現在の各社の技術力の基礎となっている.
特に,本部門の母体の一つである交通機械技術委員会時代に車両力学に関する研究分科会(P-SC64)の主催として活動するなど本部門への貢献も大きい.
上記の如く,同氏が交通・物流部門の発展に多大な貢献をされていることが功績賞の贈賞理由である.
伊藤 廣氏は,静的解析により行われていた移動式クレーンの設計に動的解析を導入した.本設計理論は我国の移動式クレーンの設計技術を世界のトップに押し上げる原動力となると共に,移動式クレーン以外の運搬機械,産業車両等にも幅広く追うようされるきっかけとなった.本会に関しては,40編近くの論文,50変位上の講演論文を発表し,クレーンに関する公表論文の大多数に関与したことになる.また,学会に関係する研究者,設計者の教育,啓蒙活動にもつゆ力されている.
以上のように,同氏が交通・物流部門の発展に多大な貢献をされていることが,功績賞の贈賞理由である.
宮本昌幸氏は,下記略歴のごとく,鉄道車両の運動陸学を中心とした研究に従事され,数多くの論文を発表,鉄道車両工学全般の研究.開発に指導的な役割を果たしている.本会に関しては,交通機械工学委員会の委員長をされ,運搬工学委員会との統合を行い,新たに交通・物流部門を設立し,初代の本部門運営委員長に就任,部門の活性化,発展に大きく貢献された.また,鉄道高速化国際会議STECH’93の組織委員会の幹事をされ,企画畝異の通信的役割を果たし,会議を成功に導く原動力となった.以上のように,同氏が交通・物流部門の発展に多大な貢献をされていることが,交通・物流部門功績賞の贈賞理由である.
渡辺英紀氏は,下記略歴のごとく,一貫して高速エレベータ用電動機制御装置の開発に携わり,さらにエレベータ全体の開発に従事し,これらの成果を日本機械学会,電気学会を含め数多くの学協会に論文として発表している.
代表的な成果は,1974年新宿住友ビル向けの当時国内最高速乗用得れべー家に速度フィードバックと電送機の電流をフィードバックして電送機の非線形性をキャンセルする制御装置を開発し,巻き上げ機に適用する電動機の小型化と制御性能の向上をはかった.1977年にサンシャイン60ビル用乗用エレベータ開発時にチーフエンジニアとして,新たな制御技術を導入し当時世界最高速(600m/min)を実現させた.また日本で初めてのサイリスタレオナード方式エレベータやVVVFインバータ方式高速エレベータの開発を行った.1993年横浜ランドマークタワーに設置された乗用エレベータ(世界最高750m/min)では世界最高速エレベータ用VVVFインバータ,振動・騒音抑制技術,安全装置等の開発部長として活躍した.
このように同氏はエレベータの発展,特にその高速化に指導的役割を担い,交通.物流分野に多大な業績を残しており.交通・物流部門業績賞に値するものである.
川田章夫氏は下記略歴のごとく,産業界において一貫して,荷役運搬機械の設計・開発業務に従事され,戦後の復興期から今日に至るまで,港湾を始めとする各種荷役運搬設備開発で常に指導的立場で活躍される.特に立体自動倉庫を始めとする物流システムに近代化にも多大の貢献をされ,1986年には港湾荷役機械化協会から貢献賞を授与されている.また本会に関しては,本部門の前身である「荷役及び運搬機械部門委員会」委員長,「荷役工学委員会」委員長を3期務められ,中国地区評議員1期,評議員2期,さらに分科会主査としてJIS機械制定に関与し,物流分野の発展に多大の貢献をされた.以上のように交通物流分野の進展と部門活動に同氏が多大の貢献をされている事が,交通・物流部門功績賞の贈賞理由である.
井口雅一氏は,下記略歴のごとく,車両工学,交通システムを中心とした研究と教育に従事され,下記の学協会などで数多くの論文や著書を発表されている.また自動車工学,新交通システム,鉄道車両工学,磁気浮上鉄道,道路交通システム,人間機械系に関する研究・開発に指導的役割を果たしている.本会に関しては,交通物流部門の前身である交通機械工学委員会の委員長をされ,理事,評議員としても貢献され,国際会議AVEC92(本部門協賛)の総括委員長,STECH’93(本部門主催)の実行委員長として国際化に貢献している.また運輸技術審議会委員として我国全体の交通物流に関する技術向上に取り組まれている.以上のように交通物流分野の進展と部門活動に同氏が多大の貢献をされている事が,交通・物流部門功績賞の贈賞理由である.
赤木新介氏は,下記略歴のごとく,産業界で船舶設計やシステム開発に従事された後,大学において交通機関論やシステム設計工学の新分野の研究と教育に従事されている.それらの成果は,日本機械学会を始め関西造船協会などの関連学協会で,数多くの論文と著書を発表されている.代表的著書として,交通機関論(1971),設計エキスパートシステムの基礎と応用(1990),設計工学(1991)などである.当部門は陸・海・空の交通と物流に関して幅広い分野を対象としており,同氏は交通機関論やシステム設計論に関する論文や著書,或いは高速化と交通機関に関する講演等を通じて,この分野の指導的役割を果たしている.以上のように交通物流分野の技術開発・教育研究において多大の業績を残されている事が,交通・物流部門業績賞の贈賞理由である.