三次元設計製図
八戸工業高等専門学校 専攻科機械システムデザインコース 1年
木村 哲也
八戸高専の機械科五年には卒業研究と並んで皆が苦しむ授業がある.それが「三次元設計製図」である.大まかにこの授業内容を説明すると,「3DCADのSolidWorksの使い方を習得し課題として与えられた機構を製作する」というものだ.一年間通年の授業で前半はSolidWorksの使い方を学び,後半で機構を製作する.「なんてことはない」この文を読んだだけでは,そう思う人も多いだろう.しかし,この課題が終わらずに卒業が危ぶまれ,頭を抱える学生が多く存在する.そんな授業について少し語らせてもらいたい.
そもそも,どんな機構を製作するのか.毎年違った課題が与えられるわけだが,その根幹にあるのが「小中学生に機械のメカニズム・機構の面白さを知ってもらう」というものである.私の学年で与えられた課題は「可変位相直動機構」というものであった.わかりやすく言うと,1秒で1ストロークする棒が一回目と二回目でストロークするタイミングが微妙に違うというもので,これを2つのモータで稼働させる.「機構の面白さ以前にこんな機械を見て誰が楽しむんだ?」そんな議論が学生の間で毎日のようになされた.課題への疑問や不満はいったん忘れよう.
さて,実際に学生はPCに向かって設計を始める訳だが,この課題には大きな制約が3つある.1つ,稼働させるモータトルクなどが決められ,シミュレーション上でこれを満足しなければならない.2つ,本校の実習工場内で製作可能な部品しか使えない(ベアリング等規格品は除く).3つ,担当教員に機構を見せ,了承をもらう.中でも最難関が3つ目,担当教員のチェックである.一度の確認でA4表裏びっちりに改善点を書かれるのはざらである.ひどい場合には機構そのものが面白くないという理由でこれまで作ってきたものが水の泡になるのだ.運よく機構のアイデアが認められても,「これは作れない」「これは動かない」小言を言われ,怒られ,挙句の果てには呆れられる.本当に辛い.
そんな担当教員に「これはすごい!!」と言わせる機構を作る猛者が毎年一人は現れる.私も機構を見せてもらったが,ベルト,クラッチ,カム…機構という機構が複雑に絡み合い凡人の私には到底理解できなかった.
本当に辛く厳しい課題だが,終わった時の達成感や解放感は高専5年間の中でも1,2を争う.また,設計の基礎や機械要素の知識は大きな糧となる.今振り返ってみても,いい思い出は1つも無いが,やってよかったと言えると思う.
さて,そろそろ年末.今年も課題が終わらず,機械科が寝れない季節がやってくる.
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