ヒトの歩行特性の研究について
福島大学大学院 共生システム理工学研究科 1年
椎貝賢太
私は福島大学大学院の材料システム設計研究室に在籍し,片持ちはりの特性を利用した計測装置による歩行踏力解析とその結果による靴の設計について研究をしています.高校では機械加工を,学部では機械工学やメカトロニクス全般を主に勉強していたので現在このような研究をしている自分に若干驚いています.
研究で使用している先行研究で開発された計測装置(図1)は複数のピンで構成されている接地型の計測装置で,4×13本の各ピン上に生じる垂直方向踏力Wp,水平進行方向踏力Wm1および水平側方方向踏力Wm2の動的な計測を行うことが可能です.現在よく用いられる踏力計測装置として足圧中心からの3次元踏力を計測するキスラー社のフォースプレートや足圧を分布として計測するニッタ社のF-スキャンなどがありますが,本研究で用いる計測装置は図2のように足裏全体の3次元踏力を分布として計測できる特徴を持っています.
現段階では計測装置自体の検証は大まかに終了して,そのデータから靴底設計に用いる指標を検討しています.靴設計において機能性を過剰に備えてしまうと重量を増加させてしまうほか,耐摩耗性という点では靴底材料に比較的硬度の高いものを使用するため,衝撃緩衝性という点で相反してしまいます.そのため,計測装置の計測データの結果から指標を用いて個人の歩行特性の考察し,機能性を制限しつつ軽量化を行うことが必要となります.
ものを作ることが好きで靴の設計という点に惹かれこの研究を続けていますが,最近は今までの自分がやってきたことの中でも多く取り扱わなかったヒトの特性の計測の難しさを実感しています.靴の製作という点では,対象者個人の特性を計測した際,そのデータを見てどのように変化させるか検討する必要があり,そのために多くの人のデータや過去の文献や報告とにらめっこしていることも多々あります.データを収集する際にも,計測装置の環境や対象者の心理的な影響が生じる可能性もあります.例えば,計測装置の計測範囲が小さいと対象者が歩幅を計測範囲合わせるため計測データに影響が出てしまうこともあります.これらの影響を除去するか,考慮するかなども割り切りを付けていく必要があるので今後勉強を頑張っていきたいです.
今後は機械設計に関する業務に就きたいと考えています.機械工学もバイオメカニクスも知識の取得に多大な時間が必要になりますが,面白さを見出して,息抜きしつつ,しっかり勉強していきたいと思います.
図1 歩行踏力計測装置
図2 床反力分布図(踵接地から0.5秒後)
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