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エンジニアの使命

岩手大学大学院 総合科学研究科 理工学専攻 機械・航空宇宙コース 1年
多田智朗

 この夏、ついに私の就職活動が始まった。

 私は幼少期から宇宙開発やDXなど科学技術の発展に心を躍らされ続けられた。

 私も未来の技術にいち早く触れたい、あわよくば開発に携わりたいと思い機械工学分野を専攻した。最近では就職活動中の今、自分が将来何になりたいか、今まで以上に考えるようになった。私は、発明家と呼ばれるような次々と新しい製品や技術を開発するエンジニアになりたい思った。社会にイノベーションを起こすことがエンジニアの理想であり使命でもあると考えていたからだ。

 そうした中でこの夏、私はインターンシップで東京を訪れた際に、時間を潰すため上野の美術館に立ち寄った。たまたま入った美術館では、長坂真護さんの電子ゴミ(e-waste)を使用して作られた作品が展示されていた。

 長坂真護さんは世界中の電子廃棄物が集まる、ガーナのスラム街“アグボグブロシー”で起きている貧困と環境問題をアートの力で変えようとする芸術家である。私は、ガーナで起きているこの問題自体は何となく知っていたが、遠い国のできごとであり、また比較的リサイクルが進んでいる日本に住んでいることから他人事のように思っていた。しかし、展示していた作品に使用されている電子ゴミの多くに見慣れた日本企業のロゴマークがついていた。私にとって、この事実は衝撃的であり、日本が全く関係ないという事はなかった。

 この時から、私は単に新しい何かを生み出したいといった考えはなくなった。

 設計開発の序盤だけではなく、廃棄処理といった終盤までを考慮してモノづくりを行うことがエンジニアとしての使命であり、自分もそのようなエンジニアになりたいと想うようになった。







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