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野球

宮城工業高等専門学校

専攻科 生産システム工学専攻 2年 岩佐健司

  一瞬時間が止まったように思えた次の瞬間,歓喜の叫び声とともに,球場全体から地響きのような歓声が沸きあがった.気がつくと僕の頬を水滴が流れていた.汗だったのか,それとも涙だったのかは未だに分からない.2003年8月,宮城高専硬式野球部は伝説を残したのだ.春のセンバツ甲子園を目指す大会の仙南地区大会で,ドラマのような逆転劇を見せ,見事優勝を果たしたのだ.強豪高校からすれば,たいしたことのない結果だろう.しかし,宮城高専にしてみれば,信じることのできない結果なのである.宮城高専の一般人からのイメージは‘弱小’‘ガリ勉’‘オタク’‘メガネ’‘井の中の蛙集団’といったものが挙げられるだろう.当然野球部の強いイメージなど全く無く,歴史を探ってみても名誉な結果はない.それも当然な話で,野球部に入部してくる人達の中に有望な選手が見当たることは滅多にない.つまり,野球センス,経験が無い部員のチームなのである.僕達はチーム結成以来,こういったイメージを覆すためにもどん底からスタートしたのだ.毎日毎日血の滲むような練習を繰り返した.今思い出しても震えてしまうような毎日だった.しかし,僕達はその練習に耐え抜いた.その結果,宮城高専野球部に名誉な結果をもたらしたのだ.才能,経験が無くても努力すれば何かを成し遂げられることを思い知った経験であった.

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