会心の一撃
一関工業高等専門学校 専攻科 生産工学専攻 2年
千田晟也
皆さんは,読書は好きだろうか.私にとって本とはなくてはならないものである.今回電子コンパスの執筆依頼を受けたとき,自然と本について書こうと思った.これまでそういった機会がなかったというのもあるが,書くことで自分の中の考えをまとめたかったという気持ちもある.拙い文章で読みにくいかもしれないが最後まで読んでくれると幸いである.2020年は自分にとって,人との関わり方を学ぶことができた年だった.今回は,個人的な出来事と新型コロナウイルスによる社会的変化の二つの出来事を通して学んだ人との関わり方について述べたいと思う.
私は小さいころから,小説やライトノベル,漫画などジャンルを問わずたくさんの本を読んできた.小,中学生の頃は学校の図書室に入り浸っていたし,高専に入ってからは自分のお金で本が買えるようになり,お小遣いのすべてを注ぎ込み蔵書を蓄えていった.もちろん,誕生日やクリスマスプレゼントは毎年図書カードだった.
そんな私ではあるが,国語の点数が高いわけでも,スピーチ力があるわけでもない.ましてや,文章を書くのが得意というわけでもない.数多の本を読んできてはいるが,芥川賞や直木賞などの受賞作品を読んでみても,物語としては面白いがはたしてなんでこの作品が賞を取ったのかがわからない.私には言葉の使い方や選び方,文章構成など作者の個性や特徴といえるものの違いがわからないのである.
では,何が楽しくて本を読んでいるのかと疑問に持った方もいるだろう.私にとってその本の良し悪しを決めるのは,たったの一文,もしくは一節である.登場人物のセリフでも,状況を説明する文でも,最後の一文でも構わない.その一文,もしくは一節がどれほど自分の心を揺さぶり,余韻に浸らせてくれるかが重要である.そのため,たとえ受賞などしていなくても,その会心の一撃ともいえる一文があるだけで,私にとってはどんな作品も名作になるし,本を読み続ける理由にもなる.
私は来年から社会人になる.これまで以上にたくさんの人たちと関わっていくことになるだろう.もしかしたら,その中で感じ方や考え方が変化するかもしれないし,年を重ねるにつれて作者の個性がわかってくるかもしれない,逆に一生わからないままかもしれない.この先たくさんの変化がある中で,ひとつ変わらないことがあるとするのならば,私は死ぬまで本を読むのをやめないだろうということだけである.
最後に,私が22年間本を読んできて出会った名作たち7選を紹介して終わりにしたいと思う.なかには児童向けの作品もあるが,もし気になったのがあれば手に取っていただけると幸いである.
『ダレン・シャン』(ダレン・シャン著,橋本恵訳,小学館ファンタジー文庫,2006年)
『宇宙への秘密のカギ』(ルーシー&スティーヴン・ホーキング著,さくまゆみこ訳,岩崎書店,2008年)
『空の境界』(奈須きのこ著,講談社文庫,2007年)
『図書館の魔女』(高田大介著,講談社文庫,2016年)
『水車館の殺人<新装改訂版>』(綾辻行人著,講談社文庫,2008年)
『氷菓』(米澤穂信著,角川文庫,2001年)
『アリス殺し』(小林泰三著,創元推理文庫,2019年)
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