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卒業

山形大学大学院

理工学研究科 機械システム工学専攻1年 宿谷 野々子

  今まで卒業なんて、私にとっては遠いものだったのに。
  高専から山形大学へと編入学し、そのまま修士課程へ進んだ私は、もう三年の月日を過ごしてしまった。早い。まだ実感としては二年くらいなのにもう三年。確かに私の肌も、年月を語るように少しくすみ始め、重力に逆らえなくなってきた気がする。衰えたのかもしれない。肌のピークは25歳と聞いたが、もう老化が始まってやしないだろうか。それとも、雪国の冷たさで鍛えられ、これをそのまま維持できるのか。うれしいのかどうなのか。とにかくふと気づけば、あと一年もしたら、私は春夏秋冬通い続けたこの大学を卒業していくのだろう。もちろん素直に卒業できれば、の話しだが。
  入学したら卒業する。始まりがあれば終わりがある。これは当たり前のことだが、そこには同時に期待と一抹の不安が入り混じる。慣れ親しんだ心地よい環境が時間で壊されることを私は恐れ、けれど、新しいすばらしさにあふれる環境になることを心待ちにしている。新しい環境に耐えられるかを不安に思い、けれど、過ぎ去った時間を懐かしむことを楽しみにしている。「卒業」という節目に限らず、物事の変化には常にさまざまな側面が付きまとう。楽しいことも悲しいことも、ここに述べたもの以外のものも、きっとたくさんあるのだろう。
  そんな中を、でも、何事も地続きであることを忘れなければ生きていけるのだろうなぁと思う。今までやってきたこと、失敗したこと、楽しかったこと。それらはすべて1つの道の上に存在し、私は常にその道に立っている。価値がなくなることはない。
  そう考えると、なぜ卒業という節目についてこんなにも考えていたのか。怖がっていたのだろうか。だとしたら、いつか、とんだ笑い話だなぁと笑えるようになりたいと思った。

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