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味のある人生

福島大学 共生システム理工学類 4年
島倉直広

 2021年。今年もコロナウイルスに縛られることの多い1年のとなった。正直この1年はコロナがなければと考えることが多かった。しかし,このコロナ禍であるからこそできた代えがたい経験もできたと思う。今回はその経験について述べていきたいと思う。
 私は大学での4年間,陸上競技部に所属していた。多くのたいせつな仲間たちと切磋琢磨し,非常に充実した毎日を過ごすことができた。そして今年,最大の目標であった全日本インカレの出場権を4年目にしてようやく掴むことができた。その一瞬は映像の様に思い浮かべることができるし,今後も忘れることはないだろう。これまでの4年間はありがたいことに良い思い出が多いのだが,当然辛いことも,思い悩むこともあった。そんな良いことも悪いことも,これまでやってきたこと全てが報われたように感じた。
 ところが,コロナの影響で,大学側から大会の出場の許可が下りなかった。許可を得るために,思いつくことはすべてした。多くの人が僕たちのために動いてくれた。結局許可は得られず,大会に出ることは叶わなかった。大学側も,僕たちのことを考えてくれた結果の決断であるので,仕方のないことである。しかし,それから数日間は,なかなかその現実を受け入れることができなかった。もちろん,僕らが大会に出ることができなくても大会は普通に行われるし,その後も何事もなかったように時間は進み次の日がやってくる。そう,どんな悔しいこと,悲しいことが起きたとしても時は待ってはくれない。思うようにいかないことがあっても次の一歩を踏み出さなくていけないのだ。過去のことを振り返ってもその日が戻ってくるわけではないし,悲しくむなしいだけである。
 とは思っていても,恥ずかしいことに今でも,このことを思い出して悲しくなってしまう瞬間もある。たまには許してほしい。そこで,僕はこのことを思い出すたびに超ポジティブにこう考えるようにしている。大会に出ることができなかったからこそ,あれだけの多くの人の優しさに触れることができたし,色々な人の考え方を知ることができた。なんなら,この経験がこれからの自分の人生の大きな原動力になるかもしれないと。そしてもうすでに,この経験がコンパスに書くネタを提供してくれている。そう,僕は過去を振り返っても仕方がない,むしろこの経験を次に生かすべきだと学ぶことができたのだ。
 これは研究でも同じことが言えて,基本的に研究は思うようにいかないことの方が多い。実際に4年生になって研究の結果が出なくて行き詰る経験を何度もしている。上手くいかなくても上手くいくために頭を使って考え得る行動をやってみるしかない。それでダメでも落ち込んでいる暇はない。残酷にもその間も時間は進んでいくのだ。
 僕は来年大学院に進む。不安なことは山ほどある。躓くこともあるだろう。それでも進むしかないのだ。人生上手くいくことばかりではつまらない。まだ22年しか生きてないのに何一丁前なことを,と思う方もいるかもしれないが,人生は山あり谷ありだから面白いのではないか。タイトルにもしたように,このような経験を繰り返し,乗り越えて,味のある人生を送っていきたい,と今は思っている。







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