高専7年間でのイベント
宮城工業高等専門学校
専攻科 生産システム工学専攻 坂田 脩弥
2001年の入学から,高専に在学して早7年が経ちました。思えば,色々な事がありました。
機械や技術に関わる事で言えば,H-IIAロケットの打ち上げの成功と失敗。そして失敗原因究明後の打ち上げ再開。火星探査機「のぞみ」の火星軌道投入断念や工学試験探査機「はやぶさ」の小惑星イトカワへのタッチダウンとその後の復旧作業。X線天文衛星「すざく」や赤外線天文衛星「あかり」や太陽観測衛星「ひので」の打ち上げ成功とM-Vロケットの運用終了。そして,月周回衛星「かぐや」の打ち上げ,月極軌道投入の成功。
特に,私は工学試験探査機「はやぶさ」には非常に思い入れがあります。と言うのも,「星の王子様」キャンペーンに私は応募し,私の名前が刻まれているターゲットマーカを, 「はやぶさ」はイトカワに投下してくれたのです。
「はやぶさ」は2003年5月23日に鹿児島県内之浦にある,宇宙科学研究所の鹿児島宇宙空間観測所からM-Vロケット5号機によって打ち上げられました。
M-Vロケットは糸川博士のペンシルロケットから,由緒正しく進化してきた国産ロケットで,世界でも珍しい全段固体ロケットです。2000年の4号機のASTRO-Eの軌道投入失敗を受け,ノズルがグラファイトから3DC/Cコンポジットに材質が変更されました。また,1・2段接手の設計変更,更に第2段モータケースを高張力鋼HT-230MからCFRPに材質が変更されています。
「はやぶさ」自身も,工学試験機と言うだけあって,先進的技術が多数使われています。新型イオンエンジンや自律航行やサンプル収集技術や大気圏突入カプセルなどです。
新型イオンエンジンは,陽極にマイクロ波を使用する事で,陽極の無電極化を行い,イオンエンジンの寿命を飛躍的に伸ばしました。有電極イオンエンジンを搭載したNASAのディープ・スペースとエンジンの稼働時間を比すると,「はやぶさ」が搭載しているタイプのイオンエンジンの稼働時間がいかに長いかが判ります。
自律航行は,「はやぶさ」の姿勢は基本的には太陽電池パドルを太陽の方向に向けるように制御されています。また,電波の往復が何十分もかかる遠い所を飛翔する為,「はやぶさ」 はカメラの撮像やレーザー高度計により距離や形をとらえ,自身がその場でどういう行動をとるべきかを考えます。更に,これらは従来の探査機に比べても画期的な軽量化で,各種の搭載機器は日本の技術が結集しています。
サンプル収集技術では,非常に小さな重力の小天体でも,機体が跳ね上がったりしないように,また,どんな地質でも最終可能なように,金属球を約300m/sで打ち込み,金属球の衝突で舞い散った破片を回収するという方法を採用しています。
大気圏突入カプセルは,「はやぶさ」は減速せずに, 惑星間軌道から12km/sを超える速度で直接地球にカプセルを投入します。その為, 再突入中にカプセルの受ける最大空力加熱量はスペースシャトルの場合より何十倍も大きく,月から戻ってきたアポロの場合よりも数倍大きい過酷となります。この為,それに耐え得る耐熱素材が開発されました。
これらの技術を搭載し,「はやぶさ」は,太陽フレアを浴びたりリアクション・ホイールが故障したりした,幾多の困難を乗り越え,2005年11月に小惑星イトカワに2度タッチダウンしました。2度目のタッチダウン後,姿勢制御用スラスタの配管が破れ,姿勢を乱し,一時地球と交信出来なくなりました。その後,復旧はしたものの,姿勢が乱れたせいで太陽電池を太陽に向けられなくなり,バッテリーが切れ,2度目のタッチダウンのテレメトリデータが消えてしまっていたので,サンプル収集の為に発射される金属球が発射されたかは,いまだに判りません。また,当初の地球帰還予定である2007年6月には軌道の関係で帰還出来なくなり,2010年6月に地球へ帰還する事となりました。
「はやぶさ」は,数々の偉業を成し遂げましたが,同時に,小惑星探査での技術的課題も残してくれました。これらの課題は「はやぶさ」の後継機にフィードバックされ,日本の宇宙工学・科学は大きく躍進する事になるでしょう。
頑張れ「はやぶさ」!!
私は君の帰りを待っている!!
カプセル投入の日まで,あと約2年と4ヵ月!!
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