目次へ戻る   


すぐ撮れて残せる時代だからこそ

東北学院大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 2年
本田 渉悟

 私はよく人に多趣味だと言われる。そんな中、興味はあるけどまだ足を踏み入れることができないでいた趣味が写真であった。いつか自分のカメラを持ってみたいと思っていたが、最近はスマートフォンでもコンデジ顔負けの綺麗さで撮影でき、思い立った瞬間に手軽に撮影可能である。かといって、一眼レフはレンズも設定も色々あり過ぎて、持ったところで使いこなせないと考え、結局趣味にできないでいた。そんな中、祖父母宅を訪れたところ、とあるメーカーのレンジファインダー式カメラを見つけた。ここでは、フィルムカメラを始めて思ったことを書かせて頂いた。
 フィルムカメラへの馴染みは、私が小さい頃、成長の記録を撮るためにコンパクトフィルムカメラを親が一時期使っていて、そのレンズカバーを壊して怒られた程度しかなかった。なので、マニュアル車や機械式の腕時計といったアナログな機械が好きな私としては、手にしたときはワクワクが止まらなかった。経年劣化はあるとはいえ、写真を撮れる状態で大切にしてくれていた祖父には感謝しかない。経年劣化している箇所も、カメラ屋曰く修理できるということだった。こういうところがアナログなものの良いところだと感じた。
 24枚撮りのコダックのフィルムを入れ、試しに一枚撮ってみる。シャッターを押すと、パシャンッというデジカメのシャッター音とは違う気持ちいい音がする。その後は、色々なものを撮ってみたいと思い、あやめを撮りに行ったり、空港に飛行機を撮りに行ったりした。デジカメと違い、フィルムには撮れる枚数に限りがある。さらに最近はフィルムの値段も高騰しており、36枚撮りでも一本2000円近くもする。なので、一枚一枚緊張する。そして、構図やシャッタースピードも考えて、「これでいいだろ!」となってやっとシャッターを押す。スマホだったら、「とりえずいっぱい撮って、いいのがあればいいか」と数打ちゃ当たるだろうで撮ってしまうだろう。そして撮れた写真もスマホならその場で確認できるが、フィルムだと一本フィルムを使い切り、現像してもらうまでどのように撮れているか確認ができない。このわくわく感が、たまらない。そして現像されて出てくる写真は補正も入っておらず、ブレているもの、白飛びしてしまっているものもそのまま出てくる。次はシャッタースピードを遅くしたらどうなるだろうかなどと考えるのもまた面白さである。
 近年、デジタル化によって写真というものが気軽に誰でもそこそこきれいに撮れるようになったと思う。そういう便利なものが身の回りに多くなったからこそ、自分でピントとしぼりを合わせて、撮った写真はすぐ確認できないという不便さが、私の記憶に思い出をより鮮明に残すきっかけになっている気がする。





目次へ戻る