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5年間で積み上げてきたもの

福島工業高等専門学校 機械工学科 5年
渡邊陽斗

 私はまだ何についての文章を作成しようか決めてもいないのだが、締め切りぎりぎりに提出することになるであろう高専5年間の集大成である卒業論文を後回しにして思いつくままに文をつづっていこうと思う。というのも、成人式の余韻がまだ冷めない中、日課の昼休みのバレーボールを終えて疲弊した身体で、担任かつ研究室の先生から届いていたメールを見た時に感じた「焦りと不安」により体内で爆発的に生成されたアドレナリンに身を任せてPCに向かっているのである。
 そのメールの内容というのはご存じの通り「機械学会に提出する原稿を明日までに書いてくるように」というものだった。「機械学会」、「明日まで」という言葉に高専での5年間の生活で何度となく味わってきたパニックと呼ばれる生理現象が私の脳内で発生した。今まで、テストでノーマークの問題が出た時も、終電にぎりぎり間に合うかどうかの時間に自転車のカギを草むらに落として見失った時も、友人が近くにいるのに気づかずその友人への不満を漏らしてしまった時も、明晰な頭脳、強靭な肉体、的確な判断力、天性のコミュニケーション能力を駆使してパニックを乗り越えてきた。今回の自分のパニックを鎮めてくれたのはそのどれでもなく過去の「電子コンパス」の作品たちだった。パニックという名の怪物を「古の電子コンパス」という武器で封印し、自我を取り戻した私は「自分も今後急に文章作成を依頼された子羊たちの救いになるような文章を残したい」という思いでここまで言葉をつないできた。それももう限界のようだ。脳は完全に卵状態となり思考力は落ち始め、意識も朦朧とし始めた。きっと私の無意識がこの作業に飽き始めたのであろう。おっと失礼、卵状態というものがどういうものかまだ説明していなかった。勘のいい人なら理解をしてくれているだろうが、意味が気になる人は菓子折りをもって私を訪ねてほしい。
 最後に私が言いたかったことをまとめる。この5年間は「今までで一番楽しい」を更新し続けるような幸福な日々の連続であった。







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