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コロナ渦における医療現場の感染防止へのアプローチ

鶴岡工業高等専門学校 専攻科 生産システム工学専攻 2年
齋藤浩輔

 新型コロナウイルスの影響によって,私の専攻科での2年間は大きく変化した.本科の卒業式が中止となり,専攻科の入学式はおろか4月の始業が見送られ,全面遠隔授業という対応となった.そんな中,友人の一人が自宅の3Dプリンターを用いてマスクを創作していたが,それを学校に提供したいと考えるようになった.そこで当時の橋校長先生に活動許可をいただいたのち,私も加わり計3名で活動を開始した.そのような中で高専機構よりフェイスシールドのプロジェクトが持ち上がり,マスクからフェイスシールドに切り替え,試作検討を行った.
 当時は全国に緊急事態宣言が公布され,全国でマスクやフェイスシールドが不足している状況であった.特に医療機関では医師へのフェイスシールドは供給が間に合っている一方で,看護師や外来受付に従事している方への供給は間に合っていなかった.よって,その方々に向け「飛沫感染を防ぐ形状であり,短時間で手軽に制作できるフェイスシールド」が必要とされていると考え,それらの点を満たすフェイスシールドの作成を目指した.
 フェイスシールドの提供を目指すにあたって,必要とされる個数が数百個という単位での製造が必要であり,現状の3Dプリンターによる製造では時間が足りないという問題に直面した.設計改良を加えたところ,1つ当り20分程度での造形が可能となった.しかし少数の3Dプリンターでは生産数に限界があるため,代替手法としてレーザーカッターによる加工を検討した.加工データは山形大学大学院の川上准教授に提供いただいたデータを用いて,それを本校のレーザーカッターの仕様に合わせ条件や設計変更を行うことで,1つ当りの加工時間を5分まで短縮した.
 その結果,55個を鶴岡市内の医療機関である荘内病院へ,市内の小学校へ10個の計65個を提供した.実際に使用した方より「あごまで覆う構造であり,非常に安心感がある.」とのコメントを感謝の言葉とともに頂いた.一方,「長時間の使用は大変」との要望も頂いた.これらを踏まえ,額に当たる部分にウレタンを用いるなどの改良を行ったものを本校の学校行事向けに400個提供した.
 これらの活動を通し,私たちの気持ちを具現化し相手に喜んでいただくことの嬉しさ.グループで取り組むプロジェクトの難しさ等,実践的なものづくりの大変さを体得した.また,目標に向け適宜試作や検討を重ねるという経験は研究活動だけでなく,社会に出た後も活かせる貴重な経験となった.
 最後になりますが,この活動を進めるにあたりまして,フェイスシールドのデータ及びポリカーボネートシートをご提供くださった山形大学大学院の古川英光教授,川上勝准教授,帝人株式会社様にこの場をお借りして御礼申し上げます.







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