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ものづくりから得たこと

東北大学大学院 M1
北原 匠

 大学受験を経て,工学部に進んだ学生の中には,ものづくりサークルに所属したことがあるという方々も多いと思われるが,私もその例に漏れず,人力飛行機製作チームに所属していた.このようなサークルに入る理由としては,「何かを自分の手で作ることが好き」であったり,「ものづくりを通して工学部生として成長したい」であったりと,人によって様々であると思われるが,私の場合は高校時代に,湖の上を飛び続ける人力飛行機の姿をテレビで見て,もっと近くでその姿を見てみたいと思ったことがきっかけであった.そういう点では,設計やものづくりについて学ぶために入った学生に比べると,浮ついた気持ちでチームに入ってしまったのかもしれないが,知識だけでなく,チームでの活動やものづくりに対する考え方について,重要なことを学べたと感じている.


 私の所属していたチームは学部1年生〜3年生で構成されており,1年生が機体の製作メンバーになるのは,夏の大会で3年生が引退してからであった.したがって,1年生の夏から2年生の夏までの1年目で先輩から製作方法を教わりつつ,実際に機体を製作するという経験をして,2年生の夏から3年生の夏までの2年目で後輩を指導しつつ,チームを運営していくという仕組みであった.これらの期間において,特に2年目の活動が,自分の考え方に大きく影響を与えたと感じている. 


 学生チームという特性上,毎年部員の入れ替わりが存在する.そのため,製作や運営におけるノウハウを引き継ぐことが必要不可欠となるが,この引き継ぎにおいて,「次の年のことだけを考えてはいけない」ということが特に重要であると感じた.というのも,過去に実施していた製作方法を,自分が2年生のときに実施しようとしたところ,引き継ぎが十分になされていなかったために,OBの先輩方に連絡を取り,作業場に来てもらい,教えていただいたというケースがあったからである.実際に見て学ぶ・学ばせるというプロセスは確かに重要であるが,それ以上に「誰が読んでも理解できるような書類を作成して引き継ぐ」ということが,ノウハウを失わないためには必要不可欠であると感じた.特に,1年ごとにメンバーの入れ替わりが存在するチームにおいては尚更である. 

 このことは,現在の大学院での研究でも言えることで,「過去にこのような実験を行い,このような失敗があった」といったことをレポートや実験ノートといった,形のあるものとして残すことは,同じ失敗を繰り返さないために重要であると言える.

 人力飛行機を近くで見たいという浮ついた気持ちでチームに入った私であったが,チームの運営に携わり,実際に自分たちの手で製作した機体が離陸していく姿を見届けたことを通して,工学を専攻する学生として多少なりとも地に足がついたように感じている. 







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