道は続くよ,どこかまで.
東北学院大学大学院 工学研究科 機械工学専攻 1年
川崎統孔
「くもがみずをのみにきてるよ!」
幼いころの私は,地平線に浮かぶ雲を見て,そう言ったそうだ.横に長く伸びる,大きな雲の先が偶然地平線に隠れていて,それがまるで首を曲げて海の水を飲んでいるように見えたのだろうと母は言っていた.まったく,我ながら笑ってしまうほど想像力の豊かな子供だと思う.今,たとえ同じ景色を見ても,そんな言葉は出ないだろう.
もし,そんな幼いころの私に,今の私自身を見せることができたのなら,いったいなんと言ってくれるだろうか.どんな言葉で,今の私を表現してくれるだろうか.
これまでの道のりの中で,うまくいったこともあれば,そうではなかったこともある.人としても,まだまだ未熟である.それでも,少なくともこれまでの過去の私に胸を張れるように,歩んできたつもりだ.
成功を目指して日々努力した.それでもうまくいかず失敗することもあった.勝負事では,あと一歩のところで負けてしまったこともある.なにもかも投げ出してしまいたくなるときもあった.それでも,すべてが無駄ではないのだと自分に言い聞かせ,少しでも善くなることを目指して歩んできた.そして,私はそれまでの過去の私に感謝しながら,すべての想いと経験を糧にして,
「俺は今,ここにいるぞ!」
と私に叫ぶのである.そんな私を,幼い私は認めてくれるだろうか.そんなことを想いながら,私は今日も歩み続けている.
足がもげたら手を使って歩むだとか,手がもげたら這ってでも進むだとか,そんな物語みたいなことを言うつもりはないし,そんなことが起きることもないだろう.刺激的でもなく,喜劇的でもなく,ましてや悲劇的でもない.ただ粛々と歩いていくだけのことである.どこへたどり着くかは分からない.どこかにたどり着き,何者かになることができるのかさえ,分かりはしない.しかし,それでも歩み続けることだけは決してやめてはならない.
「過去」に学び,「未来」を見据えて,「今」を踏みしめるのである.いつか,訪れる「終わり」の瞬間まで,歩み続けるのである.
もし,いつかの私がこれを読み返してくれているのなら,今の私よりもずっと先へ進んでいてくれることを切に願う.
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