目次へ戻る   

研究概要

福島大学大学院 共生システム理工学研究科 人間-機械システム分野2年
後藤 宏喜

 近年,急速に高齢化社会が進行するにつれて,加齢に伴う運動器疾患が増加している.現在,変形性膝関節症患者などを補助するための靴やインソールについての研究が行われているが,これらの研究の多くは疾患を患った後に使用する靴やインソールについての研究であり,疾患の予防を目的とした靴の研究はあまりされていないのが現状である.
 そこで本研究は,個人の歩行パターンに合った靴の形状設計を行い,変形性膝関節症などの運動器疾患を予防することのできる靴の開発を目的としている.そこで,靴の設計を行うにあたり,靴に作用する荷重を同定する必要がある.本研究では,靴と路面の接地面内の三次元的な踏面反力分布を計測することを目標とし,ひずみゲージを用いた靴底踏力計測装置の開発を行い,歩行時の靴底踏力の計測を行った.
 本計測装置は,プラスチック製の丸棒を台に立て固定し,歩行時にこの丸棒上面を踏むことにより丸棒下部に生じる圧縮と曲げのひずみを計測し,丸棒にかかった荷重を求める.丸棒には材料特性を考慮し,長さ50[mm],直径8[mm]のMCナイロンを使用した.また,丸棒は縦方向に20[mm]間隔で16本,横方向に20[mm] 間隔で6本の計96本を配置した.ひずみゲージは共和電業株式会社製のひずみゲージを使用した.ひずみゲージは1本の丸棒の側面に左右対称となるように2枚,このひずみゲージから90度ずれた位置に1枚の合計3枚,上端面から40[mm]の位置に縦方向に貼り付けられている.丸棒は下部に直径8[mm]のねじが切ってあり,ボルトで土台に固定されている.
 上述した計測装置を用いて靴底踏力測定実験を行った.被験者は健常な男性(23歳,身長173cm,体重61kg)1名とした.歩行時には,丸棒の上端面と床の高さが同じとなるように作製した歩行台上を歩行した.歩行距離は約4[m]とした.歩行の途中でこの計測装置を踏み,ひずみの計測を行った.
 右足の靴底踏力分布図をFig.1に左足の靴底踏力分布図をFig.2に示す.Fig.1,Fig.2ともに靴底が装置に接地した時間から0.1[s]ごとの分布図を表している.接地後,鉛直方向の踏力が小さくなるまでは各ブロックの水平方向の踏力は外側をむく傾向が両足で見られた.このことから,被験者は接地時に外側に力を入れて歩いていることがわかった.また,蹴り出し直前の図では,水平方向の踏力が内側をむく傾向が両足で見られた.このことから,被験者は蹴り出し時は内側に力を入れて歩いていることがわかった.そして,左足の0.20秒後の図において,12行目の1列目と4列目の水平方向の踏力がほぼ正反対を向いていた.これは,被験者がピンの端を踏んでしまったためであると考えられる.このことから,ピンの間隔を狭くするなどの計測装置の改良が必要であると考えられる.

Fig. 1 Sole compressive force and bending force of the right foot

Fig. 2 Sole compressive force and bending force of the left foot




目次へ戻る