プロジェクトうどん
仙台高等専門学校
豊田俊一
エーックス……
2012年9月10日
額に汗をかきながら、ベルトチェーンの前に立つ一人の男がいた。
ベルトチェーンは工場のラインにおいて欠かせない機構である。
そのチェーンが破損し、ラインが停止してしまう事件が発生した。
ステンレス
錆びない鉄と称されたその材料が、腐食し、ひびが入っていた。
学校からインターンで派遣されてきた男。
完全に破断してしまっているチェーン。
これはうどんとチェーンの関係に踏み込んだ、ある男の物語である。
デデンデデン♪ツッターン♪デデンデデン♪ツッターン♪
風の中のす〜ばる〜♪
チェーンが壊れた
砂の中の銀河〜♪
バックにある
う
ど
ん
みんなどこへ行った〜♪
原因不明の錆び
見守〜られる事も〜なく〜♪
必死に考える
地上にある星を♪
そしてとある事実に気づく
プロジェクトエックスエックスエッ……
2012年11月12日
宮城県古川市
そこにある、製麺工場が存在する。
―宮城シマダヤ株式会社―
そこにある男が派遣された。
豊田俊一
仙台高専の生徒だった。
「これが問題のチェーンだよ」
見せられたチェーンは、錆びによって茶色くなり、ひびが入っていた。
チェーンの材料は、このような環境で使用される耐食ステンレスだった。
「おかしい」
豊田は思った。
もともとチェーンの摩耗に関するテーマとして派遣されたが、これは摩耗のせいだけではないように感じられた。
研修期間は2週間
その間に答えを見つけるという、豊田の戦いが始まった。
研修が始まって3日目。
内容は煮詰まっていた。
当初、摩耗による熱や、洗浄に使用される苛性ソーダの影響が原因であるとされていた。
しかし、それだけではとても説明できなかった。
「何か他に問題があるに違いない」
豊田は現場で働く人達に聞いて回った。
初日から現場の説明をしてくれた人に、改めて何か原因と思われることはないか聞いた。
そのときだった
「うどんの塩が原因かもしれないな」
「塩か!」
豊田は思った。
宮城シマダヤでは、包装麺、特にうどんやそばを製造している。
その中で腐食が激しかったのはうどんを茹でるラインだった。
一般に海水の中ではステンレスは錆びることを豊田は知っていた。
それらが何故起こるのか調べているとき、ふと気になるワードが出てきた。
応力腐食割れ
衝撃だった。
応力腐食割れとは、主にステンレス鋼が塩素イオンなどの雰囲気中にあり、そこに引っ張り荷
重がかかるときに起こり得る脆性破壊のことである。
これだ!
うどんの原料に含まれる塩分、茹でるために高温になったお湯、ベルトチェーン特有の引っ張り荷重。
条件は揃った。
確信した。
ジャンジャンジャンジャン♪ジャンジャンジャンジャン♪
ジャーン♪ジャーン♪かたーりつぐー♪人〜もなく〜♪
その後、使用されていたステンレスが、特に高温(100度程度)においては応力腐食割れを起こす可能性が大きいこと。
以前はもっと耐食性の高いステンレスを使用していたが、原料高騰によりランクを落としていたこと。
チェーンの摩耗を減らす工夫を行うことで、チェーンの駆動時間が伸びていたことが分かった。
吹き〜ふさぶ〜風の中へ〜♪
資料をそろえた後は、報告に向けてまい進した。
紛〜れちら〜ばる星の名はわ〜す〜れられ〜て〜も〜♪
豊田の結論と解決策は
ヘーッドラーイ テールラーイ♪
材料の変更
旅は〜まだ〜終わら〜ない〜♪
報告の場では、宮城シマダヤの社長、担当者だけでなく、仙台高専の教諭たちもいた。
緊張の中、報告会は無事に
ヘーッドラーイ♪ テールラーイ♪
終わった
旅は〜まだ〜終わら〜ない〜♪
高専生の挑戦
〜応力腐食割れ うどんによって壊されたチェーン〜 END
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